三回にわたって「勘弁してほしい」採用担当者のエピソードをご紹介してきましたが、最終回の本日は、私から採用担当者の皆さまへ、愛あるメッセージをお届けいたします。
第4回 頼りない採用担当者 Vol.4
◆【採用を費用と捉えてしまっていいのか】
採用担当者は人事部というコストセンターのなかで仕事をしています。コストセンターは、いかに費用を最小限に抑えることができるか、ということが至上命題なのですが、はたして採用を費用として捉えてしまってよいのか。生み出す効果にさほどの違いを生じない材料を調達するのならそれでもよいのでしょうが、人材の調達(採用)はそういうわけにはいきません。優秀な人材とそうでない人材とでは、そのアウトプットに何倍もの差が生じます。その差は入社年次を重ねるごとに広がる一方です。赤字を垂れ流すだけの人材もいれば、一人で何億円もの利益を生み出す人材もいます。
◆【採用担当者は経営視点を持った投資家であってほしい】
然るに多くの採用担当者の優先順位は、効果よりも効率(コスト)。そして、リスクよりも安全。実績があり安価で効率的な施策に流れてしまいがちです。限られた予算の中で決められた人数の採用を成功させなければならないわけですから、そうなるのも致し方のないことかもしれません。しかし会社の将来を考えたときに、「それで本当にいいんですか?」と問いたくなります。採用を費用ではなく「投資」。数年後、何十倍何百倍ものリターンを生み出すプロフィットセンターであると捉えれば、優先順位も取るべき施策も、大きく変わってくるのではないでしょうか。そのような考え方は、心ある経営者には必ず響くはずです。
◆【誰を採用すべきか考えてほしい】
「どんな人材がほしいですか?」の問いに、多くの採用担当者は「我が社で活躍できる優秀な人材です」と答えます。しかし、どんな能力や志向性・価値観を持った人材がそうなのか明確に答えられる担当者は多くありません。抽象度が高かったり、どこの会社でも活躍しそうな人材の条件が出てきます。「優秀さ」の定義が曖昧であるがゆえに、結局は分かりやすい学歴や、志望度の高さや、面接での応答の善し悪しで採否を決めてしまっているのです。さらに問題なのは、採用した人材が落とした人材よりも本当に優秀だったのかということを、誰も証明できないということ。だから「分かりやすい優秀さ」に採用担当者の関心が集中してしまうのです。「自社が採用すべきは誰なのか」ということを、いまいちど考えていただきたいと思います。
◆【変化・成長にスポットを当ててほしい】
20代前半の若者は、置かれた環境や働きかけによって大きく変化・成長するものです。今は優秀でなくとも2~3年後(ある条件のもとで)優秀になる可能性を持つ人材は、たくさんいます。逆に、入社時は優秀だったのに数年後マイナスの方向に変化して、会社をダメにしてしまう人材もいます。私たちが採用すべきは、言うまでもなく将来プラスの方向に変化・成長していく可能性を持った人材です。そして、その人材が変化・成長するための環境や仕組みを、教育担当者と協働しながら整えていくことも、採用担当者の大切な仕事。採ったら終わりなのではありません。注目すべきは「今」ではなく、採用した後の「変化・成長」なのです。
◆【気骨ある採用担当者であってほしい】
近年の日本の就職と採用は、規制やルールによって自由度を失ってきました。学生も採用担当者も、つきたくもない嘘をついています。本音と建前を上手に使い分ける者だけが得をし、正直者が馬鹿を見るような就職と採用。どう考えても健全ではありません。採用は、多くの若者を社会へと誘(いざな)い、彼ら彼女らに将来を託すための重要な仕事。採用担当者の皆様には、手足を縛られたままの小さな仕事ではなく、規制やルールから自らを解き放ち、経営者と大いに議論し、よりよい未来を創造するための大仕事をしてほしいと強く願います。
(日経産業新聞コラム「こんな採用担当者はご勘弁!」より転載)
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