平成29年5月以降、厚生労働省WEBサイトで毎月更新されている「労働基準関係法令違反に係る公表事案」は、コンプライアンスの観点でのいわゆる“ブラック企業”リストと呼べるだろう。
いっぽうそれとは対照的に、労働安全衛生や両立支援、女性活躍、若者雇用等に優れた事業者を省庁レベルで認定・公表する制度もまた、存在している。
全4回にわたる連載の中で、これらの認定を示すマークをご紹介し、人材確保へ向けた課題解決の糸口をお示ししたい。
ご存知ですか?このマーク~人材確保への“遠くて近い”道のり(1)~

安全衛生優良企業公表制度(マーク名称:Wマーク)とは

特に新規学卒の採用市場において、いわゆる“ブラックorホワイト”という選社軸は、その定義があいまいなまま、もはや求人側も求職側も無視できないほどに意識されつつあるのが実情ではないだろうか。
何をもって「ホワイトである=ブラックでない」とするのか、その基準として明確に示されたわけではないが(未だ社会通念が形成されたとは言い難い。そもそも定義自体相当の議論を要する概念である)、平成27年度より厚生労働省労働基準局の所管として、安全衛生優良企業公表制度が創設された(同時に認定を示すマークも公開され、通称Wマークと呼ばれている)。

この制度は文字通り、労働安全衛生に優れた企業を一定の基準(取組だけでなくその成果まで評価)に従って認定し、同省WEBサイト上で公表するという仕組みだ。ちなみに、認定されると所管の都道府県労働局で認定証授与式が催され、同局のプレスリリースで広報されるケースもある。
まずは、その認定基準の一部を抜粋した次の表をご覧いただきたい。
ご存知ですか?このマーク~人材確保への“遠くて近い”道のり(1)~
中項目で14の基準があり、例示した小項目まで含めると実に最大69(製造業の場合。非製造業は表中(13)および(14)は対象外につき54)もの基準をクリアしなければならず、その審査にあたっては細かく挙証資料の添付を要する。
特に表中(6)から(14)までの基準は点数評価され、各項目に対し満点の6割以上かつ総点に対し満点の8割以上の水準が求められる(これら資料添付と点数評価については、次回以降ご紹介する他の認定マークにはない独自の要素である)。
これだけでは単に認定取得のハードルの高さだけが印象に残ってしまいがちだが、裏を返せばきわめて高度な労働安全衛生の水準(現状各種認定マークの中でも最高水準)がオーソライズされることとなる。

全国の33認定企業(平成29年8月15日時点)の内訳をみてみると、製造業12件+建設業9件=21件で半数以上を占めている。労働安全衛生マネジメントシステムの規格適合認定を受けていると一部基準がクリアされたものとみなされるため、業種柄このような結果になっているものと思われる。トヨタ自動車のような日本を代表する大企業から地方の中堅企業まで、認定の裾野は年々拡大しつつあるようだ。

認定は日本国内の法人を単位として、各都道府県労働局により向こう3年間に限り行われる。したがって、認定期間中に基準を満たさなくなった場合には認定返上を要するし、認定を継続する場合には期間終了までに再度更新申請を要する。

Wマーク取得に効果的な助成金と取得のインセンティブ

  • 1
  • 2

この記事にリアクションをお願いします!