評価の可視化が社員の辞めない組織を作る

2014/01/10

ブラック企業の対極としてホワイト企業と呼ばれる企業があるのはご存じだろうか。これは厚生労働省が「若者応援企業」宣言事業として一定の労務管理の体制が整備されており、若者(35歳未満)を採用・育成のためハローワークに求人を提出し、通常の求人情報よりも詳細な企業情報・採用情報を公表する中小・中堅企業を「若者応援企業」として、積極的にマッチングやPR等を行う事業(厚生労働省HPより)のこと。

 当然ながら宣言できる企業に求められる要件は厳しいのだが、若者応援企業に認定された企業は次のような就職関連情報を開示することを宣言し、事業所PRシートの中で開示している。

・社内教育、キャリアアップ制度等
・過去3年度分の新卒者の採用実績及び定着状況
・過去3年度分の新卒者以外の正規雇用労働者(35歳未満)の採用実績と定着状況
・前年度の有給休暇および育児休業の実績
・前年度の所定外労働時間(月平均)の実績 等

 就職活動している学生の立場に立てば、できれば誰も過酷な労働条件で働かせる企業には行きたくないと思うもの。ただし、時間外労働時間が多ければすべてブラック企業かというと、そう簡単に割り切れるものでもなく、ブラック企業の定義が曖昧な分、見極めは難しい。そこが就職先選びで学生を悩ませてもいる。そこで、ブラック企業の対極ともいうべき若者応援企業(いわゆるホワイト企業)を認定して差別化しようというもの。このように社内の環境を整えることは社員に安心を与えて、定着率を上げる大きな要因になる。

 これは勿論すばらしいことなのだが、それだけでは社員が辞めない組織、というには少し足りない。経営者と話をしているとよく出てくる言葉に社員に幸せになってもらいたいというのがある。経営者は気付いている。この幸せ、置き換えて言うなら満足を社員がどれほど感じられるかどうかが定着のポイントだということを。

 人は誰でも認められたいと思っている。給料に不満があると言って辞めて行く人の中には、給料が安すぎて生活できないという理由の人もいるだろうが、一方で、どうしてこの金額なのか納得いかないという不満で辞めていくことも多い。評価と金額の仕組みを事前に説明していないから、皆、その金額から自分の評価を勝手に判断して、納得がいかない、と言っているのである。自分がどう評価されているのかを知る手段は、振り込まれる金額のみなのである。ただし、その金額が高いか低いかを判断する基準は会社から知らされていないから誤解も多い。

 自分がどう評価されているのかわからないというこの不満を解消できれば、それは社員の満足につながるのではないだろうか。最初から辞めたいと思って入社する人はいない。この会社で成長したいし、有意義な仕事をして認められたいと思っている。では、なぜそう思って入社した人の3割近くもが会社を辞めていくのか。

・具体的な指導がない→何をすればいいのかわからない
・社内に目標がない→自分の将来の方向性がわからない
・評価がわからない→どうしてその処遇になるのかわからない
給与明細を見て勝手に判断しなくても、上記3つの「〜ない」が「ある」に変われば、社員は「わからない」が「わかる」ようになる。

 何がわかるようになるのか?それは、今の自分の成長度合いと今後成長するには、どうすればよいのかがわかるようになる。社員にこの会社で幸せになってもらいたい、と願うなら、会社はこの会社で成長したいと思う社員の成長を支援し続けなければならない。

 中小企業ではほぼ経営者が最終評価者だと思うが、どういう仕事の進め方、やり方を優れていると評価しているのか。経営者はこの点を可視化して、社員に伝えることが必要である。
 毎回の賞与、昇給決定において、真剣に取り組んでいると自負する経営者が、なぜ自身が何を優れたやり方だと思って評価しているのかを可視化できないのだろうか? 評価は専門家が作るものだから?
 自分は素人だからこのやり方でいいのかわからない、という声も聞く。何を優れていると決定するのかは、誰でもない経営者の価値観で決まる。これを可視化することを誰かに委ねることはできない。

 誰より社員の幸せを願う経営者が、継続して業績を上げることを本分とする経営者の価値観で決定している評価こそが正解である。社員それぞれの考える満足と経営者の考える満足は必ずしも一致するものではないだろう。評価も同じ。自己評価と上司評価が最初は違って当然。何が優れたやり方なのかを可視化して会社としての正解を社員と共有すればよい。

 社員は、どうしたら認められるのかと考えている。評価の可視化とは、成果を出すために「どのような業務(仕事)」を「どのようなやり方でやるのか」を示して共有することである。


鈴木社会保険労務士事務所  鈴木 早苗

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