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調査レポート

HR総研:ストレスチェック制度実施状況に関する調査 結果報告
意外に高かった?! 3社に2社が、90%以上の受検率

2015年12月より施行された「ストレスチェック制度」では、従業員数50人以上のすべての事業所に「ストレスチェック制度」が義務付けられた。対象企業では、昨年11月末までにストレスチェックの実施を終えている状況だ。

HR総研では、ストレスチェックが義務付けられている従業員数50人以上の事業所、および50人未満でもストレスチェックに取り組んでいる企業のご担当者に、ストレスチェック制度に関してどのように取り組んだか、またどのような課題があるのかについて、アンケート調査を行った。

今回のHR総研調査では、ストレスチェック受検率「100%」と回答した企業が19%、「90〜100%未満」が46%で、あわせて65%になる。つまりおよそ3社に2社が、90%以上の受検率だった。

ストレスチェック制度を企業内で運用するにあたっての課題は、45%が「ストレスチェックの結果を職場の改善につなげる方法」と回答し、第1位となった。第2位は、「本人の了承なしにストレスチェックの個人結果を人事が見ることができない」で39%である。

詳細は下記をご覧ください。

運営上、うまくいったのは、第1位「告知・啓蒙」、第2位「個人向けの結果のフィードバック」
まず、ストレスチェック制度において「運用上、うまくいったと思われるのはどれですか」と選択式で聞いた。
もっとも回答数が多かったのは「告知・啓蒙」で53%、第2位は「個人向けの結果のフィードバック」(37%)、第3位は「スケジュール設定・管理」および「ストレスチェック実施」(35%)だった。

告知に関しては、「ストレスチェックという言葉を周知させ、必ず受けるようにするために導入前から告知に努めた」(301名〜1000名、メーカー)というコメントにあるように、比較的うまくいったようだ。

個人向けの結果フィードバックも混乱なく行えたようで「レーダーチャートで個人の特性をフィードバックしたため、『分かり易い』との声が多く聞かれた」(1001名以上、サービス)と評判も良い。

「スケジュール設定・管理」においては、「外部委託業者主導でスムーズに進めることができた」というコメントにあるように、外部協力社との連携が成功した例もあるようだ。

また、ストレスチェック(受検)に関しては、「初めての実施だからかもしれないが、回答(提出)率が高かった」(301〜1000名、メーカー)という企業が何社もある。受検率は別途回答を見るが、今回の回答を見る限り、ストレスチェックの実施と個人向けフィードバックまでは、おおむね順調に実施できたと言えそうだ。

【図表1】運用上、うまくいったと思われること
うまくいかなかったのは「高ストレス者の申し出と面接指導」
「運用上、うまくいかなかったと思われるのはどれですか」との質問では、「高ストレス者の申し出と面接指導」が33%で第1位、「職場のメンタルヘルス改善」が33%で第2位となった。

「高ストレス者の申し出と面接指導」に関するコメントとしては
・「産業医面接はあくまでも推奨であり、本人の意識のバリアが高く、産業医面談に来てくれない」(1001名以上、メーカー)
・「高ストレス対象からの、面談希望が少なかった」(301名〜1000名、メーカー)
という、想定していた高ストレス者からの申し出が少なかったという声が数々ある。
・「入力方法の不備や受信者のストレスに対しての認識に格差があり、高ストレスの判定があったとしても産業医面談を拒否する者も多くいる」(301〜1000名、サービス)
など、高ストレス者からの面談に関してうまくいかなかったと思っている人事が多い。

一方で
・「産業医を選定して契約したが、運用コストが高く、経営陣からは再考を求められている。また、面談対象者が多く契約産業医だけでは改善が図られない」(1001名以上、商社・流通)
・「特に産業医の知識不足、責任逃れ的な態度が問題となった」(300名以下、メーカー)
という問題もでている。

【図表2】運用上、うまくいかなかったと思われること
ストレスチェック受検率はおよそ3社に2社が90%以上。100%も約2割
ストレスチェックの受検率を聞いたところ、「100%」との回答が19%あった。「90〜100%未満」が46%で、全体でみると65 %の企業が90%以上の受検率だった。ストレスチェックの受検率はおおむね高い水準だったと言える。

コメントでは
・「安全衛生委員会等で事前に告知したうえ、WEBでの回答方式で実施したため、受検率が思いのほか、高かった」(301〜1000名、メーカー)
・「ストレスチェツクの回収率は99%以上で、10人以上のグループ診断も実施できた」(301〜1000名、メーカー)
・「回答率がほぼ100%だった」(301〜1000名、情報・通信)
と順調さを示す記述も数々あった。
・「調査票の回答がごく一部の社員に限られると想定していたが、ほとんどの社員が調査票に記入し回答した」(300名以下、メーカー)
という声のように、想定を上回って受検・回答した企業もある。

【図表3】ストレスチェックの受検率
ストレスチェック制度の成果は「社員が自分自身のストレスについて考えるようになった」
ストレスチェック制度を導入してした成果について、人事担当者どのように見ているのだろうか。「ストレスチェック制度実施による成果があれば教えてください」(複数回答可)という質問での最多回答は、「社員が自分自身のストレスについて考えるようになった」(50%)となった。第2位は、「ストレス過多な職場・組織が明らかになった」(29%)、第3位は「管理職が部下のメンタルヘルスに気を配るようになった」(26%)である。この傾向は、企業規模によって変わりはない。

コメントでは
・「明らかにストレス過多な組織や負荷の高い職場が明らかになり、対策を打つことが可能になりました。やはり、残業の多いメンバとメンタル不調者がリンクしていることも統計上、明らかになったので、改善に対しての大きな意味となりました」(1001名以上、情報・通信)
・「メンタルヘルスへの意識が本人・上司ともに向上した。問題のある部門への指導と対策がしやすくなった」(301〜1000名、サービス)
・「たかが57問の質問であったが、組織分析の結果には納得できるものがあり、改善すべき傾向を掴むことができた」(301〜1000名、メーカー)
・「勤務状況より未然にラインケアをする動きが少しずつでてきた」(301〜1000名、メーカー)
など、肯定的な意見が数多く見られた。

社員一人ひとりのストレスに関する認識の定着や、組織のストレス度合の把握、また管理職・上司の部下のメンタルヘルスに関する関心の向上などが図れれば、第1回目のストレスチェック制度実施成果としては上々といえるだろう。

【図表4】ストレスチェック制度実施による成果
課題の第1位は「ストレスチェックの結果を職場の改善につなげる方法」
「ストレスチェック制度実施全般で、課題だと思うことをお選びください」という質問に対しては、第1位「ストレスチェックの結果を職場の改善につなげる方法」(45%)、第2位「本人の了承なしにストレスチェックの個人結果を人事が見ることができない」(39%)、第3位「高ストレス者による面接指導の申し出が少ない」(33%)、第4位「高ストレス者の実態を人事が把握できない」(31%)となった。

コメントでは
・「組織分析の結果を、具体的にどのように改善につなげればよいのか、手探り状態。外部委託会社も初めてのためか、よいアドバイスをもらえなかった」(1001名以上、サービス)
・「産業医面接はあくまでも推奨であり、本人の意識のバリアが高く、産業医面談に来てくれない」(1001名以上、メーカー)
・「せっかくチェックテストをおこなっているのに、人事部門が結果を見ることができないので、高ストレス者を見逃す可能性がある」(301〜1000名、メーカー)
などが挙がっている。

当初から想定されていたことではあるが、高ストレス者が自ら医師との面談を申し出る、という仕組みは、人事担当者から見れば隔靴掻痒というところだろう。

【図表5】ストレスチェック制度実施全般で課題だと思うこと
最後に、ストレスチェック制度に対しての人事担当者の意見をご紹介しよう。

・「今までうやむやとなっていた職場独自の問題が浮き彫りなったことは良いと思うが、そこから先の改善につなげるような考えがない。職場の従業員の特性も幾分か影響しているところもあるので結果をそのまま鵜呑みにはできない。どこまで生かせばよいのかまだ判断し辛い」(301〜1000名、メーカー)
・「1年目は法令に従って、準備・実施することが精一杯であった。2年目は、もう少し『(経年)結果をどう活用していくか』を意識して取り組んでいきたい」(300名以下、運輸・不動産・エネルギー)
・「業務上どうしても、ストレスがたまるのは仕方ないが、それを如何に低減させるかが今後の課題となるだろう事案。ただ、ストレスがありますとわかっただけでは、何の解決にもなっていないことがよくわかった」(301〜1000名、サービス)
・「制度実施するのであれば、徹底的に結果の活用と職員サポートを連動させたい。働き方改革や離職防止策の中心的役割にまで発展させたい」(301〜1000名、サービス)

ストレスチェック1年目としては、「ストレスチェック受検」の実施と個人フィードバックまでを確実に実施することができていればまずまず合格といったところだろう。
人事担当者が課題としてる「職場改善」や「高ストレス者の把握」は、2年目以降は具体的な課題として取り組むことになると思われる。職場改善に関しては各社の事例を研究したり、ターゲットを絞って取り組むなどの方法で、各社なりの方策を見つけ出すことが重要だ。組織改善のプロに相談するのも一考である。

「高ストレス者の把握」は、現法では人事が直接手を下すことができない。個人情報保護や守秘性の問題から、現状のような仕組みでの開始となっているが、このままで継続しても有効性がなければ、やがて形骸化していくのではないかと懸念される。
 人事担当者が対応できることとしては、個人が「高ストレス」の結果がでたときに、医師への面談を気軽に受けられるような風土と仕組みを作ることである。ストレスチェック制度をきっかけとして社員一人ひとりが自分のストレスに対して関心をもつようになった、という進歩が生まれているのだから、高ストレスへの対応も個人ができるようになると信じて、この取り組みを進めていきたいものである。
【調査概要】
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2017年2月22日〜2月28日
有効回答:148件(1001名以上:23%、301〜1000名:28%、300名以下:49%)