部下に対してとくに厳しく接しているわけではないのに、なぜか部下との距離が縮まらない。ちょっと注意しただけで「パワハラ」と言われた。
こんな悩みがあるとしたら、その原因は、あなたの非言語的コミュニケーションにあるのかもしれない。
パワハラ上司と言われない<しぐさの心理>

非言語的コミュニケーションが相手に与える効果

顔が見える距離で接しているとき、人は話している言葉以外にたくさんの情報を発している。それが「非言語的コミュニケーション」と言われるものだ。
表情、声のトーン、しぐさ、姿勢、相手との距離は、意識しようがしまいが、意外に多くのことを物語っている。さらには、服装や髪型、化粧なども相手に対するメッセージになっている。
ここでは、自分では意識しにくい表情や視線、しぐさが、どのような印象を相手に与えるのか考えてみよう。

まず、表情から。
口角が下がっていたり、口を尖らせるのは、不機嫌を意味する。残念なことに、中高年になると、自分ではニュートラルな表情をしているつもりなのに、口角が下がっていて、むすっとしているように見える場合が多い。眉間にシワがよっているのも、不満がある、機嫌が悪い、という印象を与える。
なんでもないときに、「怒ってます?」「なんかコワイ」などと言われたことがあれば、鏡を見て、おだやかに見える表情を研究したほうがいいかもしれない。

次に、腕組み。これは、拒否を表す。クセになっていて、なにげなく腕組みをしているだけでも、相手から見ると話しかけづらいものだ。
ペンや指で机をトントンと叩くクセはないだろうか。さほど大きな音を出しているわけではないのだが、周りの人からは気になるクセだ。周りをイライラさせるだけでなく、そのようなしぐさをしている人も、イライラしてみえる。
ペンといえば、指の上でクルクル回すクセのある人もいる。これは退屈しているという印象を与える。「きみの話は退屈だ」と言外に言われていて、相手にいい印象を持てるだろうか。

もうひとつよくないのが、ペンや指で相手を指し示すしぐさ。これは、攻撃を表す。されたほうは、責められているように感じてしまう。
話している最中に時計を見るのは、「話が長いから早く終われ」というサイン。会話をきりあげたいときに、わざとするという手もあるが、あまり感じのよいものではない。時間が気になるときは、「次は〇時から用がある」などと、相手に告げておいたほうがよい。

視線について言えば、相手の目ばかりをじっと見つめていると、攻撃だと受け取られる。とくに自分の方が立場が上の場合は、あまり見つめると相手は圧迫感を感じる。逆に、相手の顔をまったく見ずに、書類やパソコンのほうばかり見ているのも、相手の話に興味がないという印象を与えてしまう。
目ではなく鼻や口元を見るようにし、目を見るのは自分が伝えたいポイントのときだけにすると、相手の話に興味をもって聞いていることを伝えられるし、印象がかなりやわらぐ。

部下は、あなたが思うよりもずっとあなたのことをよく観察していて、言葉以外の部分からも情報を読み取ろうとしている。であれば、自分が意図しないマイナスの感情を、不用意にしぐさや表情から読み取られないように、意識するべきだろう。

矛盾したコミュニケーション

言語的コミュニケーション(言葉)と非言語的コミュニケーション(しぐさ、表情)の意味がずれているとき、人はしぐさや表情のほうを、その人のホンネと感じる。言葉はいくらでも飾れるし、言いたいことをあえて言わないということもあるが、全身に気を配って本音を隠すということは、ふつうの人間にはなかなか難しいのだ。

部下を気遣って、「よくやった」「がんばってるね」など、肯定的な言葉をかけるようにしていても、しかめっ面、相手の顔を見ない、暗い声のトーン、必要以上に相手との距離をとるなど、全身で否定的なメッセージを発していれば、せっかくの努力が無になってしまう。それどころか、「なんだかいやみっぽい」「なにを考えているのかわからない」という、まったくありがたくない印象というおまけまでつく。

逆に、口では「なにやってるんだ、だめじゃないか」と否定的な言葉を発していても、表情がにこやかであれば、「言葉ほどは怒ってない」「冗談を言っている」と受け取られる。これを利用して、注意するときはあえて笑顔で言い、相手との人間関係を壊さないようにする、ということも考えられる。

だが、いつも矛盾したメッセージを発していては、相手は混乱し、「腹の底が見えない」「信用できない」という印象になりがちだ。
言葉によるコミュニケーションと言葉以外のコミュニケーションのずれに注意することも必要なのである。

メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/セクハラ・パワハラ防止コンサルタント/産業カウンセラー
李怜香

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