「自分のプラスにならないと思う仕事まで見つけてやることは、無意味である」という質問があります。その回答傾向は次のようになっています。
そう思う 7.9%
わからない 12.7%
そう思わない 79.4%


8割近くは、「プラスにならないと思う仕事もやるべきだ」と考えているようです。

一方で、現場からは、
・言われた仕事しかしない。指示された仕事が終わったら、ぼーっと座っている。
・一つ教えても、実際は半分しかできない。途中で何度も確認してくる。
・応用が利かない。いちいち、細かいところまで教えないといけいない。以前教えた仕事の条件が少しかわったら、また最初から指示しないといけない。

等の意見をよく聞きます。

もっとも、これは、この数年で始まった現象というわけではありません。「自分で考えて、回りの仕事を手伝う」、「次に予測される仕事に言われる前に着手する」ということができない人達を指して「指示待ち族」と言いますが、この「指示待ち族」という言葉が現れたのは、1980年代前半。つまり、今の50才代の社会人は、すでに「指示待ち族」というレッテルを一度貼られた人たちで、おそらくその頃、それなりに「ちゃんと自分で考えて行動しろ」と、指導を受けた人達のはずです。1980年代には、すでに「言われたことしかしない」というような現象は目立っていたということですし、おそらくそういう人はもっと前からいたのでしょう。

この「指示待ち族」が生まれた原因を家庭環境の変化や学校教育等に求めることは簡単ですが、同じような現象が30年以上も続いているとすれば、これはもう恒常的な、当たり前の状況になっていると考えてよいのではないでしょうか。
指導員研修で「いや、そんなことはない。自分が新人の時と比べても、今の新人は自分から何もやらない」という20代後半の若手社員の意見を聞いたこともありますので、「指示待ちの程度、質の差」はあるかもしれませんが。

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そんな「新・指示待ち族」ですが、どのように育成すれば、良いのでしょうか?
若年層の意識の変化で追うと、対策に対する視点が見えてきます。

1980年代の「指示待ち族」は、「三無主義」(無気力・無関心・無責任)と呼ばれた世代の延長線上にありました。そもそもやる気がない、と見られていたのです。社会に対して一定以上の満足感を持っていましたから、あまりガツガツしていなかったのです。これは、高度成長期の「一生懸命やろう、ガツガツ行こう」という世代とのギャップでそう見られたと考えるとわかりやすく、その前の世代と比べて「三無主義」と呼ばれたのだと思います。
今はどうでしょうか。ガツガツしている人は減り、「自分なりに頑張りました」というような、緩い人が多い世代であることは変わりありません(全員ではないですが、そうでない人は少数です)。
また、「失敗したくない」、「馬鹿だと思われたくない」、「人と違うことをして目立ちたくない」といった保身の意識から新しいことや指示されていない=責任を取りたくないことに手を出さない人が増えているように思います。

では、やる気がないのか、成長意欲がないのかと言われると、そういうわけでもありませんし、それを引き出すのがマネジメントでしょう。
自律型人材の育成の基本からすると、私は、その基本は、次の4つだと考えます。

*仕事の全体像を示す(何のためにやるのか?)
*仕事を進める基本的な技量を与える
*その仕事に対する権限(責任)を与える
*仕事とその将来に対してのビジョンを持たせる


間違いないのは、昔と違って、業務が複雑で教えるのは大変という状況です。事務作業では、紙とペンで仕事をしていた時代から、PCやらあらゆる情報機器を使って業務を行うようになりました。
製造の現場でも、手作業は減り、コンピューター制御の機器を操作しなければなりません。後姿で教えていくような業務がかなり減り、仕事の内容がブラックボックス化していることも多くなりました。
だからこそ、仕事の全体像を示し、何ができるようになれば、その仕事がこなせるようになるのか、成長のマイルストーンを明確にして指導していくことが求められます。

また、「働く」ということに対するマイナスイメージを持っている新卒社員も多く見られます。その仕事が自分にとって、周りにとってどういう意味があるのか、将来どうなるのか、ビジョンを持たせることも重要です。
ややもすると、「やる気のない人」と見てしまいがちですが、そんなことはありません。本人の責任感を引き出すためにも、権限を与えることも必要です。

いずれにせよ、教える側が変わらなければ、育成はできません。今の新人に合った教え方をきちんと学び、実践することが求められています。
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