前回に引き続き、HR総合調査研究所(HRプロ)が、2012年2月24日から3月8日にかけて実施した「人事課題に関する調査」の結果をもとに、人事考課制度の改定状況と女性活用の進展について取り上げてみたい。

4割の企業が人事考課制度を5年以内に改定

「人事課題に関するアンケート調査」結果報告【2】

「過去5年以内に人事考課制度を改定したか」という設問に対して、メーカー系、非メーカー系、規模別で大きな差異は見られない。「改定した」のは全体の4割、「改定していない」が5割強だ。細かく見ると、メーカー系の方が「改定していない」ようだが、あまり大きな違いではない。

図表1 過去5年以内に人事考課制度を改定したか(全体・規模別)

「明確化」「簡素化」が目立つ人事考課制度の改定

「人事課題に関するアンケート調査」結果報告【2】

今後に「人事考課制度の改定を予定しているかどうか」という設問に対しては、全体で3割弱が「予定している」、4割強が「予定していない」。そして「わからない」という回答も3割強ある。
前項で説明した通り、「5年以内に改定」した企業は4割で114社だが、うち32社は「改定を予定」している。「改定していない」と「わからない」企業の中で「改定を予定」は46社だ。これらを計算すると、全体の57%の企業が「改定」したか、これから「改定」する。
規模別では「301名~1000名」の企業が「予定」の率が高く、全体では36%、メーカー系では33%、非メーカー系では40%が予定している。
 「改定」の中身は、給与体系、等級制度に関わるものが多く、「明確化」「簡素化」という言葉が目立つ。「給与や賞与だけでなく、今後は人材育成と業績につながる制度変更に変えていきたい」という意見もあった。

図表2 人事考課制度の改定を予定しているかどうか(全体・規模別)

 フリーコメントで「現在の人事考課制度での課題」について回答を得ているが、人事担当者の悩みは根深いようだ。
 「社員個々を定量的に評価する方法がない」「考課者のスキル不足」「新卒を採用するのみでその育成、管理が不十分なため離職率が高く、中間層がいない」「考課項目が多すぎて複雑な計算を行いランク判定する。本人も所属長もなにが良くて(悪くて)この結果なのか複雑すぎてわからない。項目を減らしてシンプルにしたい」。
 これらのコメントから、評価することの難しさが伝わってくる。

女性比率は、半数近くの企業が20%未満

「人事課題に関するアンケート調査」結果報告【2】

「正社員における女性の比率」を問うたところ、全体の44%が「20%未満」だった。「20%~40%未満」は34%。合わせて78%が40%未満という計算になる。
 業種ではメーカー系で少ない。企業規模で少しバラツキがあるが、20%未満の企業は50%台から60%に分布している。「20%~40%未満」を加えると80%台になる。ただし「1~300名」の規模では、「40%~60%未満」が15%だ。「1001名以上」や「301名~1000名」と比べてかなり多い。
 当非メーカー系は総じて女性比率が高い。とくに「301名~1000名」では「40%~60%未満」が22%である。

図表3 正社員における女性の比率(全体・規模別)

女性活用に前向きな非メーカー系

「人事課題に関するアンケート調査」結果報告【2】

女性活用はあまり進んでいないが、これから女性の採用を増やすのかどうか。全体で言えば、ほぼ3分の2の企業が「ほぼ変わらない」、3分の1が「増やす」と回答している。
 ただ企業規模によって違いがあり、「1~300名」企業で「増やす」のは28%だが、「301名~1000名」では34%、「1001名以上」では38%と増えている。
 メーカー系はあまり女性活用に熱心ではないようだが、非メーカー系はかなり高い意欲を持っており、「1001名以上」の企業は41%が「増やす」と前向きだ。

図表4 女性社員比率をどうするか(全体・規模別)

非メーカー系では「事業部長・部長」も多い

「人事課題に関するアンケート調査」結果報告【2】

「女性管理職の役職」については、企業規模によって大きな差が出ている。「1001名以上」では「係長・主任」と「次長・課長」の割合が約8割に達しており、「事業部長・部長」も5割ほどいる。規模が小さい企業との差は大きい。
 メーカー系と非メーカー系を比べると、「係長・主任」のパーセントは変わらないが、「次長・課長」と「事業部長・部長」は非メーカー系がかなり高い。女性活用は非メーカー系で進んでいるようだ。

図表5 女性管理職の役職(全体・規模別)

女性管理職の割合で対照的なメーカー系と非メーカー系

「人事課題に関するアンケート調査」結果報告【2】

非メーカー系では、女性がかなり高い役職に就いていることがわかったが、数はどうだろうか。
 「管理職全体に占める女性管理職の割合」を見ると、全体では「ゼロ」が22%、「5%未満」が44%と、全体の3分の2が5%未満だ。「5%~10%未満」が17%、「10%~15%未満」が5%、「15%~20%未満」が5%。トータルすると93%が20%未満である。
 メーカー系と非メーカー系では見事なコントラストを示しており、メーカー系は女性登用が遅れている。「ゼロ」が28%、「5%未満」は56%で、メーカー系の84%が5%以下だ。
 非メーカー系はまったく違っており、「ゼロ」が19%、「5%未満」は35%と低く、かなり女性登用が進んでいるようだ。

図表6 管理職全体に占める女性管理職の割合(全体・規模別)

規模が大きいほど、女性登用に積極的

「人事課題に関するアンケート調査」結果報告【2】

「今後の女性管理職比率」の設問への回答から読み取れるのは、規模が大きい企業ほど女性登用に積極的なことだ。「1~300名」の企業では女性管理職を増やすのは40%だが、「301名~1000名」は49%、「1~300名」は54%と増えている。これはメーカー系でも非メーカー系でも同じ傾向になっている。
 メーカー系と非メーカー系を比較すると。非メーカー系で女性登用意欲が高い。とくに非メーカー系の「1001名以上」の企業では62%に達している。対照的なのはメーカー系の「1~300名」の企業でわずか28%にとどまっている。

図表7 今後の女性管理職比率(全体・規模別)

 「女性活用のための工夫」をフリーコメントで求めたところ、多岐にわたる施策が集まった。
 「能力主義であえて女性専用の制度を作らない」という企業も複数あるが、多くは産休・育児休業・時短制度、ワークライフバランスの充実を図っているようだ。また育児休職制度、ベビーシッター制度(金銭補助)を設けている企業もある。
興味深い施策だと思ったのは次のコメントだ。「夫の転勤で他県に引っ越した場合でも、正社員のまま在宅勤務を承認し、オフィスと在宅者を常時Webカメラで接続しておき、プロジェクトメンバーと円滑なコミュニケーションがとれるように支援。会議もWebカメラ接続で通常参加。業務は、在宅でも可能なものにシフト」。この企業の場合、女性支援にとどまらず業務プロセス自体を革新しているようだ。
 このような先進的な仕組みを導入している企業はまだ少なく、法定の範囲での支援にとどまる企業が多いようだ。

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