従業員のメンタルヘルス対策の意識が高い会社でよくあるケースであるのが、会社の目標に休職者(あるいは不調者)ゼロ!を目標に掲げている会社である。

とても素晴らしいことなのだが、実はこの目標があべこべの結果を招いているケースもあるのだ。
不調者・休職者ゼロを唱えるリスクと休職者の心持とは

掲げた目標の結果、失敗する?

これはどういうことか?

会社がかなり強いメッセージで休職者ゼロを掲げていると、実際に仕事などで不調になりかけている人がなかなか言い出しづらいという場合もある。

その結果、体調が悪い中無理をして結果長期に休むことになってしまうのだ。このようなあべこべの結果を防ぐためにはどうしたらよいだろうか?2つの方法をご紹介したいと思う。

1.早期発見の仕組みを作ること

特に管理職を中心に、部下の体調管理をしっかりとすることが大切だ。一例として、毎週休み明けに遅刻や休暇をとる部下がいないか等、どのポイントをきちんと見分ければよいかを教育することがとても大切である。
また、旅行等以外の連続休暇の場合は、管理職がヒアリングして帳票を人事に提出するような仕組み作りも不調者の早期発見にはとても有効である。

2.目標自体を変更してしまうこと

休職者ゼロを目標にすること自体は素晴らしいのであるが、あまりにも現実的ではないような場合、例えば長期休職者ゼロ等と変えるというのもアリだと考えられる。これは会社ごとの実態に合わせて目標を設定することが大切とも言い換えられる。前年比○%低下等少しずつゴールを定めていくのもよい。

社員の健康を気遣う会社ほど、逆に不調時に言いづらいとなっては本末転倒である。
その様にならないようちょっとした運用の工夫で解決できると思う。

また、休職者へも伝えるべきことがある。体調を崩して会社を休職し、療養後に復職を目指している人に臨床心理士としてよく声をかけていることがある。
それは、「復職を目標にしない。」ということ。

これはどういうことかというと、休職している人は復職をゴールに考えるケースが多いためである。
しかしながら、長い会社員生活で大事なのは短期的な復職ではない。
つまり復職を目指すのではなく、再休職しないことこそが大切なのである。

多くの休職者がその点を見逃しがちである。もっと言うと会社もその視点を忘れがちな傾向がある。
そのためにはどのようにすれば良いのか?

いろいろなケースがあるが、きちんと療養期間は療養に努めることが大切なポイントの一つである。
まだ治りきっていないのに、休職しているという罪悪感から復職し、結果また休職しズルズルと長引くケースを多く見てきた。そのような状況は本人にも会社にとっても、さらに周囲で働く人にとっても不幸な事態であると言える。

休職期間中に従業員の方にしてほしいこととして、普段の勤務時間中は図書館にいるなどして、復職の準備をしてもらうことだ。
ここでのポイントとしては、勤務時間中ということである。多くの方が休職中は気晴らしや趣味に時間を使う。

しかしながら、復職後日常の勤務がはじまるとそのような時間は勤務時間外にすることになる。
いくらジムに行って汗を流してリフレッシュしていたとしても復職後は、そのような時間は勤務時間外か、休日にしかとることができないのである。

そのため、休職されている従業員の方には、復職の準備として朝、通勤の時間帯にきちんと起きる(できれば駅まで行くなどして通勤訓練も)、また、勤務時間中はある程度不自由な状態にしてもらうことが大切である。

もちろん産業医や主治医の意見も聞きながらであるが、このような準備をしておくことで復職後も体調を崩さず、復職できる可能性が高まる。

単に復職を目標にせず、きっちりと1日8時間1週40時間(所定労働時間分)働けるまで体力が回復していることが大切である。あくまでも再休職しないことを目標に考えることが大事である。そのことが働く人も会社も周囲の仲間にも良い結果をもたらすためである。
Office CPSR臨床心理士・社会保険労務士事務所 代表 
一般社団法人ウエルフルジャパン 理事
産業能率大学兼任講師 植田 健太

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