調査レポート

「インターンシップ採用に関する調査」結果報告
インターンシップ採用解禁には賛成するも、「指針」廃止は反対

今や採用活動の重要な施策となった「インターンシップ」。
ただし、経団連の「採用選考に関する指針」の手引きによれば、採用広報活動の開始日より前に実施するインターンシップについては、学生の就業体験の機会を提供するものであり、採用選考活動とは一切関係ないことを明確にして行う必要があるとされている。
そんな中、1月11日の日本経済新聞による「文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省は、企業がインターン時に得た学生の評価を採用にも生かせる案を検討するとともに、経団連などと調整をしていく」との報道を受け、インターンシップ採用の解禁について、各企業の採用担当者がどう考えているのかを探るべく、アンケート調査を実施した。

中堅・中小企業がウィンターインターンシップ件数を押し上げる
サマーインターンシップとウィンターインターンシップの実施企業数を比較してみると、大企業では変化がないものの、中堅企業では37%→54%へと大きく伸び、中小企業でも25%→32%へと伸びている。昨年の夏の段階では、まだ2017年卒採用が継続する中でサマーインターンシップの開催どころではなかった企業群が、3月の解禁を前にウィンターインターンシップでの巻き返しを図る。サマーインターンシップでは時期が早すぎて、選考の時期まで学生を引っ張り切れないからとの理由もあるだろう。

[図表1]インターンシップ実施企業割合比較
1Dayが溢れかえるウィンターインターンシップ
それぞれの時期に実施されるインターンシップの期間を比較してみた。サマーインターンシップでは、「1日」(25%)よりも「1週間(5日)」(29%)の方が多く、「2週間」(23%)も「1日」に次いで多くなるなど、職場での実務体験をともなったインターンシップが多いようである。
一方、ウィンターインターンシップでは、「1週間(5日)」が14%にとどまるのに対して、「1日」は48%、「半日」も33%と大きく伸びている。サマーでは23%もあった「2週間」は、わずか2%に過ぎない。セミナーまがいのインターンシップが横行している。

[図表2]インターンシップの期間比較
ウィンターインターンシップで実務体験は激減
次にインターンシップの内容で比較してみたい。本来のインターンシップに求められている「実務体験」は、サマーインターンシップでは半数の企業でなんらか実施されているのに対して、ウィンターインターンシップでは3割程度の企業で行われるのみである。しかも、上記で見たように、「1週間」以上のインターンシップが限られていることを考えると、実務体験と言っても「半日」や「1日」では店舗見学レベルしか無理であろう。なお、グループワークすらないまさにセミナーと言った内容の企業も1割ある。

[図表3]インターンシップの内容比較
(注)複数のタイプのインターンシップを実施している場合には、複数選択が可能なため、合計数字は100%を超える。
「選考と結びつける」インターンシップが倍増
インターンシップと採用活動との関連を聞いたところ、「優秀な学生は考慮する」「採用情報を知らせる程度」とする企業の割合はそれほど変わらないものの、「選考と結びつける」とする企業の割合は、サマーインターンシップの12%から24%へと倍増している。まさに採用活動の一環としてのインターンシップとなってきている。

[図表4]インターンシップの採用活動との関連比較
インターン募集方法は「就職ナビ」と「自社HP」
インターンシップの告知方法では、「就職ナビ」が2位以下を大きく引き離して69%と独走している。「リクナビ」「マイナビ」をはじめとする就職ナビが、前年の6月1日のプレオープンとともに掲載するキラーコンテンツがインターンシップ情報となっている。
例えば「リクナビ」を見てみると、2月10日現在でまだエントリーが間に合うインターンシップ情報掲載企業は3301社にものぼる。「マイナビ」も2833社が受付中である。
その他の募集ルートとしては、「自社HP」37%、キャリアセンター(広報のみ)35%が続く。選択肢として用意されていなかったが、「その他」を選択した企業からは、「インターンシップ合同説明会」等のイベントでの告知を挙げる声が多かった。

[図表5]インターン募集方法
大学のインターンシッププログラムへの協力企業は1/3
インターンシップを実施している企業のうち、大学の単位認定されている、あるいは単位認定されないまでも大学からの依頼を受けて実施しているインターンシップがあるかを確認してみた。大学のプログラムとしてのインターンシップに協力している企業は全体で36%にとどまった。大企業で42%、中小企業で34%と企業規模による差異はあるものの、それほど大きな差異にはなっていない。大学のインターンシッププログラムに協力している企業も、それだけではなく独自募集のインターンシッププログラムも並行して実施している企業が大半であろう。
大学のインターンシッププログラムでは、1週間から2週間のプログラムが求められるだけでなく、その内容についても厳しく問われ、事前学習から事後学習、さらには成果発表会への参加まで求められるなど、企業側の負担が大きいことも協力企業が伸びない要因であろう。さらには、昨今の就職ナビを通じたインターンシップ募集の普及に伴い、大学を経由することなく、直接募集のインターンシップを容易に実施することができるようになったことも大きい。大学のインターンシッププログラムでは、参加学生は通常大学側がマッチングして送り込んでくるのに対して、自社直接募集であれば、参加者の事前選考も自分たちで実施することができる。大学側からすれば、さらなるキャリア教育の充実のために、大学のインターンシッププログラム協力企業を増やしたい、あるいは受入数を増やしてほしいところであろうが、企業側からすれば、自社直接募集のプログラムの方を拡充したいのが本音だろう。

[図表6]大学のインターンシッププログラムへの協力状況
インターンシップ採用には「賛成」
日本経済新聞の報道のように、インターンシップで得た学生評価情報を採用活動に利用してよい、すなわちインターンシップ採用の解禁についての是非を聞いてみた。「どちらとも言えない」と判断がつかない人の割合が、大企業で48%、中堅企業では54%と過半数に及ぶ。そんな中、中小企業では「どちらとも言えない」は39%と最も少なく、「賛成」が52%で過半数を超えるなど、圧倒的に「賛成」派が多い。大企業、中堅企業でも「反対」は1割程度なのに対して、4割前後が「賛成」と回答しており、企業規模を問わず、「インターンシップ採用」には肯定的な立場となっている。

[図表7]インターンシップ採用の是非

それぞれの意見の理由を見てみましょう。

【賛成】
・知名度が高くない企業、あるいは職務内容がイメージしにくい職務を学生に知ってもらう良い機会と考えるため(1001名以上、メーカー)
・就業体験は学生にとって企業と自分が合うかを判断する場とも言える。反対に企業が学生を判断することでミスマッチが防げると思うから(1001名以上、メーカー)
・インターンシップが採用ツールとして活用されることは違和感があるが、実質的にやっている企業も多くそれは自然なことだとは思う。学生も何となく参加するのではなく目的意識が高まるのでは(300名以下、メーカー)

【反対】
・実質的に採用活動の前倒しに拍車がかかるから(1001名以上、メーカー)
・インターンシップから採用まで対応できるのは大企業で、中堅企業・中小企業は不利となる(301〜1000名、情報・通信)
・本来のインターンシップとは別物になっているので、名称を変更するべきである(300名以下、商社・流通)
インターンシップ採用解禁となれば、大手は積極的活用
現在インターンシップを実施していない企業だけを対象に、仮にインターンシップ採用が解禁となった場合に、インターンシップを実施するようになるのかを聞いたのがこちらのデータだ。中堅企業では13%と消極的なものの、中小企業では38%、大企業にいたっては67%と2/3の企業が「実施すると思う」と回答している。大手企業では、「インターンシップは、産学連携による人材育成の観点から、学生の就業体験の機会を提供するものであり、社会貢献活動の一環と位置付けられるものである。したがって、その実施にあたっては、採用選考活動とは一切関係ないことを明確にして行う必要がある」とする、経団連の「採用選考に関する指針」の手引きによる縛りがあるために、現在は採用に活用できないがためにインターンシップを実施していない企業が多いと言える。

[図表8]インターンシップ採用解禁後のインターンシップ活用意向
「指針」の廃止には判断つかず
日本経済新聞の報道によると、経団連は、インターンシップ採用が解禁となった場合には、採用スケジュールを取り決めている「指針」の廃止を検討するとしている。「指針」の廃止の是非について聞いたところ、いずれの企業規模でも「どちらとも言えない」と判断がつかない企業が過半数を占める結果となった。中でも中堅企業では6割近い企業が「どちらとも言えない」としており、「指針の廃止は当然だ」とする割合は24%と、規模別では最も少なくなっている。廃止を検討するとする経団連に理解は示すものの、自社の採用を考えると廃止は困るという企業の割合が多いものと推測される。

[図表9]「指針」の廃止について

【廃止は当然】
・「経団連の指針」であり、未加盟企業にしてみれば遵守の義務もないところに加えて、実質夏のインターンシップから採用につながるのなら「指針」の意味などなくなる(1001名以上、メーカー)
・有名無実化している指針は不要。大企業ほど組織力・マンパワーで水面下採用活動を実施している(1001名以上、商社・流通)

【廃止すべきではない】
・早期からの採用によって学生が多種多様な企業を見ることがなくなる可能性や、逆に大学2、3年で一度決めた就職先を4年生になって再考することも考えられ、そうした場合、学生、企業ともに負担が大きい(301〜1000名、メーカー)
・インターンシップを本質的なものにすることは、より強固な囲い込みになり、大学生の機会損失になりかねない。現状のインターンシップの制度では、学生企業ともにメリットがない(300名以下、サービス)
「指針」が廃止されても、6割は自社の採用に影響なし
経団連の「指針」が廃止となった場合、自社の採用活動への影響はどうかを聞いたところ、いずれの企業規模においても6割以上の企業が「あまり変わらない」と回答している。中でも大企業では68%と最も高くなっている。「現在よりも大変になる」と回答した企業は、33%の中堅企業が最も多く、中小企業で29%、大手企業で25%となった。ここでも中堅企業における危機感が最も強く出る形となっている。

[図表10]「指針」の廃止の自社の採用活動への影響

【現在よりも楽になる】
・現在はあまりにも短期決戦のため、採用フローに余裕が持てそうだから(1001名以上、メーカー)
・以前はここまで苦戦していなかったので、やはり指針によるものが大きいと考える。学生が企業研究をしたり、内々定をもらってから決断するまでなど、すべての時間が短すぎる(300名以下、メーカー)
・本音と建前を使い分ける必要がなくなる(300名以下、情報・通信)

【現在よりも大変になる】
・まとまった時期での採用活動でできなくなる可能性が高くなり、採用部門の負担が増加すると考える(1001名以上、サービス)
・大手の最終のタイミングが分からないと日程の設定ができない(301〜1000名、商社・流通)
「指針」の存続を望む大企業
現在の採用スケジュールの是非はさておき、何らかの「指針」が必要かどうかを聞いたところ、いずれの企業規模でも「どちらとも言えない」とする企業が4割を超える結果となった。「必要」「必要なし」だけの比較でみると、中小企業では「必要」30%、「必要なし」30%と拮抗しているのに対して、「必要」とする企業は、中堅企業が31%、大企業では36%と企業規模が大きくなるほど、その割合は多くなっている。横並びを気にする大手企業の特性が垣間見える結果と言える。

[図表11]「指針」の必要性
調査概要
アンケート名称:インターンシップ採用に関する調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2017年1月25日〜2月1日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び未上場企業の人事担当者
有効回答:202社