政府がすすめる「一億総活躍社会」に向けたプランの一環として、長時間労働に対する監視・監督を強化する方針が発表された。

その一例として、都道府県ごとに長時間労働監視を専門とする人員を配置し、長時間の残業が常態化している企業へ働きかけていくようだ。中心組織として機能するのが過重労働撲滅特別対策班…通称「かとく」だ。
月80時間超の残業がある場合(従来は100時間以上)、労働基準監督署の立ち入り調査の対象とされる。以下、政府の長時間労働対策の動向について解説する。
長時間労働対策のトレンド

社会的背景

一億総活躍社会の実現に向けた基本姿勢として、厚生労働省は次のような方針を示している。

若者・高齢者、女性・男性など、誰もが社会の一員として、家庭や職場、そして地域で、それぞれ自分らしく活躍できるチャンスが得られるようにしていく。
そのために、「全産業の生産性革命」・「希望出生率1.8」・「介護離職ゼロ」・「生涯現役社会」の実現に向けて、政策を総動員して取り組んでいく。


長時間労働が、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や女性の活躍を阻む原因となっている。はたまた出生率の低下や介護離職、高齢者雇用の阻害要因となっているとの考え方から、今まで以上に労働時間を減らしていくことを目指している。

■「かとく」とは
まず、冒頭でふれた過重労働特別監督管理官「かとく」という長時間労働監視を専門とする人員が配置される。(東京だと2015年4月現在8人)
長時間労働等の悪質な労働基準法違反を働く、いわゆるブラック企業を摘発・排除するための行政の専門集団である「かとく」は、「36協定のチェック」「長時間労働が行われやすい業種特定」「夜間の臨検調査」などの方法で監視を行う。

想定されうる事態

これらの長時間労働対策に対して、「むしろサービス残業が増加するのではないか」との見方もある。
つまり、残業を正確に記録すると是正指導の対象となってしまうため、タイムカード等をあらかじめ打刻させ、その後はサービス残業が行われるというものだ。

しかし、SNSの発達やブラック企業と呼ばれて社会的制裁を受けるケースもあるなど、労働者も声を上げやすくなっている。
また、(主に)サービス残業によってしか利益を上げられないような競争力なき企業には、退出してもらうほかないのが、資本主義の原則だ。
懸念すべきは雇用機会の喪失だが、人手不足が長らく続く現在であれば、その痛みは比較的少ないのでないだろうか。


■企業の対策
企業側としては、いよいよ本気で長時間労働からの脱却を考えなければならない。

長時間労働は今後の人材確保にマイナスになるだけでなく、健康被害や労使トラブルリスクも誘発する。
何一つ、メリットはない。

好時間労働に対する企業の対策として、下記に一例を上げる。
・労働時間の正確な管理(勤怠システムの導入)
・有給休暇取得の奨励
・所定労働時間の短縮(1日7時間30分労働)
・ノー残業デーの設定


いずれにせよ、長時間労働対策は一朝一夕に成果が出ることはない。
中長期的なスパンでスケジュールを組み、やり続けることが重要だ。

社会保険労務士たきもと事務所
代表 瀧本 旭

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