「バブル期並みの求人倍率」に潜む半永久的な課題とは?
第1回 採用難時代に見直したい5つの盲点(前編)
まずは、こちらの厚生労働省発表の一般職業紹介状況をご覧ください。

一般職業紹介状況(求人倍率)
雇用者全体社員(パート除く)パート
2015年11月1.32倍1.15倍1.68倍
2009年11月0.47倍0.38倍0.76倍
1991年11月1.45倍1.34倍2.43倍

※2016年6月は、全体1.27倍、社員(パート除く)1.06倍、パート1.3倍。
職業別、一般職業紹介状況(求人倍率)
建設 ITエンジニアサービス事務
2015年11月3.30倍2.14倍2.72倍0.37倍
2012年11月2.17倍1.46倍1.68倍0.24倍

※2016年6月は、建設3.12倍、ITエンジニア2.29倍、サービス2.74倍、事務0.36倍。
職業別求人倍率の中でも、特に注目したい職種に「サービス職」が挙げられます。2012年11月時点で1.68倍であった同職種の求人倍率は、2015年11月には2.72倍と高騰。パート・アルバイト形態での雇用も多い同職種だけに、今後も一層の採用難が続くことは容易に想像できます。

この採用難の事態は、いつまで続くのでしょうか。バブル期同様、その後の景気後退局面などで採用難が緩和する時代が来るのでしょうか。結論を最初に申しあげますと、今後も半永久的に採用難は続きます。
第1回 採用難時代に見直したい5つの盲点(前編)
本稿では、これから半永久的に続くと想定される採用難に対する打ち手について述べます。

採用難の時代に見直したい、5つの盲点と「伸びシロ」

打ち手の一つに、最新テクノロジーの活用があります。米国が先行するHRテクノロジー分野では、ITを中心に画期的な採用手法が次々と生まれ、活用されています。一方、この導入には資金や言語、文化慣習の相違など、さまざまな障壁があることもまた事実です。

そこで本稿では、「ITや技術」のみにフォーカスをするのではなく、新卒や中途、アルバイト・パートタイム採用などあらゆる観点において汎用的に検討可能な考え方や打ち手を提案いたします。既述の「サービス職」を例にとり、注目したい5つの改善領域をご紹介します。

◆【1つ目の改善】自社の顧客やアルバイト/パート経験者が社員雇用に繋がる

弊社が行なった調査では、求職者の多くが、自身の生活圏を中心とした近隣地域での仕事探しをしていることが明らかになりました。更に、そうした身近なエリアでの就業を検討する求職者の多くが、事前にその店舗を下見しており、日頃顧客として通っていた経験を持つ方もまた多いことが分かりました。

つまり、アルバイト・パート領域においては、自社・自店舗の顧客がアルバイトスタッフに転じる流れができているのです。

この動きは更に進展し、アルバイトスタッフが、将来的な自社の新卒採用や中途採用の候補者として表出する(または表出させる)仕組みを作る企業が増えてきました。

多店舗を展開する企業の中には、新卒や中途での社員採用時に、現場推薦の制度を設け、より広いターゲットから自社の採用母集団を形成する例もあります。短時間勤務の正社員制度導入やアルバイト職からの社員登用に積極的な乗り出す企業もまた増加傾向にあります。

顧客やアルバイトスタッフから社員雇用へと繋がるこの流れを、私はCRMと類似して「ARM(Applicant Relationship Management)」と呼んでいます。ARMの進化・発展は今後一層進みます。既に、自社と接点をもつ人々を広範囲に採用候補と捉えることが、結果として採用難への解決策となります。


…次回へ続く

(オムニ・マネジメント 2016年3月号寄稿、一般社団法人日本経営協会刊)
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