昨年よりも早いペースで内定出しが進んでいる2018年新卒採用戦線。6月1日の面接選考解禁から1カ月近く経過したところで実施した企業の採用動向調査の結果を報告する。
面接選考の時期、内定出しの時期、内定者充足率、内定辞退、今後の活動等の状況にスポットをあててみる。

面接選考開始は「3月後半」「4月後半」が2つのヤマ

HR総研:2018年新卒採用活動動向調査 結果報告(6月下旬調査)

経団連の指針では、「面接選考開始は6月1日以降」とされているが、それを順守している企業は極めて少ない。経団連加盟の大手企業ですら、表向きは「6月1日選考開始」を謳いながらも、それ以前に「面接」との表現を使用しないだけで、実質的な面接選考を水面下で繰り返し、6月になるとともに内定ラッシュとなった。
面接開始時期のヤマは、「3月後半」と「4月後半」。会社説明会が解禁となった3月からいち早く選考を開始する企業群と、6月初旬または5月末に内定出しを狙った企業群が多かったと言える。

[図表1:面接選考開始時期]

5月が面接のピーク

HR総研:2018年新卒採用活動動向調査 結果報告(6月下旬調査)

面接を実施した時期(予定を含む)を複数選択で回答してもらったところ、最も多かったのは「5月前半」「5月後半」でともに62%、次いで「4月後半」の60%、「6月前半」の58%と続く。「6月後半」には48%と10ポイントも少なくなり、半数を下回る。「4月前半」に面接した企業は46%と、すでに半数近くなっている。

[図表2:面接時期(複数選択)]

面接人数は、前年よりも減少した企業が増加した企業を上回る

HR総研:2018年新卒採用活動動向調査 結果報告(6月下旬調査)

今年の面接人数を前年と比較したデータがこちら。どの企業規模でも「前年並み」が最も多いが、「前年よりも多い」と「前年よりも少ない」を比較すると、大手企業を含めて「前年よりも少ない」企業のほうが20ポイント近く上回っている。「前年よりも少ない」企業の割合は、中小企業よりも中堅企業のほうが多くなっている。「3割以上少ない」企業の割合も16%で、最も多くなっている。

[図表3:面接人数の対前年比]

文系学生への内定出し開始は「5月後半」がトップ

HR総研:2018年新卒採用活動動向調査 結果報告(6月下旬調査)

文系学生の内定出し開始時期は、「5月後半」が18%でトップ、次いで「6月前半」が15%で続く。「6月後半」になると8%と半減する。「5月後半」までに内定出しを開始した企業は65%と、ほぼ3分の2の企業となっている。

[図表4:文系の内定出し開始時期]

文系学生の内定出しのヤマは「5月後半~6月前半」

HR総研:2018年新卒採用活動動向調査 結果報告(6月下旬調査)

文系学生に内定出しを行った(行う予定)の時期を回答してもらったところ、最も多かったのは「6月前半」の48%、次いで僅差で「5月後半」が46%で追う形になった。3番目に多かったのは「6月後半」の41%で、「5月前半」の36%を上回る。「4月前半」は19%に留まり、「4月後半」では10ポイント以上増加し、30%に達している。

[図表5:文系への内定出し時期(複数選択)]

理系学生への内定出し開始は「4月前半」から「6月前半」

HR総研:2018年新卒採用活動動向調査 結果報告(6月下旬調査)

文系学生と比べると、理系学生への内定出しのタイミングは微妙に異なる。メーカーの大手企業では、理系のメインの採用対象は学部生ではなく修士となる。また、推薦による選考が多いのも理系の特徴である。
内定出し開始時期のトップは、推薦制度との絡みで「6月前半」の16%であるが、ほとんど同程度の15%で「4月後半」が並び、次いで「5月後半」「5月前半」も13%、12%と僅差で続く。

[図表6:理系学生への内定出し開始時期]

理系学生の内定出しのヤマも「5月後半~6月前半」

HR総研:2018年新卒採用活動動向調査 結果報告(6月下旬調査)

内定出しの開始時期では文系と違いが見られた理系学生であるが、内定出しを行った(行う予定)の時期では、文系と同じく最も多かったのは「6月前半」の50%、次いで「5月後半」が48%で続く。文系では3番目は「6月後半」であったが、理系では「5月前半」が45%で続く。文系よりも早めに内定出しのピークが来ていることがわかる。

[図表7:理系学生の内定時期(複数選択)]

内定者充足率80%以上の企業割合、大手企業54%に対して、中小企業は23%

HR総研:2018年新卒採用活動動向調査 結果報告(6月下旬調査)

採用計画数に対する現時点での内定者数を「内定者充足率」と呼ぶ。企業規模別に状況は大きく異なり、大手企業では「80%以上」が54%と過半数であるのに対して、中堅企業では31%、中小企業では23%に留まる。中小企業では「20%未満」が39%、内定者ゼロ(0%)の企業も27%にも及ぶ。大手企業の中にも優劣はあるが、企業規模による違いは明白である。

[図表8:内定者充足率]

内定者にインターンシップ参加者がいない企業は少数派

HR総研:2018年新卒採用活動動向調査 結果報告(6月下旬調査)

インターンシップを実施した企業を対象に、内定者に占めるインターンシップ参加者の割合を聞いたデータがこちら。あくまでも結果論のため、インターンシップと選考が結びついているかどうかは関係ない。
インターンシップ参加者が内定者の中に1名もいないとする企業は、全体で28%、大手企業だけに限定すればわずか17%に留まる。残り83%は、内定者の中にインターンシップ参加者が含まれるという。企業規模による違いが明らかにあり、中小企業では1名もいない企業が37%にも達する。内定者充足率がまだ低く、今後高まる可能性も残されているが、インターンシップ参加者の選考は一般学生よりも早く進むことが多いことを考えると、大きく数字が変わることは考えづらい。

[図表9:内定者に占めるインターンシップ参加者割合]

前年よりも増えている「内定辞退」

HR総研:2018年新卒採用活動動向調査 結果報告(6月下旬調査)

内定辞退者の割合を前年と比較してもらったところ、「前年と変わらない」とする企業が44%で最も多いものの、「前年より少ない」とする企業と「前年より多い」とする企業の割合は、圧倒的に「前年より多い」とする企業が多くなっている。「前年より少ない」とする企業は15%なのに対して、「前年より多い」とする企業は倍以上の31%にも及ぶ。企業側の内定出しタイミングは前年よりも早くなっており、内定を取得している学生割合が増えていること、さらには重複内定が増えていることが推測される。次回の報告では学生側の調査結果を発表するが、重複内定を取得しながら、まだ内定辞退の連絡をしていない学生も少なくなく、今後、内定辞退はさらに増えていくものと推測される。

[図表10:内定辞退者割合の対前年比較]

6月末までに採用活動を終了する企業は25%に留まる

HR総研:2018年新卒採用活動動向調査 結果報告(6月下旬調査)

2018年卒採用の活動をいつまで続ける予定かを聞いたところ、「6月まで」に採用活動を終了する(終了した)企業は25%に留まり、「7月」終了予定の企業が16%で最も多い。「10月」の内定式を、採用活動を終了するひとつの目安にしている企業も多く、「9月」「10月」と8%で推移し、「11月」とする企業はわずか1%に留まるものの、今年中に採用活動を終了したいとの思いから、「12月」は一転して12%と跳ね上がる。

[図表11:採用活動終了時期(予定)]

半数の企業が「新たにエントリーを受け付ける」

HR総研:2018年新卒採用活動動向調査 結果報告(6月下旬調査)

今後の採用活動について聞いたところ、「すでに終了した」とする企業と、「既存のエントリー者を対象に選考を継続する」企業がそれぞれ約2割となり、半数の企業は「新たにエントリーを受け付ける」と回答しています。手持ちの学生だけでは足らず、新たな応募者を開拓する必要に迫られているという。まだ就職活動を継続している学生にとっては、朗報と言える。

[図表12:今後の採用活動予定]

「大変になった」と感じる企業が過半数

HR総研:2018年新卒採用活動動向調査 結果報告(6月下旬調査)

2017年卒採用と比較して、2018年卒採用活動はどうだったかを聞いたところ、「変わらない」との回答が42%で最多ではあるが、「かなり大変になった」「やや大変になった」を合わせると57%にも及ぶ。ここ数年、経団連による採用スケジュールは毎年変更を繰り返していたのに対して、2018年卒採用は前年と同じスケジュールの2年目であったにも関わらずである。
「大変になった」理由を見てみると、
●そもそも、就職協定の形骸化が甚だしく、6月第1週の選考過程での辞退が増加したこと。また、売り手市場を受けて、内定伝達時も他社状況を見極めてから決断したいという強気発言が散見されたこと。(メーカー、1001名以上)
●スケジュールを過密にせざるを得なくなり、休みもままならず体力的にも厳しかった。かなり活動的にやったにもかかわらず昨年水準を維持するくらいが精一杯だった。かなり早い時期に内定をたくさん持っている人がたくさんいた。(メーカー、1001名以上)
●学生の動きが読みづらいため、どこでどんなアプローチをすればもっとも効果があるかがわからない。(情報通信、1001名以上)
●選考回数や実施施策を増やしたことで、かなり負荷が増大した。(情報通信、1001名以上)
●インターンシップの参加が当たり前の状態となり、活動期間が長くなってきているため。(情報通信、1001名以上)
●学生の質が変わってきた。またエントリー数は増えたが実際に選考まで進む人数は減った。(サービス、1001名以上)
など、企業規模に関わらず、大手企業でも苦労していることが窺える。

【調査概要】

調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2017年6月21日~6月28日
有効回答:178社(1001名以上:20%、301~1000名:34%、300名以下:46%)

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