HR総研が、2013年10月28日~11月6日にかけて実施した「人事支援サービスに関するアンケート調査」の結果を領域別に各企業の予算動向や課題、今後より求められるサービスについて報告する。有効回答は305社。第5回の領域は「メンタルヘルス」。

5割に満たない中小企業のメンタルヘルス対策

「人事支援サービス【メンタルヘルス】に関するアンケート調査」結果報告

何がしかのメンタルヘルス対策を実施しているかを尋ねたところ、企業規模による明らかな差が見られた。全体では、「実施している」65%に対して、「実施していない」35%と、約2/3の企業がメンタルヘルス対策を実施しているとなったが、企業規模別にみてみると、1001名以上の大企業では89%が「実施している」のに対して、中堅企業(301~1000名)では76%、中小企業(300名以下)にいたっては48%と半数以下にとどまる。社内にメンタル不全者がいない、あるいは極めて少数のために課題感が薄いのかもしれないが、今後は顕在化してくる可能性もあり、どの企業にとっても共通の課題として考えていく必要がある。

図表1:メンタルヘルス対策の実施状況

まだまだ少ない自社相談室の設置

「人事支援サービス【メンタルヘルス】に関するアンケート調査」結果報告

メンタルヘルス対策を実施している企業に、現在利用しているメンタルヘルスサービスを選んでもらった。「医師によるカウンセリング」が52%で、唯一過半数の企業が実施しているサービスになる。「管理職向けのメンタルヘルス教育」も48%と約半数の企業に導入されているものの、「非管理職向けのメンタルヘルス教育」となると32%と1/3以下の企業で実施されているに過ぎなくなる。「ハラスメント」「個人情報管理」「コンプライアンス」などと並んで、企業のリスクヘッジの項目ではあるものの、もう少し「非管理職」への導入があってもいいのではないだろうか。
「常設の自社相談室の設置」はまだ20%にとどまり、「特定日だけ設置」の14%と合算しても34%と1/3に過ぎず、まだまだ普及率は低い。ちなみに、大企業だけに限定すると、「常設」と「特定日」型の合算は55%と過半数を超える。

図表2:現在利用しているメンタルヘルスサービス

今後まだまだニーズが高くなる「ストレス診断」

「人事支援サービス【メンタルヘルス】に関するアンケート調査」結果報告

今後利用したいメンタルヘルスサービスを尋ねたところ、トップは「管理者向けのメンタルヘルス教育」(35%)。現在も半数の企業で導入されているが、必要性を感じている企業はまだ多いようである。2位の「ストレス診断」は、現在の利用率と同じ33%に上る。今年3月13日には、ストレスチェック義務化法案と呼ばれている労働安全衛生法一部改正案が国会に提出され、審議されている。「ストレス診断」は今後まだまだニーズが高くなることは必至である。

図表3:今後利用したいメンタルヘルスサービス

大企業とそれ以外で異なる課題感

「人事支援サービス【メンタルヘルス】に関するアンケート調査」結果報告

メンタルヘルス対策実施に関する課題を訊いたところ、すでに実施している企業が多い大企業と、それ以外の企業で異なる傾向が見られた。まだ導入がそれほど進んでいない中堅・中小企業では、「専門スタッフがいない」とする企業が5割近い。また、「経営層の関心がない」「取り組み方が分からない」なども多くなっている。
一方、大企業では「社員の関心がない」が「専門スタッフがいない」を押さえてトップとなっている。非管理職へのメンタルヘルス教育が必要である。

図表4:メンタルヘルス対策実施上の課題

企業から挙げられた具体的な課題を見てみよう。
・相談室を設置しているが、相談に行きにくい環境にある。(医療・福祉関連、1001名~5000名)
・メンタルヘルス不調によりパフォーマンスが低下した社員の使い方、メンタルヘルス不調を抱えたセクションの社員のストレス対処法。(その他サービス、1001名~5000名)
・地方の小規模事業所における産業医契約の困難さ。(情報処理・ソフトウェア、1001名~5000名)
・発病するまでは他人事として受け入れられているため、サービスの利活用率が乏しい。(保険、1001名~5000名)
・日常のマネジメント上での不調者の早期発見と、その状況を生まない為の予防的組織マネジメントの実践。(人材サービス、1001名~5000名)
・上層部はメンタルヘルスの重要性を感じていない。(繊維・アパレル・服飾、1001名~5000名)
・従前からの考え方を持っている職員の中には、わがままとメンタルヘルスの区分けができていない。(その他サービス、501名~1000名)
・休職期間中のスキル維持と復職後の定着・再発防止。(情報処理・ソフトウェア、301名~500名)
・対策の重要性が認識されておらず、何かが起こってから対応するという場当たり的な色合いが強い。(化学、301名~500名)
・知識があっても忙しくて各現場での対応ができない。(人材サービス、101名~300名)
・パートタイム、拠点数が多いため、周知方法を誤ると便乗したメンタル不調者が発生するリスクがある。(百貨店・ストア・専門店、101名~300名)

メンタルヘルス関連予算が増える企業は13%にとどまる

「人事支援サービス【メンタルヘルス】に関するアンケート調査」結果報告

メンタルヘルスサービスにかける予算の増減について訊いたところ、85%の企業が「ほぼ変わらない」と回答。「減る見込み」とした企業はわずか2%であるが、「増える見込み」とする企業は13%にとどまった。大企業ではすでにメンタルヘルス対策が実施されていることもあり、企業規模別では大企業よりも中堅企業に「増える」企業の割合が多くなっている。

図表5:メンタルヘルス対策予算の増減

重視するポイントは「価格」が断トツ

「人事支援サービス【メンタルヘルス】に関するアンケート調査」結果報告

メンタルヘルスサービスを採択する際の決め手を訊いたところ、トップは「価格」の59%で、2位の「情報提供力」(41%)とは
18ポイントもの差がある。3位は「産業医・産業保健師の体制」と「人事労務実務の精通度」が36%で並んだ。「サービスのユニークさ」は13%にとどまり、提供されるサービス内容に大きな差がなく価格競争に陥っていることがうかがえる。サービス提供会社には、独自性の高いサービスの開発を期待したい。

図表6:メンタルヘルスサービスを採択する際の決め手

【調査概要】

調査主体:HR総研(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2013年10月28日~11月6日
有効回答:305社

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