新入社員が入社してくる。人事部は日頃の業務に加えて、案内や準備、配属先への根回しなど大忙しの時期。せっかく採用試験をして入社してもらうのだ。活躍してほしいし、「この会社を選んでよかった」と思ってもらいたい。何なら、将来を担ってくれる人材になってくれたら……。人事部の思いは温かい。
新入社員の成長を阻害する意外な要因とは

新入社員のやる気を高めるのは簡単

新入社員研修も用意周到だ。もちろん、企業によって期間、内容、予算はまちまちである。社長の挨拶のあと外部講師による研修、その後すぐに配属する企業もあれば、半年間ローテーション配属を行う企業もある。しかし、いずれにしても限られた期間、予算の中で最大のパフォーマンスを上げることを考え「用意周到」にする。

当の新入社員はどうだろうか。外部講師として新入社員研修に行く時にいつも感じることがある。それは「真剣そのもの」ということ。もちろん、研修が終わったら気が抜けて…ということもある。しかし、それは新入社員に限らず、上司や先輩社員も同じことだ。入社から間もない研修は、緊張感とともにこれからの期待に胸を膨らませる時期。だからこそ、真剣そのものであり、非常に積極的である。

初めは返事もままならない時もあるが、「何かを問われたときは返事をするもの」と一声かけるだけで、それ以降は「はいっ」「申し訳ありません、分かりません」と返事をするようになる。初めからすべてを完璧にこなすのは難しい。しかし、これまでの人生で意識する事の無かったことを、認識できるような機会を与えればいいのだ。時に時間を守ることができないことや、だらけてしまうこともある。

口では「昇進なんかしなくていい」というかもしれない。しかし、人間である。人には認められたいという欲求があるし、頑張ってみたいという気持ちがある。だからこそ、「自分の言動が周囲に与える影響」を説明すれば、それ以降の言動をあらためる。新入社員は「素直」。この一言に尽きる。そう考えれば、新入社員のやる気を伸ばすことはそれほど難しいことではないのだ。

新入社員のやる気が無くなるネガティブワード

しかし、御社の新入社員(特に半年ほど経った社員)の様子はどうだろうか。
入社時と同様、変わらず緊張感と積極性を持って仕事をしているだろうか。もし「NO」の答えであるならば、その原因を新入社員本人に求めるのではなく、その「周囲」に求めるのも一つである。つまり、入社時よりも「やる気がない」ように見える場合、本人の責任にするのは簡単だが、原因は本人ばかりではないという事である。筆者が現場でよく見る光景としては、先輩社員が新入社員にこう言っているのである。「まぁ、こんなもんでいいだろう」「普段の仕事はほどほどにやっていれば給料はもらえるから」と。果たしてこのような言葉を6カ月間聞きつづけた新入社員に、入社時のやる気を求めるのはいかがなものだろうか。

会社の離職理由の一つとして「このまま働いていても明るい未来が無いと感じるから」というものがある。自分の能力や将来を他責にすることは決してほめられたことではないが、やはりネガティブな発想をする社員の下では、ポジティブな発想に切り替えるのは難しいものである。そう考えると、新入社員研修だけではなく「受け入れ側」の意識改革が何より重要である。いま、世の中で「先輩社員研修」が増えてきている。新入社員を受け入れる「先輩」を研修するものだ。これは、新入社員の受け入れを先輩社員の「成長機会」に変えることが出来るので、非常に有効である。

入社時に比べて新入社員のやる気がないな……そう感じたら、まずはその先輩・上司の態度をチェックしてみる。これをぜひお勧めしたい。人は環境に左右されやすい生き物だからである。


株式会社ブレインコンサルティングオフィス大阪営業所 所長
社会保険労務士 神野 沙樹

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