Vol.03

NEXT HR キーパーソン特別インタビュー

人事部門こそが第4次産業革命の成功の鍵を握る(後編)

経済産業省 産業人材政策室長 伊藤 禎則 参事官
インタビューアー:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介

人事・働き方を戦略的に考える人事部門こそが経営にもっとも近い存在になる

寺澤経営と働く人をつなげることはまさしく人事部門の役割です。国として人事部門に期待することはなんでしょうか?

伊藤経産省では、「経営」と「人事」は益々融合していくとみています。第4次産業革命の根幹は「データ」だと冒頭でお伝えしました。企業は眠っている資産をリアクティベートすることが求められます。最大の眠っている資産は、「人材」です。旧来の日本型雇用慣行の働き方をしている限りエンゲージメントは低く、生産性も低いことが多くの国際的な統計によって立証されています。したがって、人材のいい意味での稼働を上げていく、そしてエンゲージメントを高めていくことにつなげていくことが、人事に求められています。

また、そのためにデータやAIを使わない理由はないはずです。人事がどの課題を解決するためにどのデータを使うのは、企業事情によって異なりますが、実は「大量の情報を効率的に処理し、リアルタイムにアウトプットする」というAIやビッグデータの得意領域と人事の業務は親和性が高い。このような背景のなかで、経済産業省として、「HR-Solution Contest」と「IoT Lab Connection(ビジネスマッチング)」という2つのイベントを企画しました。

「HR-Solution Contest」では、大小様々なHRテクノロジーベンダーから、働き方改革や人事上の課題に対する「ソリューション」のアイディアを提示していただきます。「労働時間」や「生産性」、「人材育成」、「エンゲージメント」などの側面から、人材という競争力の源泉をどう考えるか、どんなプロダクトが有効かを提案していただきたいです。コンテストに応募されるサービスやプロダクトは、既存のものでも結構ですが、まだ市場にリリースを迎えていないようなアイディア段階のものも含め、画期的なソリューションを期待しています。

「IoT Lab Connection」は文字通り「ビジネスマッチング」です。すでに市場にリリースしているプロダクト、サービスを企業単位で持ち寄っていただき、企業の種類や規模に関わらず、ベンダーと利用企業の間で、また、ベンダー同士で、マッチングする機会になればと思います。

我が国において、今までの希少財は「資本(資金)」で、企業・国にとっての最大の課題は、いかに資金を効率配分していくかでした。しかし、金余りの日本において、今や、最大の希少財は「人材」です。また、競争力の源泉も「人材」です。プロジェクト型で仕事を行うようになってきており、そのプロジェクトを成功させ、成果を挙げていくのは人材の組み合わせ以外のなにものでもありません。そうなると、人材をどう集めてきて、リテンションさせて成果につなげていけるかです。それこそが、経営の全てと言っても過言ではない時代になりました。いままで世界的にCFO(最高財務責任者)が会社の経営力を左右する存在であり、CEOに次いで最もステイタスが高い時代が長く続きました。これからは間違いなく時代に即した、今までの延長線上にない人事・働き方を戦略的に考え、司るCHRO(最高人事責任者)が会社の経営力を担い、経営に最も近い機能として人事が注目されることでしょう。

経済産業省 産業人材政策室長 参事官
伊藤 禎則 氏

1994年東京大学法学部卒、通産省入省。コロンビア大学ロースクール修士、米国NY州弁護士登録。日米通商摩擦交渉、エネルギー政策、筑波大学客員教授、大臣秘書官等を経て、2015年より現職。経産省の人材政策の責任者。政府「働き方改革実行計画」の策定に関わる。経営リーダー人材育成指針、ITスキル認定制度の創設等も手がける。