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調査レポート

HR総研:介護休業・休暇(仕事と介護の両立)に関する調査 結果報告
「介護離職者がいる」のは1001名以上規模企業で約7割、5割の企業は「今後、介護を行う従業員が増えるのが心配」

2015年に、日本の高齢者人口の大きな山であるベビーブーム世代が前期高齢者(65〜74歳)に到達した。2025年には、高齢者人口は約3,500万人に達すると推計され、「2025年問題」と呼ばれている。今後、介護ニーズも爆発的に増加することが予測され、企業では従業員の介護離職が問題となってきた。

そこで政府では、「育児・介護休業法」を改正(平成29年1月1日施行)し、「介護休業」については、「介護を必要とする対象家族1人につき通算93日まで」、従前は「原則1回に限り取得可能」であったものを、「3回を上限として、介護休業を分割して取得可能」と改正した。

また、「1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで、介護その他の世話を行うための休暇の取得が可能である「介護休暇」については、従前が「1日単位の取得」であったものを、「半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能」と改正した。

さらに、介護のための所定労働時間の短縮措置等について、改正後は、「介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能」となり、「介護終了まで残業免除が受けられる制度」も新設した。

今回のアンケートでは、介護と仕事の両立について、企業でどのような実態があるのか、またこうした制度がどの程度利用されているか、課題は何かを調査した。

*「育児・介護休業法」改正について詳しくは、厚生労働省パンフレットをご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h28_06.pdf

「従業員が仕事と家族の介護を両立することに課題がある」と感じるのは65%
はじめに、「従業員が仕事と家族の介護を両立することに課題があると感じるか」について尋ねた。
全体で見ると、「課題がある」は65%、「介護している従業員はいると思われるが、特に課題があるとは感じない」が22%、「介護している従業員がいないため、特に課題は感じない」が13%となった。

しかし規模別に見ると1001名以上の大規模企業では、「課題があると感じる」が81%となった。大規模企業では全国展開する企業が多かったり、従業員数が多ければそれだけ家族の介護をする人も多くいると考えられる。

【図表1】従業員が仕事と家族の介護を両立することに課題があると感じるか
従業員の介護ニーズを把握しているのは半数以下で43%
企業は、従業員の介護ニーズをどのくらい把握しているのだろうか? 「介護ニーズを抱えている従業員がいるかどうか実態を把握していますか」という問いに対して、「把握している」が43%、「把握していない」が57%であった。

この傾向は、企業規模別では差異がほとんどなかった。介護と仕事の両立に課題がある1001名以上の大規模企業でも、実態の把握は4割程度しかできてない、という実態が浮かび上がった。

自由記述のコメントでは、
「プライベートな問題ゆえ、どこまで会社側が把握し、配慮をすべきかが見えづらい点が、育児に比べて難しいと感じる」(1001名以上、メーカー)
「従業員自身があまり言いたがらないこともあり、必ずしも実態が把握できていないのが現状である」(1001名以上、メーカー)
とその理由が述べられている。

「育児に関する制度は法制度等でも進められているが、介護についてはまだまだそれほど周知や強制力もなく、会社としても進んでそこまで踏み込もうとか、踏み込んでいくべきといった考えも出てきていない。もっと法律等でも育児同様に法制化、周知をしてもらった方が取り組みやすいところもある」(1001名以上、メーカー)

という声にみられるように、介護についてはまだ社会的に認知度が低いことから、取り組みがしにくい面があるのではないだろうか。

しかし人事としても、実態が把握できていない状況では施策が打ち出しにくい。半数を超える「把握できていない」企業では、実態を把握できるようになるための風土の醸成から行っていかなければならないようだ。

【図表2】介護ニーズを抱えている従業員がいるかどうかの把握をしているか
法定制度の設定は8割、「法定を上回る」のは2割以下
介護に関する法律では、「介護休業制度」「介護休暇」「介護のための勤務時間の短縮等の措置」などがある。こうした制度への取り組み状況を聞いた。

「法定の制度の設定(就業規則への明記など)」を行っているのは80%である。法律が1月1日から施行されているので、本来であればすでに対応していなければならないが、まだ対応ができていない企業もあるようだ。

法律では、「法定もしくはそれを上回る制度を設定する」よう定められているが、「『法定を上回る内容』の制度策定の取り組み」を行っている企業は18%に留まった。

「介護に直面した従業員へ介護に関する制度の情報提供」が19%、「介護に関する制度を利用しやすい職場づくりの推進」が13%であり、介護に関する企業の支援はまだ普及していないと言える。

【図表3】介護に関する制度・施策への取り組み状況
1001名以上規模企業では「介護休業制度」利用者ありが5割以上
介護休業・休暇制度が整備されている企業で、「介護休業制度(通算93日)に関して、過去1年での正社員の制度利用の状況」を聞いた。

1001名以上の大規模企業では、「男性社員の利用者がいる」が56%、「女性社員の利用者がいる」が51%あり、介護休業制度がある程度活用されている様子が伺える。しかし一方で、「要介護者がいる従業員はいるが、介護休業制度の利用者はいない」が36%あり、3割以上の企業で制度が使われていない状況だ。

「介護休暇」の利用状況についても、「介護休業制度」とほぼ同様の結果となっている。

【図表4】「介護休業制度」利用者がいるか(1001名以上規模)
1000名以下では、「制度利用なし」が半数以上
「介護休業制度」に関して、1000名以下規模の企業ではその状況は増加し、53%が「要介護者がいる従業員はいるが、介護休業制度の利用者はいない」と回答している。

「まだ社内の風土として介護での休職に対して理解が得られにくいため、公表せずに苦労している社員が多くいる可能性がある」(301〜1000名、メーカー)
という声に見られるように、制度が利用されるようになるまでに、まだ様々な障壁があるようだ。

【図表5】「介護休業制度」利用者がいるか(1000名以下規模)
5割が「課題は今後、介護を行う従業員が増えること」と回答
「仕事と介護の両立支援を推進する上で、課題となっていることはありますか」という問いに対しては、「従業員の年齢構成から、今後、介護を行う従業員が増えると懸念されること」が50%で最多となった。

自由記述では以下のような声が寄せられている。
「現在は顕在化していないが、近い将来必ず経営課題として挙がってくるものであるため、今から制度を整えることに加え、管理職および社員の意識改革を進める必要があると考えている」(1001名以上、サービス)
「働き方改革・女性活用が叫ばれる中、高齢化社会を迎えるにあたり、実は育児よりも、介護の両立支援の方が、大きな課題になると感じているが、取り組みは進んでいないと思う」(1001名以上、メーカー)
「育児に対する社内の理解と利用は一般的になっているが、介護についてはまだ少数派のため理解浸透が進んではいない。ただしバブル期入社世代が多い当社において今後介護と両立した働き方を選択せざる得ない社員が増えるのは時間の問題である」(1001名以上、商社・流通)

第2位は「制度利用者をカバーするための業務分担・人員配置が難しいこと(38%)、第3位は「職場・職種によって制度を利用しにくい場合があること」(32%)となった。

【図表6】仕事と介護の両立支援を推進する上での課題
「介護離職者がいる」は1001名以上では約7割
「過去3年以内に、家族の介護を理由に退職した人がいるか」を聞いた。結果は企業規模ごとに異なり、1001名以上規模では「いる」が67%と約7割、301〜1000名の中堅規模では54%、300名以下の中小規模では14%である。

介護理由での退職者=介護離職が現実のものとなってくると、法定の制度を「就業規則に記載する」だけでは済まされない。家族の介護は育児休業と異なり、予定を立てることがままならないだけに、企業にとっては対応が難しいといえる。
法令順守のためだけでなく、ビジネスを継続していくために、各企業の事情に応じた「仕事と介護の両立支援」を図っていく必要があるだろう。

介護経験者の声を含むコメントを紹介する。

「介護休暇日数は、就業規則等で決められるものではない。介護経験者に言わせれば、『何をばかなことを!何ヵ月、何年もかかるかもしれないものをなぜ、日数制限しなければならないのか!介護がどんなに精神的、肉体的にきついものであるか、わかってほしい。』と言う。少子高齢化になればなるほど、切実な身近な問題として噴出することは必至。法律以上の施策を企業側は考えるべきであり、国ももっと現実的な法律を作ってほしい」(300名以下、メーカー)

「今現在、自分自身が要介護認定を受けた家族と同居しているが、休日等の行動も従前の様にはいかず、要介護者中心の生活を送っている。介護は家族全員の理解と協力が得られなければ非常に大変である」(300名以下、メーカー)

「私自身が介護理由に役職を途中放棄申請をしている。やはり、週5日勤務は困難であり、また朝8:30までに職場に来ることもデイケア見送りが7時頃となるので困難。よって、ワーキングシェア導入が必須である」(1001名以上、金融)

そして、介護の問題に対して悩んでいる人事担当者の声を代表するのが、以下のコメントだ。
「残業をなくそうという世の中の動きに合わせ、当社も時間短縮運動に取り組んでいる。そんな中、社員の年齢も上がってきて介護問題が今後多くなってくると思うが、問題は業務をどう効率的に行うか。業績は上げていかねばならないので、その点が解決しない限り、制度の適切な運用はできないと感じる」(301〜1000名、サービス)

【図表7】過去3年以内で、家族の介護を理由に退職した人がいるか
【調査概要】
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2017年2月15日〜2月21日
有効回答:207件(1001名以上:23%、301〜1000名:29%、300名以下:49%)