新入社員が入社して、約2ヵ月が経過した。研修を終え、配属部署にてそれぞれの仕事に取り組み始めているころであろう。本格的に業務に係るようになり、「この子はうまく対応できそうだな」、「この子は少し物足りないな」など能力的な評価が出始めてきているかもしれない。
そんな時期だからではないだろうが、新入社員はもとより、解雇に関してご相談いただくことが多い。
では、企業の業績不振による整理解雇等ではなく、能力不足・成績不良による解雇はどのような場合に可能なのだろうか。
「解雇」~能力不足の場合~

企業に求められる取り組み・努力

『「試用期間」~その意味と注意点について~』でも述べたが、解雇を有効に行う為には、「客観的合理的性」と「社会的相当性」が必要となる。
能力不足を理由に解雇する場合には特にこの「客観的合理的性」と「社会的相当性」が認められるのかという問題が発生することになる。
判例を見ていくと、単に従業員の人事考課が全従業員の中で相対的に低いということのみでは解雇権の濫用にあたるとされ、解雇が無効とされるケースが多い。つまり、企業が行う人事考課等に問題がなかったとしても、その結果のみをもって解雇を行っても正当性が認められる可能性は低い。
企業には、当該従業員の能力向上のために教育訓練・配置転換等の解雇回避に向けた取り組み・努力が求められることになる。

中途採用の場合

では、営業専門職、又は専門知識など高度な能力を有するとして中途採用された従業員が、期待された能力を発揮できなかった場合はどうであろうか。このケースでは、企業側に求められる教育訓練・配置転換等の解雇回避の努力は新入社員や一般の従業員と比べ低く、能力不足・成績不良を理由とする解雇は認められやすい傾向がある。

おわりに

就業規則の解雇事由に「業務能力が劣り、又は勤務成績が著しく不良の場合」といった条項を入れている企業は多いことだろう。
ただ、この条項のみを以って解雇は難しい。能力不足・成績不良を理由に解雇を検討する場合には、長期的視点に立って行う必要がある。能力不足を感じ、その翌日に解雇するということは現実的には不可能である。原則として、不足している能力がどの部分であり、どのような水準にまで到達すればよいのかを目に見える形で当該従業員に伝え、改善する機会を与えることが必要となる。可能であれば他部署への配置転換も検討する必要がある。これらの取組を行ったうえで、初めて能力不足・成績不良を理由とする解雇が可能となる。
裏を返せば、これらの取組をきちんと行えば、能力不足による解雇も可能ということだ(解雇の正当性が認められるには、すべてケースバイケースであり、正解は無い)。
一概に、解雇は悪だとは全く思わないが、解雇は従業員にとって死刑宣告に等しい。企業には、解雇を回避するための取組を求められていることを忘れてはならない。


社会保険労務士たきもと事務所
代表 瀧本 旭

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