少子高齢化を受け、日本の労働力は先細りしていくことが予想されている。不足する労働力確保のため、シニア世代や外国人などに加え、出産・育児などを機に会社を退職した女性にも大きな期待が寄せられている。そうしたワーキングマザーの再就職・復職の支援の一環として、企業の取り組みや学び直しの機会が得られる「リカレント教育」に注目が集まっている。
女性の再就職・復職を後押し ―― 学び直しの支援策「リカレント教育」、企業の採用施策とは

再就職・復職に女性が抱える不安とは

総合人事・人材サービスを展開するアデコ株式会社により、働く女性4,350名を対象に実施された「女性の再就職・復職に関する意識調査」では、再就職・復職を不安に思う理由の上位に「職場の人間関係」「仕事をこなせるか」「職場になじめるか」「ブランクが影響しないか」といった回答が寄せられていた。
また、休職中にスキルアップのための行動をしていたのは全体の33.9%であったが、実に半数以上の54.2%の女性が「しておいた方がよかった」と感じていることがわかった。スキルアップするための内容としては、上位から「セミナー・学校へ通って資格取得」「通信教育で資格取得」「スキルアップ、仕事に関する書籍を読む」となっている。



このスキルアップと仕事の満足度の関係をみると、スキルアップのために行動をした女性の満足度(79.8%)の方が、しなかった女性の満足度(73.1%)より6.7ポイント高いという結果となっている。
こうしたことから、女性の再就職・復職を後押しするためには、休職中のスキルアップと、職場での復帰支援があげられる。

「働きたい女性」へ……復職を支援する企業の取り組みとは

内閣府男女共同参画局が行った「平成28年度男女共同参画白書」を見ると、2015年に就職を希望していた女性301万人のうち、求職活動をしていない理由として最も多かったのが「出産・育児のため」で32.9%となっていた。また、先の調査では、ワーキングマザーが再就職の際に困ったこととして「希望する時間帯や日数で働ける職場探し」が多く挙がった。これらのことから、働きたいという気持ちがありながら、出産・育児で再就職や復職を断念している女性が少なくないのではないか、と推測できる。
では、こうした女性をどのように就業に結び付ければよいのだろうか。
出産・育児で無業だった女性の再就職、復職支援を行っている企業の取り組み例を紹介する。


日本ロレアル株式会社
多様性を重視した中途採用を実施しており、年齢、性別や子どもの有無に関係なく、適性のある人材を積極採用している。過去には配偶者の転勤で退職した社員が復職を希望し、中途採用で受け入れたケースもあったという。育休後の社員には、短時間勤務制度の代わりとして、在宅勤務制度を採用することで、他の社員と同じ勤務時間を確保して経験を蓄積できるようにしている。
中途採用は空いたポストを埋めるというだけに留まらず、将来、より広いキャリアの構築を目指せるポテンシャルがあるかも判断し採用している。

大同生命保険株式会社
勤続3年以上で、結婚や出産、配偶者の転勤や介護などの理由で退職した元社員の復職支援に、再雇用制度「ジョブリターン制度」を導入。ジョブリターン制度登録者に対しては、定期的な情報発信を行い、年2回のアンケートで現在の状況を確認するなどして、復職に向けた心の準備を促すようにしている。復職後は法定を上回る両立支援策を用意しており、復職者の7〜8割が短時間勤務制度を利用しているほか、在宅勤務制度なども整備している。

株式会社日本レーザー
仕事と育児の両立を会社として支援する取り組みを進めている。育休時に仕事の引継ぎに困らないよう、複数の社員が同じ仕事を担当するダブルアサインメントを採用。また、仕事と育児の両立がしやすいよう、契約社員を中心に勤務時間を自由に設定できる制度を採用している。中途採用の社員にも、新卒社員と同様の研修を受けられる機会を設けており、意欲があれば、子育てが一段落した時点でのパート社員から契約社員への転換も積極的に行っている。

女性の再就職を後押しする「リカレント教育」とは

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