学生は、面接官のことを「生殺与奪の権利を有する怖い人」だと思っています。実際の面接の場面では、恐れや緊張のあまり自分をうまく伝えることができずに悩んでいる学生も大勢います。
第2回 頼りない採用担当者 Vol.2
採用担当者は、そんな学生の気持ちをよく理解していますから、緊張を解きほぐすためのアイスブレーキングを控室での待ち時間に組み込むなどの工夫をしています。また面接官には、受容的かつ共感的な態度で学生と接するように指導しています。熱心な会社では、毎年採用シーズンが近づくと面接官研修を行ったりもしています。
しかしながら、そんな採用担当者の努力を台無しにしているのが、部長や役員クラスの面接。学生の親よりも上の世代が多く、とかく自分の価値観を押し付けがち。上から目線で、学生を説教してしまうこともあるようです。
◆【馬鹿にしないでよ!】
会社に入ってやりたいことは何かと聞かれたので、「人々の生活を新しい価値で豊かにしたい」と答えたところ、半笑いで、「人々って誰?」「豊かにしたいって今の社会は豊かじゃないの?」と言われてしまいました。なんだか馬鹿にされたようで悔しくなりました。


私立大学に通う女子学生が遭遇した、大手メーカーでの現場部長の面接。抽象的な回答が気にくわなかったのかもしれませんが、面接の目的は学生の潜在力を見つけ出すこと。学生の言葉尻をとらえて攻撃しても始まりません。
◆【威圧的な役員がずらり勢ぞろい】
緊張しながら迎えた最終面接。部屋に入ると貫禄ある50代の男性役員が5人、一列に並んでいました。役員たちは黒い革張りの椅子に座っているのに、僕はいかにも安そうな折り畳み椅子。僕の前には机もなく全身をジロジロと見られているようで、なんだか尋問を受けているようなイヤーな空間でした。


100年以上の歴史をもつ専門商社の最終面接。これはセッティングした人事側にも問題がありそうです。5人もの役員が最終面接に登場する意味は何なのでしょう。それじゃなくても緊張する最終面接。役員の人選(人数も含めて)は慎重に。せめて椅子と机くらいは、まともなものを用意してあげてください。
◆【自慢話が長すぎる】
「僕はね、若いときは海外赴任が長くてね、そりゃあ苦労したもんだよ」と、その会社の役員さんは延々と自分の若いころの武勇伝を語り始めてしまいました。「中東に赴任した時なんかはね、現地の秘書から結婚したいって言われて困ったもんさ、ハッハッハッ〜」。いや、困っているのは私なんですけど。


財閥系物流会社での役員面接。私大に通う女子学生が被害者です。威圧的な面接官に比べれば、まだ救いのある可愛い話ですが、とはいえ面接の目的を果たしているとは言い難いですね。ひょっとしたらこの役員、面接を息抜きの場だと勘違いしているのでしょうか。
頑固で偏屈な部長や役員をコントロールすることも採用担当者の大事な仕事。せっかく最終段階まで残ってくれた優秀な学生を逃がしてしまっては、それまでの苦労が水の泡です。
さて、次回は中小・ベンチャー企業の採用担当者にありがちな、勘弁していただきたい事例をご紹介します。
(日経産業新聞コラム「こんな採用担当者はご勘弁!」より転載)
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