ProFuture代表の寺澤です。
 弊社では、10月4日~6日の3日間、人事向けフォーラム『HRサミット2016 Stage2』を東京にて開催いたしました。連日、非常に多くの方々にご来場いただき、おかげさまで盛況のうちに無事に全プログラムを終えることができました。この場をお借りして、あらためて御礼申し上げます。
さて、その中のプログラムの一つとして、「日本の新卒採用変革会議~規制に縛られない採用へ」をテーマに、学習院大学 キャリアセンター担当事務長の淡野 健氏、東洋経済新報社 編集局編集委員の田宮寛之氏をパネラーにお迎えして、私を含めた3人でタブーのない、本音の議論を展開させていただきました。田宮氏からは、「自由経済の国において、採用(人)に関する規制があること自体がおかしい。就職に関するルールが守られない、なじまないのは当たり前で、今後、どんなスケジュールのルールを作ろうが守られることはあり得ない」とルールの存在自体を疑問視する意見が出されました。一方、淡野氏からは、「まずは、6月選考開始を撤廃して、3月採用広報開始のみとして、選考時期については各社が情報開示するルールにするのはどうか」と、いきなり撤廃するのではなく、前段階としての現実的な提案も出されました。このパネルディスカッションの模様は、11月上旬に人事ポータル『HRプロ』上にセミナーレポートとして公開予定です。ぜひご覧ください。

学生に評判のよかった企業はどこか

さて、今回は2017年卒の就活生に聞いた、「印象のよかった採用ホームページ」「印象のよかったセミナー・会社説明会」の企業と、その理由を見ていきたいと思います。いずれも1人当たり1~2票のみの投票となりますので、ここで名前の挙がった企業は「特に印象がよかった」企業ということになります。投票理由を、18卒採用へ向けての参考にしていただければ幸いです。

まずは、「印象のよかった採用ホームページ」の文系のトップ10を見てみましょう。
第67回 多くの社員との接触機会が好評価に
[1位]全日本空輸(ANA)
・具体的な社員の働き方や社風などがWEBからでも分かりやすく、自分の将来像をイメージしやすかった(中堅私立大)
・コーポレートカラーで統一され、さまざまな職種もある中で連体感が感じられ、企業の強さが伝わった(その他国公立大)
・細かで分かりやすい。図が多くて見やすい(早慶クラス)
・マイページを開くたびにメッセージが表示されるから(その他私立大学)
・分かりやすく仕事内容が紹介されていたり、見やすいレイアウトになっているから。働く姿が想像できる(中堅私立大)
・一面に、活躍する客室乗務員の方の写真があり、志望度を高める工夫だと思った(その他私立大学)

[2位]日本郵政グループ
・コンテンツが画像で表示されていて分かりやすかった(その他私立大学)
・ムービーなどで実際の社員の声を聞くことなどもできた(上位国公立大)
・採用人数が明確に記されている。社員の方が実際に働く姿の動画を見ることができる(その他私立大学)
・グループごとにしっかり分けられていたし、欲しい情報がしっかり読み取れた(その他私立大学)
・動画配信など就活生に伝えようとする意志が伝わったから(上位国公立大)
・複数の社員や内定者のインタビューが載っていて参考になるから(その他国公立大)

[3位]損害保険ジャパン日本興亜
・部門ごとや内定者の話を詳しく載せていた。専用アプリもあった(上位国公立大)
・先輩社員の日記を日々更新し続けているから、新しい情報を常に得られた(中堅私立大)
・採用される側の要望をよく捉えている内容だった(上位国公立大)
・企業紹介だけでなく、就職活動についての内定者の話なども載っていた(その他私立大学)
・HPで社員の声やセミナーの様子が分かり、社員訪問もHPで予約できた(旧帝大クラス)
・項目のタグが大きく表示されていて、欲しい情報を早く検索することができるようなデザインだったから(その他国公立大)

[4位]サントリーグループ
・社員のアンケートが100人以上載っていたから(その他国公立大)
・会社の信念・求めていることが分かりやすく、親しみやすいデザインだった(上位私立大)

[5位]JTBグループ
・幅広い事業の一つ一つが分かりやすく読みやすく説明されていた(中堅私立大)
・セミナーや説明会など一つずつ、各社ごとに日程が載っている(その他私立大学)

OB・OGと連絡が取り合えるツールも登場

続いて、「印象のよかった採用ホームページ」の理系のトップ10を見てみましょう。
第67回 多くの社員との接触機会が好評価に
[1位]パナソニック
・WEB上で事業所見学ができる。先輩社員の就職活動がどのようだったかを見ることができる(上位国公立大)
・既存技術だけでなく、将来の夢のような商品や技術を紹介していた。また、それを映像化していたので、より分かりやすいのと魅力が大きい(上位私立大)
・先輩社員からの就職活動におけるアドバイスがあるため(その他国公立大)
・事業内容や選考コースの概要が見やすかった(その他国公立大)
・内定者の声が充実している(旧帝大クラス)
・見やすい、レスポンスがいい(上位国公立大)

[2位]NTTデータ
・さまざまな分野に取り組んでいる印象を受けたから(上位私立大)
・OB・OGと気軽に連絡を取り合えるツールが用意されている(旧帝大クラス)
・その企業が何を主体に動いているかが明確になっていたため。また、具体的な事業内容が細かく説明されており、分かりやすかったため(その他国公立大)
・明るくて柔らかい感じが緊張感をほぐしてくれた(上位国公立大)
・自分の持っている技術分野に近い紹介があり、興味が持てた(上位国公立大)
・全体として分かりやすく、企業情報が調べやすく感じた(その他国公立大)

[3位]味の素
・食品だけではなく、幅広くかつ深く研究を行っており、とても充実した研究を行えそうな会社であるため。また社員からの提案に寛容なため(早慶クラス)
・研究を活かすことのできる事業などの説明が丁寧で、その企業で働きたいという意欲がかき立てられたため(旧帝大クラス)
・キャリア形成のイメージ図があり、未来を描きやすかった(旧帝大クラス)
・社員紹介で、その社員がどのようなキャリアをたどってきたか分かりやすく書かれていたため(旧帝大クラス)
・スマホでも見やすかった(旧帝大クラス)
・簡潔で分かりやすいつくりだった(その他国公立大)

[4位]東日本旅客鉄道(JR東日本)
・事業についてや、先輩社員からのアドバイスなど、企業研究に役立つ情報が多かったから(その他国公立大)
・職種説明に今後のビジョンまで載っていた(中堅私立大)

[5位]ソニー
・面接で聞く内容を載せていて、面接の意義が分かりやすいから(早慶クラス)
・きれいに整理されていた(その他国公立大)

[5位]三菱電機
・インターンの様子などを載せていて雰囲気がよかった(旧帝大クラス)
・事業の分類など整理されていて見やすかったため(上位国公立大)

 採用ホームページで好印象を与えるポイントとして、次のような点が見て取れます。
●情報が分かりやすく整理され、ナビゲーションされているか
●多くの社員・職種が紹介され、将来をイメージできるか
●理系向けには技術領域や展望
●内定者の声
●企業情報だけでない、就職アドバイス等の付加情報
●レスポンスのよさ
最近では、WEBでOB/OG訪問の受付をする例や、スマホ用の専用アプリを提供する企業も出てきています。学生が就職活動で利用する端末を聞いたところ、文系ではスマホがPCを大きく上回っており[図表3]、スマホでの閲覧を意識したつくりになっているかも重要になってきています。
第67回 多くの社員との接触機会が好評価に
もちろん、通常のWEBサイトもスマホで閲覧は可能ですが、いちいち画面を左右にスライドさせながら原稿を読まなくてはならなかったり、iPhoneではFlashファイルが表示できなかったりしますので、スマホ専用の画面を用意するか、ブラウザサイズに応じて表示方法を変えることができるレスポンシブ対応の採用ホームページにすることを検討する時期にきています。

多くの社員との接触機会が好評価に

次に、「印象のよかったセミナー・会社説明会」についても文理別の学生のコメントを見てみましょう。まずは文系のランキングです。
第67回 多くの社員との接触機会が好評価に
[1位]みずほフィナンシャルグループ
・プログラムが学生目線になっていたため(その他私立大学)
・社員の方々が暖かく、熱意のある様子が伝わってきた(上位国公立大)
・飽きずに聞いていられるさまざまな工夫があり、さらに、受動的だけではない説明会だったから(その他国公立大)
・社員の方々が暖かく、熱意のある様子が伝わってきた(上位国公立大)
・事業が意味のあるものだと思えた。同業他社よりも素晴らしい企業だと思わされた(上位私立大)

[2位]損害保険ジャパン日本興亜
・エントリーシート対策など、説明会以外のことも面倒を見ていただけた(上位国公立大)
・分かりやすい説明と細かな質問にも詳しく答えてくれた社員の人の雰囲気のよさ(その他私立大学)
・飲食ありでフランクな雰囲気だったため(早慶クラス)
・社員の方との座談会で聞いた内容が自分の価値観と合っていると感じた(旧帝大クラス)
・女性がキラキラしていた(上位国公立大)

[3位]東京海上日動火災保険
・4月から役員になられる方のお話が聞けてよかった(早慶クラス)
・分かりやすかったし、就活応援グッズをくれた(その他私立大学)
・社員の熱い想いをたくさん聞けたため(上位私立大)
・親身に質問に答えてくださった(その他私立大学)
・就活生への気遣いがよかった(中堅私立大)

[4位]三菱東京UFJ銀行
・職種別のセミナーが行われており、若手行員の方ともたくさん話すことができたため(上位私立大)
・社員の方の印象もよく、セミナーも少人数でよく見てくれたから(旧帝大クラス)

[4位]りそなグループ
・会社概要だけでなく、イントラクションシートを使いグループワークを通じて、資産運用や融資について学べた(その他国公立大)
・社員の皆さまが明るく、就活生のことを考えて日程設定をしてくださっていたから(旧帝大クラス)

理系向けには「工場見学」が有効な施策

最後に、理系のランキングです[図表5]。前述の「印象のよかった採用ホームページ」(理系)で上位に入っていた企業がここでも上位に入ってきています。
第67回 多くの社員との接触機会が好評価に
[1位]パナソニック
・社員の対応から、開催された説明会の内容まで就職活動にとても役立ったから(中堅私立大)
・いろいろなカンパニー(部署)が集まっており、もともと興味があったカンパニー以外の情報も得られた(旧帝大クラス)
・理系職種の職種別説明会であったせいか、少人数の学生に対して社員の人数が多く、距離も近かったため、質問がしやすい環境であった。また、回数も多くとれた。さらに、社員との距離の近さから、説明会後も雑談ができるなど、終始雰囲気のよい会社説明会であったため(上位国公立大)
・工場見学などもさせていただき、実際のモノづくりを体感できたため(その他国公立大)
・プレゼンの分かりやすさ、会社の方針についても分かりやすかったから(上位私立大)
・説明会の種類が豊富でいろいろと会社のことについて深く知ることができたから(上位私立大)
・座談会の社員の人選がよかったから(上位国公立大)

[2位]三菱電機
・話を聞きたい社員を学生側から選べた。また、人の少ない社員のブースには人事の方からフォローが入った、その機転が素晴らしいと感じた(旧帝大クラス)
・社員の雰囲気が明るく、楽しそうに仕事のお話をされていた(中堅私立大)
・工場見学もさせていただけて、仕事する現場の雰囲気をより肌で感じることができた(上位国公立大)
・人事の人が優しくていろいろな質問に答えていただいた。極力顔や名前を覚えてくれていた(上位私立大)
・一日で複数の製作所の説明を受けられたため(その他国公立大)
・就活生の自由意思に任せた説明会が印象的だった(旧帝大クラス)

[3位]NTTデータ
・業務内容を詳しく知ることができたため。また、具体的なワークを通して仕事の内容を体験できたため(その他国公立大)
・質疑応答に長く時間を割いており、コミュニケーションをすることで社員の雰囲気を感じることができた点(上位国公立大)
・現場社員の話がためになったから(上位私立大)
・仕事の幅が広く、楽しそうだと感じたから(旧帝大クラス)

[3位]味の素
・各分野を分けて、先輩社員といろいろな話を聞きました(旧帝大クラス)
・内容も理解でき、社員さんもいい人だったから(上位国公立大)
・どのような仕事をしているか、親身に教えてくれた(その他私立大学)
・カップスープをもらった(旧帝大クラス)

[5位]SCSK
・話が上手く、就職活動に対してのIR情報の確認等役立つ内容を話してくれた。プレゼン自体もメモしやすくまとまっていた(その他国公立大)
・映像を使って、分かりやすかった(上位私立大)

[5位]キヤノン
・活躍されている方の話を聞くことができたから(旧帝大クラス)
・専攻や内容ごとにブースが分かれており、自分の聞きたいところを選ぶことができたから(上位私立大)

[5位]全日本空輸(ANA)
・覚えてもらえていた(旧帝大クラス)
・説明会に加えて、格納庫や普段見ることができないところを案内していただいたから(上位私立大)

[5位]デンソー
・女性ならではの働き方や働きやすさを詳しく教えていただけた(その他国公立大)
・大学のOBが詳しく会社のよいところ悪いところを教えてくれたので(その他国公立大)

[5位]東レ
・内定者の座談会や、社員の座談会など、実際に働くことをイメージしやすい内容の説明が多かったため(旧帝大クラス)
・事業内容や仕事の環境、さまざまな点の説明が分かりやすくあった(上位私立大)

 セミナー・会社説明会で好印象を与えるポイントとして、次のような点が挙げられます。
●部門や職種別ブースを、学生が自由に選んで訪問する形式
●映像を使った、分かりやすい演出
●ワークを通して仕事の内容を体験する仕掛け
●丁寧な質疑応答
●理系向けには工場見学、研究所見学
●女性活躍推進に向けたコンテンツ
セミナー・会社説明会で登壇したり、ブースで対応する社員の印象が、学生の動機形成に大きな影響を与えるため、その人選には十分な配慮が必要になります。業務評価が高い社員が必ずしも適任というわけではなく、分かりやすいプレゼンができる社員、学生への親身な対応ができる社員など、登場シーンや役割に応じた適材を選出することが求められます。

(調査・編集: 主任研究員 松岡 仁)
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