今回と次回は、「会社が、働きながら介護する社員にできること」を考えてみる。
今回は「会社側が準備すべきこと」について提案したい。
中小企業のための『仕事と介護』を提案します[9]

1)高齢者化社会の現状と認知症サポーター

最初にしなくてはならないことは、まず経営者・上司が『介護』や『高齢化社会』の現実を知ることである。

現在、NHKで『認知症キャンペーン』を行っているように、テレビや新聞等で『介護』『認知症』『下流老人』など、『高齢化社会』について取り上げる機会がここ数年特に増えている。そういうものが目についたら、ぜひ関心を向けてほしい。
 『介護』というと、日常の仕事の生活とはかけ離れたもの、自分には関係ないことに思えるかもしれないが、誰にでも親がいる限り、その介護をする可能性はある。
これまでの老親の介護者は、夫の配偶者など女性の家族の役割だったのが、夫本人などの男性家族、それも中高年から若年層にまで広がっているのが実態である。

『介護』や『高齢化社会』については、各専門家によるセミナーなども現在は多く開催されており、市区町村主催の無料のものも多くみられる。
 たとえば『認知症サポーター』という制度では、地域社会で認知症の人と家族をサポートする人を養成し、安心して暮らせるまちづくりを目指す、というものなのだが、各都道府県、市区町村では『認知症サポーター養成講座』(数時間程度)の開催や、講師の派遣(無料)も行っている。
気軽に受講できるので、『認知症』という入り口から、『介護』について知るのには入りやすい方法である。
この養成講座は、小売業、金融機関などの企業で取り入れているところも多い。

顧客としての認知症のお年寄りを想定してのことで、利用すれば、経営者だけでなく、会社全体で『介護』について社内で考えるきっかけになり、会社が『介護』に取り組んでいる、という、社内外へのアピールにもなるだろう。

2)会社は何かできるか?

 『介護』について知ることで、実際に自社ではどのように対策を立てようか、ということが考えやすくなる。
 事前に制度として考えておくべきなのは、
①雇用形態について、介護への対応がしやすいようにバリエーションを増やす
②時短勤務、勤務時間等についても同様
③有休や介護休暇制度の実施を検討する
④介護休職、介護退職しても、状況が変わったら戻れるような制度を作る

などである。
これらについては、会社全体の業務内容や、社員の年齢層や実際に近々に該当する社員がいるか、などから考えていく必要がある。

 また、個別の社員への対応としては、今後介護に関わる可能性がある(ありそうな)社員の勤務状況やポジション、サポートする同僚について、経営者と直属上司が個別に考えておく必要がある。
その際には、前回お知らせしたような、社員との面談で、それぞれの介護の状況(同居で介護か、別居で遠距離介護か、人数やほかに介護者がいるか、など)を知っておくことが重要である。

 親の健康について、子供は過信しやすいもので、特に男性は現実を見ない傾向が強い。
どうにもたちゆかなくなってからでは遅いので、ぜひ前もって心づもりをしておくように、『介護』についての情報や知識と、会社がどのようなサポートをするかということを社内に広めてほしい。

次回は「会社が、生活面、精神面でできるサポート」について考えてみることにする。

ふくすけサポート社会保険労務士事務所 
社会保険労務士 産業カウンセラー 仕事と介護コンサルタント 
森大輔

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