ビズリーチでは、企業の採用担当者約100名に採用業務に関する意識調査を実施しました。前編では、欲しい人材を採用できている「採用に強い企業(A群)」と、欲しい人材を「採用できていない企業(B群)」の採用活動における差から、採用を強化するために戦略的な採用活動に時間を割くことや、採用活動データの可視化・分析が重要であることを明らかにしました。また、本調査のなかで60%の採用担当者が「採用を強くしていくために、今後、HRテクノロジーツールの導入を強化したい」と回答し、ツールの活用に注目が高まっていることが分かりました。

海外だけではなく日本においても、インターネットやSNSの普及により採用経路が大きく変化し、主体的・能動的な採用活動であるダイレクト・リクルーティングを通じて、転職潜在層へのアプローチが進むなど、採用活動そのものも大きく変化しています。これからの採用担当者は、日々登場する新しい採用手法やツールの情報にアンテナを立て、それらを駆使しながら状況に応じた戦略的な採用が求められているのです。
後編では、今、採用領域で注目される「HRテクノロジーツール」について解説していきます。
採用担当者約100名の回答に見る、「採用に強い企業」の取り組み(後編)

採用領域のHRテクノロジーとして注目される「Applicant Tracking System(採用管理システム)」

人材獲得競争が進み、外部環境が変化するなかで、企業は欲しい人材を採用するための新たな採用手法や採用プロセスの改善に取り組んでいます。例えば、SNSや人材データベースを通じて行う「ソーシング」や、候補者となる人材を社員に紹介・推薦してもらう「リファラル・リクルーティング」、採用に消費者マーケティングの考えを取り入れ、最初の接点から入社までの体験を設計する「採用マーケティング」などです。
そのようななかで、採用プロセスを管理し、より効率的で戦略的な採用を支えるHRテクノロジーとして注目されているのが、「Applicant Tracking System(採用管理システム)」です。これまでの採用活動では、履歴書や選考状況の管理、応募者の評価データ、メールのやりとりは紙やExcelに代表される表計算ソフトなど、複数のツールにまたがって管理されていました。それに対してATSは応募から採用に至るまで複数のツールを使用していた情報を、システム上で一元管理できるのが特徴です。
また、日々の採用業務が一元管理されていくことにより、採用活動をデータで可視化・分析することが可能になります。採用の活発な欧米では、ATSの導入が進み、中規模企業の約50%以上、さらにフォーチュン500社のような大企業では90%以上がATSを使用しているといわれています。(※)

約60%が「オペレーション業務の削減」「データ分析」のためにはATSが必要と回答

本アンケートでATSの必要性を聞いたところ、採用に強い企業が取り組んでいる2つのポイントである「オペレーション業務ではなく、戦略的な採用活動に時間を割くこと」、「採用活動をデータで分析していくこと」のどちらに対しても「ATSが必要である」と回答している人がA郡・B郡ともに約60%いました。
採用担当者約100名の回答に見る、「採用に強い企業」の取り組み(後編)

採用担当者約100名の回答に見る、「採用に強い企業」の取り組み(後編)
採用担当者約100名の回答に見る、「採用に強い企業」の取り組み(後編)


企業の採用担当者から寄せられたフリーコメントには、「ATS(採用管理)ツールを活用することで、候補者と「会う時間」を確保して、事務作業や分析は極力省力化をしていきたい」(日系企業、1,001名~10,000名規模、メーカー(消費財)、経営企画部、採用責任者)、「人事・管理部門だけでなく、国内・海外拠点のローカルとの連携も重要になっているが、見える化に取り組みたい」(日系企業、1,001名~10,000名規模、メーカー(電機)、事業部、採用コーディネーター)という声があがっています。

多くの採用担当者が、煩雑なオペレーション業務の質と効率化を高めて、「戦略的な採用」のための時間を創出し、さらなる採用活動のデータ分析を実施するためにもATSが必要であると考えていることが分かりました。

進化するATS

採用の難度が上がる背景には、労働力人口の減少だけではなく、経済の成熟化によって人々のキャリアに対するモチベーションの源泉が多様化していることも考えられます。その多様性の中において、企業は一人ひとりに合ったキャリアを提示し、個性を発揮できる環境が提供可能であることを伝えていかなければなりません。

欧米では、ATSの機能が進化しつづけており、アナリティクスや、ターゲット人材を発掘する機能などが実装されています。採用管理によってオペレーション業務時間の削減・効率化だけではなく、「効率的に欲しい人材を採用する」採用戦略をたてるためのツールに進化しているのです。これからの採用担当者は、欲しい人材の採用実現に向けてこのようなツールの活用が求められていくと考えられます。


リクルートワークス研究所 HR Technology Trends
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