「育児・介護休業法」及び「男女雇用機会均等法」が改正される。
今回の改正により、企業には上司や同僚からのマタハラ防止措置が義務付けられる。その内容について確認しておきたい。
育児・介護休業改正で制度を利用しない人も知っておくべきポイントは?

マタハラ・パワハラ防止措置の新設について

仕事と家庭が両立できる社会の実現を目指し雇用環境を整備するために、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下「育児・介護休業法」という。)及び「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「男女雇用機会均等法」という。)を改正する法律が平成29年1月1日から施行される。
現在、「育児・介護休業法」及び「男女雇用機会均等法」等により、事業主による妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする解雇その他不利益な取り扱いは禁止されている。
今回の改正により、上記に加え、上司・同僚からの妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする嫌がらせ等(いわゆるマタハラ・パワハラなど)を防止する措置を講じることが事業主に新たに義務づけられる。
この措置の具体例については、平成28年8月2日の指針にて公表されており、大きく以下の5つとなっている。
(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)職場におけるハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
(4)職場におけるハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
(5)その他
お気づきのように、セクハラ防止の措置と似たような内容となっている為、企業としては、併せて対応していくことになるだろう。具体的には就業規則等の見直し、ハラスメント防止研修等周知・啓発に取り組むことが必要だ。

それはマタハラか?

では、どういった事例がマタハラとなるのか。
マタハラについては、平成26年10月23日の広島中央保健生活協同組合事件の判決を受けて、平成27年1月23日に厚生労働省より通達が発出された。
妊娠・出産・育児休業等の事由を「契機として」不利益取扱いを行った場合には、原則として「理由として」いる(事由と不利益取扱いとの間に因果関係がある)と解され、法違反となる。
業績悪化や本人の能力不足等で退職をして頂かないといけないケースや、人事上の取り扱いについて本人にも同意を得たはずなのに、問題となるケースもあるかもしれない。
それについては、厚労省の「妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&A」において判断基準が記載されているので参考になるだろう。
しかし、妊娠・出産・育休等における環境については、各人各様であり、一律に対応することが難しいのでやっかいである。また、同じ人でも第一子、第二子での妊娠の状況が異なり、求める配慮が違ってくる場合もある。
法令に基づいた制度の知識と対応を正しく理解し、社内に周知徹底することもすることはもちろん大事であるが、マタハラ防止にはやはり日々のコミュニケーションが重要になってくるのだと思う。
日々のコミュニケーションの積み重ねがないと、妊娠した従業員に色々と配慮をしたつもりが、本人にとってはマタハラと感じることがあるからだ。セクハラ同様、本人がハラスメントと感じればハラスメントとなってしまう。
妊娠・出産・育休等における環境については、プライバシーに該当する情報であるので特に男性上司から女性部下に色々と確認することが難しいという声もある。しかし、妊娠前から体調等の気遣いができる関係性が築かれていれば、妊娠後に色々と配慮することを女性部下がハラスメントとはとらない可能性が高い。また、人事面談等で今後のキャリアビジョン等を随時確認しておくことも、妊娠・出産・育休等の際、役に立つので、今後は確認事項に入れてみることをご検討頂きたい。
仕事と家庭が両立しやすい職場づくりは、企業にとっても優秀な人材の確保・育成・定着につながるなどのメリットがある。
今回の改正の内容をご確認頂き、仕事と家庭が両立しやすい職場づくりを進めて頂ければと思う。

松田社労士事務所
特定社会保険労務士 松田 法子

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