過重労働を課せられた某広告代理店社員の過労自殺問題など、労働環境で発生する様々な問題が明るみになっている。労働者が安全・健康に働ける快適な職場環境の確保は、企業にとって大きな課題であることは言うまでもないが、求職者にとっても労働環境が優良な企業を容易に把握できることは重要だ。

5年ごとに更新される第12次労働災害防止計画や労働安全衛生法などの一部改正もきっかけとなり、2015年6月1日より、厚生労働省は「安全衛生優良企業公表制度」(通称Wマーク)をスタートした。

ここでいう安全衛生優良企業とは、厚生労働省が認可した、労働者の安全や健康を確保するための対策に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を維持、改善している企業のことだ。認定期間は3年。認定を受けるためにはさまざまな条件をクリアする必要があるが、晴れてWマーク取得した企業は厚生労働省のホームページに発表され、その活動が広く認知されることになる。

制度がスタートしてから1年半。2017年1月20日、東京のAP渋谷道玄坂渋東シネタワーにて、第1回目の「安全衛生優良企業発表会」が開催された。「安全で健康な働きやすい環境とは何か」、認定を受けた安全衛生優良企業による事例発表を中心とした、プログラム前半の様子をレポートする。
企業価値を高め、従業員満足度向上と人材確保に挑む

重要なのは、挑戦する企業姿勢そのもの

発表会前半、まず非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構・木村誠理事長により「安全衛生優良企業公表制度の概要と取得のメリット」と題した講演が行われ、制度誕生の背景やそのシステム、Wマークの活用例、認定取得までのフローなど、安全衛生優良企業公表制度の詳細内容の説明がされた。

「この制度は非常にレベルが高く、簡単には取得できません。『けがをしない、病気をしない』という労働者の安全や健康のための対策のほか、過去3年間労働安全衛生関連の重大な法違反がないこと、点数制の健康保持増進対策、ストレチェックに代表されるメンタルヘルス対策、過重労働防止対策、有休消化率が3年間で70パーセント以上など様々な基準が設けられていますし、その8割を満たさなければなりません。国の認定を受けるということは覚悟が必要なのです。」

認定の取得をすれば、地方新聞やテレビなどのメディアに取り上げられ、企業の取組が広く世の中に伝えられるなどの副産物もあるが、最も大きなメリットは「人材の確保」にあると木村理事長は言う。

「今までのように、給料さえ良ければ何時間でも働くという学生は減り『ブラックには入りたくない』と職場環境を重視する学生が増えているのです。人気のある大企業は学生が集まって来ますが、中小企業の場合は何か武器がないと集まってきません。認定マークの取得は人材獲得のための強力なアピールにつながります。」

認定マークを取得することで、自社についてあれこれ説明しなくても、理解し認めてもらえるようになる。従業員の満足度向上につながる取組が企業価値として「見える化」され、評価されやすくなることも認定のメリットと言えるだろう。

「最も重要なのは、安全衛生に向けて何か取組もうとする企業姿勢そのもの。そういった企業にこそ、いい人材を獲得してほしいと思っています。」

次のプログラムでは、「安全衛生優良企業、認定までの軌跡」として、認定を取得した企業による事例発表が行われた。登壇したのは、アップコン(株)・ニッポン高度紙工業(株)・ビープラスグループ(株)の3社だ。

安全衛生活動はコストではなく、投資だと認識するべき

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