職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、 業務上の適正な範囲を超えて、 精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為である。
コミュニュケーションで職場のパワーハラスメントは半分になる

 「優位性」は上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。

 2012年12月に、厚生労働省の「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の調査報告が発表されている。概要は以下の通りである。

(1)パワハラの相談状況
従業員1,000人以上の企業では96.6%とほとんどの企業で相談窓口を設置しているのに対して、従業員99人以下の企業では37.1%と低い水準にとどまっている。
社内に設置した相談窓口で相談の多いテーマとして、パワハラはメンタルヘルスの不調に次いで多くなっている。
企業に寄せられるパワハラに関する相談について、当事者の関係をみると「上司から部下へ」「先輩から後輩へ」「正社員から正社員以外へ」といった立場が上の者から下の者への行為が大半を占めている。

(2)パワハラが発生している職場とは
「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」51.1%
「正社員や正社員以外など様々な立場の従業員が一緒に働いている職場」21.9%
「残業が多い/休みが取り難い」19.9%
「失敗が許されない」19.8%

(3)パワハラの取組を進めることで懸念される問題
「権利ばかり主張する者が増える」64.5%
「パワハラに該当すると思えないような訴え・相談が増える」56.5%
「パワハラかどうかの判断が難しい」72.7%
「発生状況を把握することが困難」38.0%

(4)パワハラの予防・解決に向けた取り組み
回答企業全体の80.8%が「パワハラの予防・解決を経営上の課題として重要」だと感じている一方で、予防・解決に向けた取り組みをしている企業は45.4%にとどまり、特に従業員99人以下の企業においては18.2%と2割を下回っている。

 実施率が高いのは、
「管理職向けの講演や研修」64.0%、
「就業規則などの社内規定に盛り込む」57.1%
などである。

 ネットを筆頭に、被害者意識をあおる教育が先行しており、「訴えなきゃ損」という風潮や、自分の嫌なことは「ハラスメント」という認識が高まっている。同じ行為を受けても、相手の感情によってハラスメントと捉えるかどうか異なることが、ハラスメントに対する取り組みで一番難しい点である。
 現場がパワハラかどうか判断できず困っているグレーゾーンが何倍にも増加しているのが現状である。実際は、パワハラ相談のなかでも、ただのコミュニュケーショントラブルが5割を占めている。これは会話力で解決できる問題なのである。

 ハラスメントが原因により、うつ病などの精神障害を発症し、労働災害の申請が増えている。職場のパワハラを放置すると、不法行為責任や安全配慮義務違反など、裁判で事業主責任を問われることもある。
 そのため企業にとって、早期の対策や予防が必要になってくる。定期的な研修等を実施し、日頃からハラスメントに対する意識付けを行いながら、就業規則等で会社のルールを公平に徹底していく、という両方の対策を進めていくべきである。

 職場でのパワーハラスメント対策として、厚生労働省はハンドブックを公表している。なぜハラスメントが起きるのか、起きたことの影響や対応など、また他社での対策事例や規程サンプルなどを掲載しているのでぜひ参考にしてほしい。

後藤労務管理事務所 後藤 昌雄

この記事にリアクションをお願いします!