『ポルナレフ、人間は何のために生きるのかを考えたことがあるかね?
 「人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる」
 名声を手に入れたり人を支配したり、金もうけをするのも安心するためだ。結婚したり友人をつくったりするのも安心するためだ。人のために役立つだとか、愛と平和のためにだとか、すべて自分を安心させるためだ。安心を求める事こそ人間の目的だ。』
(荒木飛呂彦著「ジョジョの奇妙な冒険」集英社より)
「労務管理あんしん率」という考え方

会社が社員に提供できる「安心」10項目

地震、火山活動、原発、MERS、食の安全、年金情報流出問題…etc、現代社会に生きる私たちの身の回りは不安や恐怖でいっぱいである。自分の将来に不安を感じたことの無い人はいないだろう。だとすると、上記の台詞はある意味至言かもしれない。そこで今回、この「安心」という言葉をキーワードに、より良い会社経営を実現することはできないか考えてみた。より質の高い「安心」を社員に与えられる会社が良い会社という訳だ。以下、会社が社員に与えられる「安心」について10項目挙げてみる。

1. 採用の安心
 年齢、性別、家族構成、出生地等で就職差別を受けたりしないだろうか。本人の適性や能力をきちんと見てもらえることが最初の「安心」である。

2.収入の安心
 賃金はきちんと支払われているだろうか。給与体系はしっかりしたものだろうか。収入の安心は重要な「安心」である。

3. 健康の安心
 長時間労働等の過重労働はないだろうか。たばこの煙等の健康を害する環境ではないだろうか。メンタルヘルス対策はどうか。健康の「安心」はとても関心が高い。

4. 仕事の安心
 職場は整理整頓されているだろうか。各人の責任や権限の範囲は明確だろうか。困った時の相談相手はいるだろうか。「安心」して仕事に集中できる環境づくりは重要である。

5.成長の安心
 ご存知マズローの欲求5段階説の頂点は成長欲求である。自分を成長させてくれる会社はとても魅力的で「安心」である。研修等教育訓練に力を入れているだろうか。

6. 人間関係の安心
 職場の人間関係が原因で退職する人は多い。好きな仕事もこのために続けられなくなるとしたら悲劇で「安心」できない。コミュニケーションは良好で、相互の信頼関係が築けているだろうか。

7. 雇用継続の安心
 育児や介護、病気やケガ等で仕事が続けられなくという不安がある。短時間勤務制度や在宅勤務制度、休職後の復職支援制度等が整備できていると「安心」だ。

8. 法令順守の安心
 ブラック企業という言葉もすっかり定着したが、労働関係法令に限らず守るべきルールを守らない会社では「安心」して働けない。

9. 情報管理の安心
 マイナンバー制度の導入が間近に迫っている。今後は企業の情報管理に対してより厳しい目が向けられるだろう。情報管理体制を確立して「安心」して任せられる会社になることは優先順位の高い取り組み事項である。

10.退職後の安心
 定年退職後の収入減による生活の不安は誰もが感じている。公的年金制度だけでは心もとない今、退職後の生活設計に「安心」が持てるように企業年金制度等の導入も検討する価値があるだろう。

労務管理あんしん率100%を目指そう

以上、会社が社員に提供できる「安心」を10項目挙げてみた。1日の所定労働時間を8時間とすれば、人生の約3分の1は仕事である。そしてその仕事によって生活するための収入を得ていることを考えれば、そこで「安心」を提供できる会社は人生の「安心」を提供できているといっても過言ではないかもしれない。そうした会社にはおのずから人が集まり、定着し、成長し、その結果として会社全体が成長していくという成長モデルもありそうである。このことは、人手不足で悩む企業の解決の糸口にもなり得るだろう。ぜひ、前述の10項目すべてをクリアして、「労務管理あんしん率100%」を目指してみてはいかがだろうか。

出岡社会保険労務士事務所 出岡 健太郎

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