新入社員に『お客様意識』の必要性を指導する企業は多い。しかしながら「意識を持ちなさい」と言われただけで身につくことはない。それでは、どうすれば『お客様意識』は身につくのだろうか。
新入社員の『お客様意識』の育て方

周囲の出来事に“関心”を寄せる

「どうすればお客様により満足していただけるか」「どうしたらもっとお客様のお役に立つことができるか」という考え方を『お客様意識』『サービスマインド』などという。これは相手に対する“心遣い”や“気配り”の表れであり、職業人にはお客様の立場・視点に立って物事を考えるこの意識が常に求められるものである。

そのため、新入社員に対する教育研修では、『お客様意識』を持つべきだと指導することが多い。しかしながら、「どうすれば意識を身につけられるか」「どうすれば意識を高められるか」にまで踏み込んで指導できている企業は、必ずしも多くはないようである。

『お客様意識』を身につけるための方法はさまざまだが、まず新入社員に取り組ませたいのは、相手への“心遣い”や“気配り”が表れている行動や発言に「“関心”を持つ」ということである。日常生活の中に数多く存在するそうした言動に注意を注ぐ“習慣”を身につけさせることが、『お客様意識』を身につけるための最初のポイントになる。

具体的には、生活のさまざまな場面で「他の人がどのような行動を取ったか、どのような発言をしたか」を注意深く観察し、相手への“心遣い”や“気配り”という視点で考えたときに、「この行動、発言は良い」「この行動、発言は良くない」と考えることを“習慣”にさせることである。

たとえば、買い物に行ったときなどは、店員がどのように「いらっしゃいませ」と声を発しているかを、相手への“心遣い”や“気配り”という視点で注意深く観察してみる。すると、お客様に自分の体を正対させ、笑顔で「いらっしゃいませ」と声を発している店員もいれば、お客様には目もくれず、単に「いらっしゃいませ」と大声を張り上げているだけの店員がいることにも気付くものである。このとき、お客様に正対して笑顔で声を発している店員を見て「この行動は良い」と考えたり、お客様には目もくれず、単に大声を張り上げているだけの店員を見て「この行動は良くない」と考えたりすることを“習慣”にするのである。

『お客様意識』に対する健全な“問題意識”の醸成を

次に、良いと思った行動は「自分の仕事に活かせないか」と考え、良くないと思った行動は「自分も仕事で同じようなことをしていないか」と反面教師にしてみる。さらに、「良いと思った行動」「良くないと思った行動」「自分の行動への反映、振り返り」について、研修カリキュラムの中で他の研修メンバーの前で発表をするなどして、皆の経験を共有するのである。

このような取り組みを継続的に行うと、次第に『お客様意識』に対する“アンテナ”が発達し、“感度”が磨かれてくる。“感度”が磨かれれば磨かれるほど、新入社員自身が「やるべきこと」「やるべきではないこと」に対する感覚が鋭くなり、意識の向上に役立つものである。

前述した店員の挨拶のような事例は、日常生活の中に思いの外、多数存在する。しかしながら、相手への“心遣い”“気配り”が表れた言動に常に関心を持って生活していなければ、全く気付かずに見過ごしてしまうような出来事でもある。人間には「“関心”を持っていないことは、全く目に入らない」という特徴があるためである。

「“関心”を持つ」とは換言すれば「“問題意識”を持つ」ということである。新入社員に『お客様意識』を身につけさせたいのであれば、それに対する健全な“問題意識”を醸成することが必要になる。そのためには、まずは自身の周りの出来事を見落とすことがないよう、「“関心”を持つこと」から始めさせたいものである。


コンサルティングハウス プライオ
代表 大須賀信敬
(中小企業診断士・特定社会保険労務士)

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