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  • キャンリクフォーラム 大学と企業の合同相談会2017
大学の就職支援室からみた新卒採用

第55回 エントリーシートってなんだろう?

金沢大学 就職支援室長 山本 均
2017/04/20

先月から始まった18卒就活ですが、早いところではすでに人材獲得の動きが見られます。就職相談室にも、エントリーシートを書かないといけない、という事で相談に来る学生が増えてきていますが、「まだまだ仕上がっていない学生がほとんど」というのが金沢大学の現場感です。
また、一部の企業ではエントリーシートを廃止する動きが出てきています。ですが、それでも志望動機と自己PRは書かないといけないわけで、そうするとやはりそれなりに自分のことと企業のことを深堀しなくてはいけません。結局のところ、自己PR、志望動機、ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)の3つの作成に右往左往している状況です。

良く考えてみると、エントリーシートを書く行為は就活特有の「かなり特殊な作業」といえるのではないでしょうか? 働いたことがない学生に「なぜこの会社が良いのか?」「何をしたいのか?」と問いかけるのは、相当難易度が高いように思います。それらしいことは簡単に書けますが、読み手を納得させるような文章を最初から書ける学生はほとんどみたことがありません。
しかし、自問自答を繰り返し、企業や業界、職種のことを調べ、私たちのような支援者の助言を受け入れつつ数を一定量こなすことで、大半の学生はあるレベルまでは書けるようになります。
また、掘り下げのレベルにも個人差が現れてくるようになります。誤解を恐れない言い方をすると、読み手に納得感を与えるエントリーシートを書けるかどうかと、就活でのその学生の評価レベル(どのレベルの会社にどのくらい内定をもらえるか)は相関性が高いと感じています。エントリーシートをちゃんと書ける学生は、就活でもよい評価をもらえるという事ですね。就活とは、そういう意味ではよほどの口下手でない限りはエントリーシートを上手く書くためにひたすら修行(?)する行為と言っても過言ではないかもしれません。

しかし、こうやって苦労して身に着けたエントリーシート作成スキルは、実は社会人になった後に直接的に発揮する機会はほとんどありません(転職活動の際にはある程度必要になりますが、転職の場合は経験値や保有スキルを重視するようになってくるので、それほど必要とされないケースが多い)。もしかしたら、ものすごく無駄なことに学生も企業もエネルギーと時間を費やしてしまっているのでは、という気になります。

エントリーシートの作成には文章力も大切ですが、それだけで上手く書けるわけではありません。自分のこと客観的に分析して、よく知ることが必要です。ほとんどの学生は自分の強みに無自覚です。無意識にとる行動のクセだから、というのがその理由ですが、まずはそこから自覚することが大切でしょう。さらに志望先企業、職種、業界の情報を収集・分析し、その上で自分と企業との接点を具体化し、文章に表現しなければいけないのです。
そして、何度も何度も書き直し、必要があればさらに分析し、勉強もし、助言も受け入れつつ仕上げるという作業が伴います。こうした作業は、社会人としてのベーシックな力を養ううえではとても有効です。正解のないものに対して「自分がどうすべきか?」という事を考え、実行計画を立て、勇気を持って行動するというプロセスを自律的に運用するスキルを養い、磨くことができていると思います。就活を終えた学生に就活前の学生の前で話をさせるとこの部分の成長がかなり明確に現れてきます。

そういう意味では、今の就活は学生を成長させる「人生のイベント」として一定の有効性があると思っています。しかし一方で、エントリーシートを書かせる行為にどのくらいの生産性があるのかと考えると、その効果にはやはり疑問を禁じ得ません。もっと良い方法はないのか、場合によっては産学連携で新しい仕組みを創れないか、と考えを巡らせながら、学生のエントリーシート相談に応じる日々です。
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著者プロフィール

金沢大学 就職支援室長 山本 均

1962年生、金沢大学法学部卒業後、株式会社ナナオに入社、採用教育に従事、その後株式会社アイオーデータ機器、沖電気工業株式会社にて人事採用業務に従事。2007年10月に帰省し、故郷金沢で人材紹介事業を中心とした人事コンサルティング会社、株式会社北陸人材ネットを設立、代表取締役に就任。2009年4月より金沢大学就職支援室長に就任(兼務)。学生の就職支援業務に従事する傍ら、大学の就業力向上プロジェクトに従事中。

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