先日、「1dayのイベントもインターンシップとして認める方向」という、経団連の発表がありました。自分自身も様々な形でかかわっているインターンシップについて、色々思うことがあります。
1dayをインターンシップというのはどうだろう、という違和感はとてもあります。しかし、だからと言ってそれを否定するつもりはありません。1dayのイベントいえども、「仕事を知る」「業界を知る」という意味では、参加しないよりした方が得るものがあるのは事実ですし、さらに言うと、1dayのイベントは人事部主催で外部のコンサルなども巻き込み、凝ったプログラムになっているものも多いので、現場でほったらかしにされる期間の長いインターンシップよりも、効率的に様々なことが学ぶことができる、というメリットもあります。
ちなみに海外では最低1ヶ月くらいの期間、大学での単位化もされており、さらに必須科目になっているケースが多く、学生の参加率も8割以上のようです。大学の国際競争力上位ランキングの大学が、おしなべて長期インターンシップを科目化単位化したプログラムを有しているのも事実らしく、文科省は長期のインターンシップを大学の科目として導入すべく、それを大学側で自主的に推進すべきという論調(圧力?)が聞こえてきます。

個人的には、長期のインターンシップはやらないよりはやったほうが良いと考えています。留学にも同じようなことが言えるのですが、インターンシップはそれまでにしたことのないことを経験し、会ったことのない人たちとの接点を持つことで、自主的な変化と成長を促す場としての有効性があります。しかし、一方でもう一つきちんと議論しないといけない論点があるのでは、と思っています。というのは、現状で長期のインターンシップを実施するには、大学・企業・学生に膨大な労力が発生してしまうからです。費用対効果という点では、「グローバルスタンダードになりつつあるからやるべし」という論理は、あまりにも無謀なのではないかと考えています。

1dayタイプを「インターンシップ」などと呼称しているのは日本だけなのですが、逆に言えばなぜこのような仕組みがこの2年で一気に広がったのでしょうか。
これは、やはり就活スケジュールの日程変更の影響でしょう。スケジュール変更の影響によって、インターンシップを就活イベントに組み込む、という形式が広がったわけです。日本の企業は新卒採用が大好きですから、このように新卒採用に関する部分においては、ものすごく力をかけています。しかし、そのおかげで大卒者の就職率が90%超という他の国では考えられない状況になっており、それが社会秩序の安定に少なからず寄与しているという側面があるのは見逃してはいけないと思います。

長期インターンシップがなぜ日本以外の地域で一般化したのか。これには教育的効果とは別の理由があるのではと思量しています。というのは、新卒の就職状況の問題です。
そもそも、他の国では新卒者の就職はとても厳しく(仕事したことない奴を採用するくらいなら経験者を採用する方が良い、という発想)、そうした中、しばらく仕事をやらせて、使えそうなら採用しても良いかも?という考えがあるため、インターンシップが普及している部分があるわけです。もっというと、インターンシップというシステムが日本に比べてはるかに発達しているのは、新卒者の就職支援対策の一環として、大学がインターンシップを充実させてきた、という側面が大きいと考えています(実際に中堅大学がインターンシッププログラムの導入に熱心らしいです)。受け入れ企業にしても、お試しで使ってみてから採否を決められるのは、ミスマッチを防ぐ上では一発勝負の面接よりも有効な手段ですので、普及が進んだという側面があると考えています。

整理すると、インターンシップの目的は
①大学の教育的効果を上げるアクティブラーニング科目としての推進
②就職支援対策、あるいは選考試験の一環

の2点であり、海外ではそれが長期インターンシップとして普及していると言えそうです。

日本の場合は
①は中長期のインターンシップで主に大学3年夏休みまでに実施するプログラム
②は1dayなどの3年の秋以降に実施されるプログラム

という流れで普及してきているように感じます。

こうやって整理してみると①も②もどちらもインターンシップに当てはまっているように感じますが、大学の立場から言わせていただきますと、やはり②は別の呼び方に変えてほしい気がします。しかし、インスタント麺とラーメンみたいな感じで両方とも受け入れていくような、ある意味でのいい加減さが日本人の気質だとすると、このままの流れで一般化してしまう気もします。ラーメンの例に倣って②をインスタントインターンシップという名称にしてみるとかもいいかもしれません(笑)。

もう一点、長期のインターンシップを大学の正課科目としてきちんと運用できるような中小企業は、ほとんどないと思います。教育的な効果を上げてプログラムを回すにはファシリテーションスキルを持った人材が必要になりますが、そもそも教育専任者をおく余裕のない規模の会社でそういった人材を配置するのは不可能に近いでしょう。

ちなみに、今日本で最も普及している長期インターンシップは、内定者が内定先企業で今の時期にやっているアルバイトなのでは・・・という気がしています。これはこれでブラックのにおいを感じてしまう別の問題があるように思うのですが・・・。
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