新入社員の意識調査では、「社内では人間関係が大切だから、正しいことでも他人から悪く思われるようなことには、手を出さない方がよい」という設問に対する回答傾向は、次のようになっています。
そう思う   19.8%
わからない  22.6%
そう思わない 57.5%


この数年、「そう思う」が増え(2009年12.9%、2015年19%)、「わからない」が減っています。「そう思わない」はほぼ横ばいです。

これだけを見ると、「人間関係が壊れるかもしれないけれど、正しいことはやる」という新入社員が約6割と結構多いように見えます。この数値を見て、「世間知らずだなぁ、会社って、そんな単純じゃないのよ」と居酒屋で説教したくなる気持ちは良くわかります。

組織内で自由にモノが言え、正しいことを行動化できる、それが健全な組織だとは分かっていても、なかなかそれがそうはならないのが現実です。確かに、社員が自由に意見を表明でき、行動できる組織は、定着率・生産性は高く、効率的な組織運営ができ、構成員は創造性を発揮できそうなことは、想像に難くありません。

しかし、残念ながら、
・これまでの多くのしがらみがある
・誰が言うかで決まるので、下っ端が正しいことを言って変わらない
・それをやると、お金がかかるからできない
・グレーゾーンがあるから、うまく組織は回る、白黒発揮するような意見は言わない方が良い

等の理由で、「こうした方がいい」ということを言いにくい雰囲気がある組織がほとんどではないでしょうか。
設問の構成としては、「人間関係」との対比で「あなた、それをやっては、ダメ!」と、ルールや規律の違反を指摘することができるか?というものですが、上記のような理由で、
多くの組織では、「言えない、言ったも仕方ない」という意識になってしまうことが多いと推察します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

会社の中で、本来なら、声に出して言うことで、「組織が、もっとよくなる」ということはわかっていても、言えないことが多いと思います。
そのために、提案箱を用意したり、コンプライアンスに関わることは、通報窓口を外部に置いたり、様々な施策で「正しいと思うこと」を吸い上げ、組織に生かそうとする企業もあります。
残念ながら、こういう施策もうまくいかないことが多いのが現実でしょう。

・提言をいくら出しても、その後、どうなったのかわからない。
・提言したら「お前がやれ」といきなり責任者にされた。
・コンプライアンス違反を通報したら左遷された。
・その通報窓口を雇っているのは会社なので、そこにトップの問題を言ってももみ消されるだけ。


等、いろんな意識から、多くのサラリーマンは、口をつぐむのです。実際に「左遷された事件」もあったことを覚えています。「上ににらまれたら、おしまい」いうのは、サラリーマン社会では当然といえば当然です。

そのようなことを悟ってか、社内では人間関係が大切だから、正しいことでも他人から悪く思われるようなことには、手を出さない方がよい」という設問に対して、「そう思う」と答える新入社員は増えてきているのかもしれません。

ただ、企業においては、「業績が最大の判断基準」です。
目の前に数字に影響することは、まだ言いやすいのですが、ややもすると、中長期にわたる業績に影響するようなことはなかなか言いにくいこともあるかもしれません。
「正しいこと=業績を上げるための行為」は、やる必要があります。

新入社員研修で、「新入社員同志、お互いに、間違ったことを指摘しあう状態を作る」ことを盛り込んだカリキュラムを展開することがあります。
運営してみると、同期でもあり、意外と、指摘しあうことはできるようになります。指摘する内容は、マナーや報連相の他、社内規律が中心ですが、そのレベルも指摘しあうと、確実にレベルが上がっていきます。
そのお客様は、弊社の研修後も2週間の社内研修があり、その間も同様に指摘しあう状況が続くことで、業務知識のテストや規律の全体の基準が例年以上に上がったとの報告をいただきました。

おそらく、企業に入ると、長期にわたり同じ人と関わりますから、人間関係を気にして、何も言えなくなるのではないでしょうか。
日本的長期雇用の習慣が、多くの企業で「正しいことを言えない」風土を作ったのかもしれません。ここは再度、「業績が最大の判断基準」という原点に立ち返り、自由にモノが言える風土をつくる教育が必要かもしれません。
  • 1

この記事にリアクションをお願いします!