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マネジメント、リーダーシップを超える力、「イノベーターシップ」

第6回 イノベーターシップを支えるのはやはり人のつながり:場づくり力

多摩大学大学院 経営情報学研究科 徳岡 晃一郎
2017/04/21

この連載では、多摩大学大学院のキーコンセプトである「イノベーターシップ」について述べている。今回は、その5つの力のうちの「場づくり力」について。
これまでの5回では、まずイノベーターシップのコンセプトと、「今なぜイノベーターシップが必要か」を明らかにした上で、その5つの要素を順に説明してきた。まず1つ目に、日本人が得意としてきた顧客起点の罠から脱して、目線を上げて社会起点に切り替える「未来構想力」。2つ目は、描いた未来を実現するためのしたたかな実践知(Practical Wisdom)。3つ目が、壁にぶち当たっても前へ進むレジリエンスにあふれた「突破力」。そして4つ目が、前回述べた「パイ型ベース」だった。パイ型ベースは、前述の3つを支える役割を持つ。そして今回解説する5つ目の力、「場づくり力」も、同様に前述の3つを支える力だ。

イノベーターシップを発揮するためには自前主義と決別しなければならない。イノベーターシップは多くの人々を巻き込んで大きな絵を描くキャンバス設置能力でもある。そのためには、仕事ができるだけではなく、強い思いを持った熱い人に集まってもらう必要がある。しかし、そのような人々に集まってもらうためには、リーダー自身が、そのような人たちに「ロールモデルにしたい」と思われるような人間力を持っていることが求められる。

あの人のようになりたい、あの人だったらどう考えるのだろうか……、などと思いを巡らせることで、思いを共有できるようになる。場を形成するための条件である相互主観の状態になる。それにより、人が人を呼ぶ環境が作られ、場が広がっていく。首都大学東京の宮台真司教授は、これを「他者に感染する」と表現している。そのような場を通じ、社会を変える熱い思いを持った人々が共創する集団が形成されてはじめて、大きなイノベーションは実現に向かう。したがって、イノベーターシップを発揮し、成果を出していくには、このような場づくりのための人間力が欠かせない。

人間力を構成する要素の一つは、人とつながるのがうまく、スッと他人の懐に入り込む、オープンなつながり力(Capacity to connect)だ。しかも昨今の世の中においては、かつてのような日本人の男同士だけではなく、女性、外国人とのつながり、世代を超えたつながりも重要になる。

この部分を高めていくには、自分のため(Self interest)だけに動くのではなく、根底に「相手の役に立ちたい」という利他の心がなくてはならない。ウィンストン・チャーチルは「人は得るものによって生計をなし、与えるものによって人生を築く」と言った。自分の思いを表すビジョンがそもそも世のため人のためでないといけない所以はここにある。人が寄ってきてくれるのは、人に与えてこそなのだ。
2つ目の要素は、相手の気持ちを引き出し、それを汲みとり、寄り添い、感化し勇気づけていく積極的な共感力(Empathy)だ。目的にむかって高い壁を乗り越える必要があるわけだが、人は誰でもくじけそうになる。そんなとき、気持ちを通わせて、共感・共鳴し合う関係性を生み出すことがより重要となる。自分の熱い気持ちをストレートに伝え、相手の心を揺さぶり、相手からも本音でメッセージを出してもらうような関係性をつくれるかどうか、が目的達成の可否を左右するのだ。

共著『MBB:「思い」のマネジメント 実践ハンドブック: 社員が「思い」を持てれば組織は強くなる(Management by Belief)』でも説いているように、<思い>とはやさしくフワッとしただけの夢や希望ではない。むしろ<思い>とは自分に厳しく向き合っている証であり、自分の存在意義に他ならない。しがらみに立ち向かうことができ、他の人に感動を与える、そのような厳しさのある<思い>こそが本物であり、だからこそ、そこで「しみじみ感」(Reflective Empathetic Resonance)が醸し出される。
このように、積極的に共感を呼び起こすように仕掛けることができる、それが自身の強い思いをベースに相手に働きかけていく力だ。

そして、つながり力と共感力を発揮するための3つ目の要素が、コミュニケーションスキルだ。コミュニケーションスキルには3つの要素がある。1つが、魅力的なメッセージやストーリーをつくり発信する発信力。2つ目が、スムーズなファシリテーションや質問で相手の気づきを促し、知を創造して合意形成を進める対話力。そして3つ目が、抜け漏れをロジカルに防ぎ、本質的な課題をあぶり出す質問力だ。これらを磨くことによって場づくりを行い、大きなイノベーションにつなげていく。

イノベーターシップを発揮するためには、複雑な社会の現実へ挑戦していくための戦略兵器を揃えなければならず、その最前線に集結してもらう多国籍軍が必要だ。そのようなチームをつくるためにも、明確なコミュニケーションが不可欠なのだ。

したがって、5つ目の要素「場づくり力」を構成する要素をまとめると、以下の3つとなる。

(1)つながり力
・話題が豊富で人が集まるか?
・相手の話の真意をじっくり聞き、尊敬の念(Respect)をもって反応しているか? 
・相手のために役に立ちたいと心から思って対応しているか?

(2)共感力
・自信をもって発信できる強い思いをもって仕事をしているか?
・同僚の心を動かしたいと思って一緒に仕事をしているか?
・仲間から、思いを聞き出す時間をつくっているか?

(3)コミュニケーション力
・キーワードやストーリーなどを使ったメッセージ性の高い発信が得意か?
・場を和ませ、対話を促進するような投げかけや雰囲気づくりが得意か?
・本筋を見極めるために仮説をもって質問をよくするほうか?(単なる情報集めではない)

これらの3点を身につけ、実践していくためにも、まず人と会って話をしよう。殺伐としたオフィスの中でまずは挨拶を交わし、話題を振りまいてみよう。その話題の仕込みも知の再武装の重要な一環になるはずだ。
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プロフィール

多摩大学大学院 経営情報学研究科 徳岡 晃一郎

東京大学教養学部国際関係論卒。日産自動車人事部、欧州日産を経て、2009年よりコミュニケーションコンサルティングでは世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人のSVP/パートナー。人事制度、風土改革、社内コミュニケーション、レピュテーションマネジメント、リーダーシップ開発などに従事。2014年より多摩大学大学院研究科長。著書に『MBB:思いのマネジメント』(野中郁次郎教授、一條和生教授との共著)、『ビジネスモデルイノベーション』(野中教授との共著)、『イノベーターシップ』など多数。

<多摩大学大学院 経営情報学研究科について>
多摩大学大学院は、「実学」にこだわった実践的プログラム、一流の実務系教授陣、深い学びが得られる少人数クラスを特長とする日本の実学系ビジネススクールのパイオニア(1993年設立)です。
近年、「イノベーターシップ」のコンセプトのもと、マネジメントやリーダーシップを越えるスキルを備えたリーダー人材の育成に注力。さらに、データーサイエンスに特化した『DSBコース』、日本初のルール形成戦略を学ぶ『ルール形成戦略コース』を相次ぎ創設、時代を先取りした先見性と独自性に注目が集まっています。リーダーとしての志、哲学、教養を磨くリベラルアーツ系講義も充実しており“MBAを越えるMBA”と高い評価を獲得。

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