HR総研では「人事系システム」についてアンケート調査を行った。今回はそのうち、「勤怠管理システム」についての調査結果をレポートする。

勤怠管理システムの選定基準は「使いやすさ」が70%でトップ。続いて、「初期費用」、「保守費用/利用料」が6割以上となった。この3点については、給与管理システムと同様にトップ3となっている。また全体的にはまだ少数であるが、「モバイル対応」に関しては10%の回答者が選定基準として選択した。クラウド型は中小企業を中心に導入が進み、300名以下規模では約3割、全体でも2割が導入済みであることが判明した。
現状での課題としては、「多様な勤務体系への対応」と「給与システムとの一体化」が挙げられた。

※企業規模別の数値、自由記述による課題提示等の詳細は、ログインの上、ぜひご確認ください※

勤怠管理システムの選定基準のトップは「使いやすさ」

勤怠管理システムは、人事系システムのなかでは給与管理システムに次いで多くの企業で導入されており、今回のアンケート調査では約7割の企業が導入していると回答した。

では勤怠管理システムの導入にあたって、人事はどのような点を選定の基準としているのだろうか。18項目を挙げて複数可で選択してもらったところ、「使いやすさ」が70%でトップ、「初期費用」が68%で第2位、「保守費用/利用料」が64%で第3位となった。第2、第3位はともにコストが選択基準ということだが、それにも増して多くの人事が「使いやすさ」を重要であると考えているという結果となった。次いで半数前後のポイントを得ているのが「設定の柔軟性」53%、「機能の充足度」47%、「導入容易性」44%である。

給与管理ではわずか3%だった「モバイル対応」は、勤怠管理では10%の企業が選定基準として挙げている。昨今の多様な働き方には、モバイルでの勤怠管理も欠かせないため、今後は必要性を増してくるだろう。

勤怠管理は、給与管理とならんで人事にとっては欠かせない業務である。昭和時代は、工場や小売り・サービスの現場では紙のタイムカード打刻が行われていた。人事は紙のカードを回収して集計していたのである。2000年以降はタイムカードやICカードに変遷し、コンピュータシステムと連動して、集計や残業時間の計算は自動で行われるようになった。最近では、PCで業務を行う企業では、PC画面での打刻やPCの電源と連動したシステムなども利用されている。最新式はPCなどのカメラ機能で顔認証により出退勤の管理や時間管理を行うものが出てきている。
こうして機能が充実したり、新しい方式がでてくるようになってシステムの選択肢は増えているが、経営から常にコスト削減を求められている人事にとっては、効率をあげながらどのようにコストを低減させるか、悩みは尽きないようだ。

〔図表1〕「勤怠管理システム」を選定する際の基準

HR総研:人事系システムに関する調査【3】勤怠管理システム

課題は「多様な勤務体系への対応」と「給与システムとの一体化」

自由記述で課題を聞いたところ「多様な勤務体系の管理」(1001名以上、メーカー)困難であるという声が上がった。業務にあわせてシフトがあったり、事業所ごとに勤務体系が異なっている企業では、勤務実態にあわせた管理がシステムでできないという悩みを抱えている。

パッケージ利用で自社用にカスタマイズしている場合、「就業規則・細則変更時の影響が大きい」(1001名以上、情報通信)といった点が課題だ。「設定に柔軟さがない」(300名以下、サービス)、「法改正への対応」(300名以下、メーカー)といった不満の声もあがった。そもそも「自社の規則に合わせたカスタマイズができない」(300名以下、情報・通信)ということで利用に不便をきたしていることもあるようだ。

勤怠管理システムで集計された残業時間は、給与に反映される。勤怠管理システムと給与管理システムを別々に運用している場合は、勤怠管理システムからデータを取り出して、給与管理システムにインプットするなど、手作業が発生してしまう。そのため「給与システムと一体型」(1001名以上、サービス)の必要性があったり、現状では「複雑な給与体系のため、管理が難しい」(301~1000名、サービス)といった声があった。

一方、勤怠管理システムを最近刷新、更新した企業からは、課題は「なし(リプレース直後)」(1001名以上、サービス)や、「昨年ようやく刷新して順調に進んでいる」(300名以下、メーカー)といった満足の声もあった。やはり新しいシステムは様々な点で改良されているからなのだろう。

昨今のトレンドとして多様な働き方を支援していこうとする動きがあるが、制度にあわせてシステムも対応させていかなければ実現は不可能だ。そのたびに対応のための労力とシステム改修費用がかかるのでは、なかなか思い切った施策も打てない。勤怠システムには、コスト負担を最小限に抑え、さまざまな変化に対応していけるシステムが望まれていると言えるだろう

HR総研:人事系システムに関する調査【3】勤怠管理システム

勤怠管理システムでサービス型(SaaS、クラウド)が2割に

勤怠管理システムにおけるシステム化の手段を聞いたところ、最多は「パッケージ」システムで、54%が利用している。次いで多いのは「サービス型(SaaS、クラウド等)」で20%である。「オリジナル開発」は19%だった。規模別にみると300名以下の中小規模の企業では、29%がクラウド等のサービス型であり、301~1000名の中堅規模でも16%が利用している。

以前は人事系システムではクラウド型を利用することへの抵抗が強かったが、最近ではクラウド型の初期投資コストが安価である点などが評価されてきている。また勤怠管理システムは人事管理システムや給与管理システムと違って、人事だけではなく社員が利用するものなので、導入が簡易なクラウド型などがより活用されているということである。

またクラウド型のシステムは、業務パッケージシステムを担ってきた大手ベンダーだけでなく、人事サービスを手掛けてきた企業や、新進のスタートアップ企業からも新製品が続々と発売されている。現状のシステムが「余分な機能が多く、実際に使う人間の立場で考えられていない」(1001名以上、メーカー)ようであれば、これらの新しいシステムを検討してみるのも一考だろう。

〔図表2〕勤怠管理システムのシステム化の手段

HR総研:人事系システムに関する調査【3】勤怠管理システム

導入を主導するのは「人事部門」が2年前9割から7割以下へ低下

勤怠管理システムの導入にあたって主導する部門を聞いた。全体では66%が「人事部門」と回答し、「情報システム部門」が次いで15%だった。1001名以上の大手で比較すると、2年前の調査では90%が「人事部門」主導だったのが、今回の調査では64%まで減少しており、その分「情報システム部門」が増加して27%となった。最近の傾向として組織形態や働き方が多様化しているため、人事部門は要件定義のみを行い、その要件をかなえるシステムをどのように導入するかについては情報システム部門の専門性がより必要になってきたのかもしれない。

〔図表3〕勤怠管理システムの導入を主導する部門

HR総研:人事系システムに関する調査【3】勤怠管理システム

現状のシステムでの明確な不満は1割以下

「現在のシステム、およびサービス支援会社について満足していますか」という質問に対しては、9%が「非常に満足」、54%が「まあまあ満足」であり、全体としては6割以上が満足な状態である。一方、9%が「少し不満」「不満」である。

満足な理由としては、「現時点では問題・課題がない」(301~1000名、情報・通信)という声が大半だ。反対に不満の声は、「カスタマイズ対応が遅くて高額。対応できないことが多すぎる」(1001名以上、メーカー)という強い不満や、「サポートセンター担当者の知識面」(51名~100名、メーカー)に頼りなさを感じているなどが上がった。

〔図表4〕現在のシステム、及びサービス支援会社についての満足

HR総研:人事系システムに関する調査【3】勤怠管理システム

勤怠管理システムを導入・検討していない理由は「予算」「システムなしで管理可能」

勤怠管理システムを導入してない、または検討していない理由を聞いたところ、回答の最多は「予算」で43%だった。第2位は、「システムがなくても管理できる」で27%である。紙の出勤簿や、エクセルなどで自己管理・上司が管理などといった方法がとられているのであろう。続いて「経営の理解不足」18%、「人事のマンパワー不足」14%、「自社に適したシステムがわからない」12%という結果になった。

〔図表5〕勤怠管理システムを導入・検討していない理由

HR総研:人事系システムに関する調査【3】勤怠管理システム

【調査概要】
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および非上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2016/5/25~2016/6/2
有効回答:106件 (1001名以上:32件、301~1000名:24件、300名以下:50件)

この先は、会員の方だけがご覧いただけます。会員の方はログインを、会員でない方は無料会員登録をお願いします。

HRプロ会員の方はこちらから

まだ会員でない方はこちらから

登録無料!会員登録された方全員に、特典資料をプレゼント!

HRプロとは

  • 1