前回、「第57回 上司の巻き込み」では、研修の前日に「研修への期待を伝えてもらう」ということの大切さを書きました。
今日はもっと踏み込んだ話を書きたいと思います。

研修がやりっぱなしになる理由の1つに「プライオリティーが上がらない」という問題があります。
設定したアクションプランを実践しようとしても、他にも業務があり後回しにするうちに忘れてしまうのです。
よく、「緊急でなく重要なこと」が後回しになりやすいと言われていますが、まさにこのことです。
では、研修の時には確かに“やろう!”と思ったことなのに、なぜプライオリティーが下がってしまうのでしょうか。

それはずばり「上司に評価されないから」です。
上司が重要な仕事として認識していなかったら、一生懸命取り組むはずがありません。
むしろ「何やってんだ、こっちを先にやるべきだろ」
と言われて、やる気がしぼんでしまうことさえあります。


ではどういう研修デザインをすれば、このような問題が発生しないのでしょうか。
取り組みたいのは、研修前と研修後の「上司の巻き込み」です。

しかし、忙しい上司が研修で学んだことの実践について積極的に関わってくれることは稀です。
そこで上司にあまり負担をかけることなく、協力してもらえる方法を紹介します。

それが、受講生の上司に
「研修の時に使う目標の例作りに関わってもらう」
「研修直後に設定した目標にアドバイスをもらう」
の2点です。

まず「研修の時に使う目標の例作りに関わってもらう」です。
目標の例作りに関しては、研修前の教材開発の業務となります。
受講生の上司と面談をしてニーズを把握する必要があるのですが、受講生全員の上司と面談をする必要はありません。

目的は、「どのようなレベル(質)の目標設定をすべきか、その度合いが伝わること」です。
よって、受講生の中でピックアップされた数名の上司に面談して調査すれば十分です。
そこで聞いた期待される目標を改良して、研修時に受講生に例示する教材に利用するのです。

次に「研修直後に設定した目標にアドバイスをもらう」です。
受講生には、研修直後にワークシートを持参して上司と面談し、設定された目標に対してアドバイスをもらい、改良すべきは改良するように、という指示を行います。
そして根回しとして、研修前にあらかじめ受講生の上司にこの「アドバイス支援」を依頼しておくのです。
その際上司には、研修の目的やアジェンダ、そして事前調査から判明した想定される目標設定も伝えます。
そのうえで、研修直後の面談にて受講生の目標に対してアドバイスをしてもらう業務をお願いするのです。

このような根回し活動により支援業務を依頼された上司は、けっして嫌な顔はしません。
むしろ協力的になります。
そして最も重要なことは、この2点を行うことで、その後の受講生(部下)の行動変容に関して継続的に支援してもらえることが多い、ということです。

こうやって現場と研修の連携を図り、OFF-JTがOJTの支援者になっていく姿がこれからの研修のあり方と言えます。

さあ!
『研修担当の皆さん! 上司をもっと巻き込み、現場と研修を連携させよう』
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~やりっぱなし研修撲滅宣言~
「研修」が変わる「行動」が変わる45の具体策

永谷研一著
『人材育成担当者のための絶対に行動定着させる技術』(書籍版)
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