HR総研で行った「人事系システム」についてのアンケート調査のうち、今回は「eラーニングシステムと研修管理システム」についての調査結果をレポートする。

eラーニングシステムは、今回の調査によると25%の企業で導入されている。研修管理(学習管理)システムはそれより少ない17%だ。どちらも人事系システムである人事管理や給与管理、勤怠管理システムに比べて導入は進んでいない。

eラーニングシステムで実施されている教育は「労務系」「行動基準系」「ビジネススキル系」がトップ3である。またeラーニング導入のメリットは「場所と時間に縛られない」と「繰り返し受講ができる」ことがあげられた。しかし一方で、「内容の陳腐化を避けるために、プログラムを入れ替えが必要」とする声もある。

研修管理システムは大規模企業(1001名以上)では34%が導入しているが、1000名以下の規模では1割前後であり、ほとんど導入されていないと言える。

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eラーニングのメリットは「場所と時間に縛られない」「繰り返し受講」

eラーニングシステムを導入している企業は、今回の調査では25%。規模別に見ると、1001名以上の大規模では41%、301~1000名の中堅では21%、300名以下の中小では16%となっており、規模が大きい企業ほど導入率が高い。

eラーニングのメリットは何かを尋ねたところ、「利用場所や時間に縛られずに受講できる」が87%で第1位、第2位は「繰り返し受講できる」(60%)、第3位は「公平な学習機会の提供」(42%)となった。企業での人材育成は集合研修がポピュラーであるが、これらの3点はいずれも集合研修で行おうとすると困難なものである。つまり集合研修の補完という面で、eラーニングのメリットが感じられているということだろう。

そのほか、「学習進捗の可視化」(36%)もあげられた。管理機能が搭載されているeラーニングシステムを利用すれば、人事・人材育成担当者が学習者の進捗を管理できる。全社員が必ず受講しなければならないコースなどに関しては、こうした機能が便利である。

「コスト削減」に関しては、もっとポイントが高くなるかと想定していたが、メリットであると回答したのは20%に過ぎなかった。それまで集合研修で行っていた教育をeラーニングで代替えできればコスト削減になるだろうが、新規プログラムをeラーニングによって実施するのであれば、投資は増加する。一概に「コスト削減」とは言い切れないということなのだろう。

〔図表1〕eラーニングのメリット

HR総研:人事系システムに関する調査【4】eラーニング・研修管理システム

eラーニングで実施しているジャンルは「労務系」「行動基準系」「ビジネススキル系」

eラーニングで実施しているコンテンツのジャンルを聞いた。「労務系(ハラスメント、メンタルヘルスなど)」が64%で最多だ。次が「行動基準系(個人情報保護、CSR、コンプライアンスなど)」で62%である。これらのジャンルについて毎年の受講が必須となっている企業では、eラーニングで実施するのは効率的な方法だ。

ビジネススキル系(ビジネスマナー、ビジネス文書など)は、eラーニングであれば個人が必要に応じて学習し、わからないところは繰り返し受講できるので大変便利である。これらのコンテンツは、社員全体のビジネススキルの底上げに役立ち、業務効率の向上に直結する。効果的にeラーニングを活用していきたい分野だ。

また、マネジメント系スキルも53%と半数以上の企業がeラーニングで実施している。これらは、従来は集合研修で実施することが一般的であったが、近年ではeラーニングでの予習・復習と集合研修を組み合わせてコースとする「ブレンデッド研修」が広まりつつある。知識のインプットと、研修後のアウトプットをeラーニングで実施し、その間に集合研修をはさんでワークやロールプレイングなどを行い、集合研修の時間効率化を図るものだ。eラーニングシステムの普及によって、今後はこのような形式での研修が主流になってくるだろう。

業務スキル系(操作マニュアル、商品・サービス知識など)(28%)、PCユーザースキル系(office、eメールなど)(26%)は、まだまだeラーニングの利用が少ない。これらのスキルはビジネスの現場で必須であるが、スキル習得に関しては個人任せ、現場任せになっている企業が多いのではないだろうか。まずは身近なスキルから社員全員が数%でも向上すれば、よく言われる日本企業のホワイトカラーの生産性についても向上できるにちがいない。人事の皆さまにはぜひ一考していただきたい点だ。

〔図表2〕eラーニングで行っているコンテンツのジャンル

HR総研:人事系システムに関する調査【4】eラーニング・研修管理システム

eラーニングシステムを利用していない理由は「システムが無くてもできる」と「予算」

eラーニングシステムを利用していない企業にその理由を聞いたところ、「システムが無くても教育・管理ができる」が最多で35%、「予算」が31%だった。先に見たように、導入企業は大規模ほど多く、中小企業では少ないので、従業員規模が小さい企業ではeラーニングシステムを使わずに運用しているということだろう。また導入するにしても予算が許さない、ということも実態だ。

「適切なコンテンツ(学習内容)が見つからない」という理由も16%ある。また「自社に適したシステムがわかならい」も12%である。コンテンツやシステムは数多く提供されているが、自社のニーズに適合するものを導入しなければ、導入後の活用につながらない。HRプロに掲載されている様々なサービスを吟味・検討して、ぜひとも積極的に活用できるコンテンツやシステムを選択してほしい。

〔図表3〕eラーニングシステムを導入・検討していない理由

HR総研:人事系システムに関する調査【4】eラーニング・研修管理システム

研修管理システムの導入率は大規模で34%、1000名以下では1割前後

研修管理システムについては、導入している企業は全体では17%であり、他の人事系システムに比べて導入率は低い。しかし企業規模別にみると、1001名以上の大規模企業では34%が導入している。301~1000名では13%、300名以下ではわずか8%であり、1000名以下の企業ではシステム化されていない企業がほとんどといえる。

研修管理システムは、研修の受講者の抽出、研修案内の配信、テストやアンケート機能、研修受講履歴などが管理できるシステムである。人事部門が階層別研修や選抜型研修などの責務を持っている企業では、人事・教育担当者にとっては大変役立つシステムだ。しかし現状では、受講者をエクセル表で管理している企業が大半だということになる。

大規模企業では、社内教育体制に準じて研修を実施するためには、中途入社や転籍などが増加しているなか、受講対象者を抽出するだけでも一苦労である。過去の受講者を除外したり、過去に受講したが成績が悪かった人を再受講させるなど、実態に即して研修を実施していくのは並大抵ではない。人事の業務効率化と、社員のキャリアやスキルアップのためには、自社に最適な研修管理システムの導入をぜひとも検討してもらいたいものだ。

〔図表4〕研修管理システムの導入比率

HR総研:人事系システムに関する調査【4】eラーニング・研修管理システム

多岐にわたるeラーニングシステム、研修管理システムの課題

自由記述にてeラーニングシステム、研修管理システムの課題を聞いた。
まずeラーニングシステムでは、「動画対応できていない。パワーポイントによるスライドのみ」(1001名以上、メーカー)といった機能の不足や、「導入したが、あまり活用されていない」(1001名以上、メーカー)という運用の課題が挙げられた。コンテンツについては、「市販のもので欲しいテーマが見当たらない」(301~1000名、メーカー)、「内容の陳腐化を避けるため、今後も数年毎にプログラムを入れ替える必要があること」(300名以下、メーカー)という声が上がった。eラーニングは仕組みを作ってしまえば繰り返し利用できることがメリットだが、コンテンツに関しては適切なものを探したり、入れ替えたりという必要があるようだ。

研修管理システムでは、「研修募集管理のみで、トータルな管理ができていない」(メーカー、1001名以上)という機能面の不足、「研修での成果物等が紙での管理となっており、分析が困難」(1001名以上、情報・通信)という運用面での課題があがった。さらに「必要な能力を向上させるための研修カリキュラムの提示」(1001名以上、情報・通信)といった、個人ごとの推奨研修をシステムで提示するという進んだ使い方を要望する声も上がった。
一方で、「必要性を感じていない」(301~1000名、メーカー)や「少人数のため、利用を検討していない」(300名以下、サービス)など研修管理システムは必要としていないという声もある。

eラーニングや研修管理のシステムは、システムだけの問題ではなく、人材育成全体の課題のなかで考えられるべきものである。育成の課題でも上がったが、システムに関しても同様に上がった声を最後にご紹介しよう。
「過去履歴も含め管理できる体制づくり」(1001名以上、サービス)
「研修の成果を図るようなものがないか」(1001名以上、サービス)

人事・育成担当者は、研修を企画・実施することに忙殺される。しかし本当に実現したいことは、社員一人一人の成長を図る仕組みづくりと、一つ一つの研修が成果に結びついたかどうかを図る仕組みづくりなのである。こうしたことが効率的に、リーズナブルに実現できるシステムの提供を、サービス提供会社に望みたい。

【調査概要】
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および非上場企業の人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2016年5月25日~6月2日
有効回答:106件 (1001名以上:32件、301~1000名:24件、300名以下:50件)

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