あとひと月で迎える毎年4月1日。たくさんの学生がフレッシュなスーツに身を包み、企業へ向かう。傍では「新鮮で若々しくていいな」と目を細めてみている方もいれば、「最近の若い子は」と感じている方もいるかもしれない。
内定式から入社式までどうするか? 新入社員の分かれ道

新入社員は何を考えている?

それでは、当の本人、つまりフレッシュなスーツに身を包んでいる、昨日まで学生だった新入社員は何を考えているのだろうか。大半は緊張した面持ちで歩いている。中には「今日から早起きしないといけない。つらい。働きたくない」と思っている新入社員もいるかもしれない。また、そういう新入社員には目がいきやすいから、「仕事が始まることが嫌だと感じている新入社員がほとんどだ」と考えている先輩社員も多いかもしれない。
しかし、そんな学生ばかりではない。これから始まること、これから飛び込む世界に少しの期待感と大いなる緊張に包まれているというのが本音なのだ。それが、新入社員研修で新入社員と向き合うたびに常々感じることである。

さて一方、新入社員が入社してくる日の企業の様子を見てみよう。
もちろん企業によって違いはあるが、入社式に抜け・漏れが無いか最終確認する人事部に、特に意識をせず「年度始まり」だという事実に身を引き締める他部署。はたまた「今年の新入社員はどんな感じか」と興味本位で見る先輩。さまざまな人間が会社で待ち受ける。

いよいよ新入社員が会社にやってきた。入口のドアに手をかけた。面接や内定式で会社に来たことがあるとはいえ、会社に踏み入れるのは半年ぶりだ。さすがに緊張する。
「あ、入ってきた!」

活躍するA君と活躍し損ねたB君の分かれ道は

ここまでは、どの会社、どの新入社員も大差はない。ここからだ。その新入社員が「活躍できるか」「出来ないか」に分かれるのは。

ニコッと満面の笑みを作り、「おはようございます!今日からよろしくお願いします!」と元気に入ってきたA君。
すると企業の人間はこう感じる。「お!今年の新人は元気がいいねぇ!」

一方、緊張した面持ちでそろっとドアを開け、ボソッと一言「おはようございます」。このB君を見て企業の人間はこう感じる。「今年の新人は元気が無いね」と。

さて、A君とB君の人生は今後どう展開していくだろうか。

コンビニエンスストアに入った時でも、企業訪問をした際でも、第一声は重要である。
その一言でその店舗やその会社の印象が決まってしまうと言っても過言ではない。そう考えると、新入社員のA君とB君、第一声で今後の人生が決まってしまうと言っても過言ではない。万一「元気のいいA君」「おとなしいB君」とでもレッテルを貼られた場合、取り返しがつかないことになる。

しかし、B君が大きな声で挨拶をしなかったのは、会社に入った時に静かだったので、邪魔をしてはいけないとB君なりに配慮した結果だったかもしれない。本来は笑顔であいさつを交わすことくらい難なくできるかもしれない。人事部が何度も面接を重ねて採用した人材。人事部としては「今年の新人はダメだ」などと言われてしまっては労力が報われないというものではないか。

ここで強く感じることが、内定式から入社式までの時間を無駄にしてはいないだろうかということである。もちろん、残された学生生活を謳歌することも大切だ。すべてを仕事に捧げなさいとは言わない。しかし、例えば入社式の1か月前でも1週間前でもいい。あるいは1か月に1度でもいい。会社または会議室等に招集して研修してみてはどうだろうか。研修といえば大げさだが、「挨拶練習」「笑顔の練習」「働くことの心構え」を伝えるだけでも、その後の人生は大きく変わる。

内定者を招集するコストが気になるだろうか。しかし、考えてみてほしい。その学生が入社した後、「活躍している姿」を。決して高いコストだとは思わないのではないだろうか。
世の企業は「新入社員研修」を実施する企業が多い。もちろんそれも重要だ。ビジネスマナーは入ってからでないと実践につながらないからだ。しかし、それよりも前に、第1歩を自信持って踏み出すために、内定時期の研修を今一度見直すべきではないだろうか。

先ほどのA君のように言えるために。最初にうまく行った新入社員は、「ほめられることの喜び」「うまく行くことの快感」を覚える。そうすればあとは自然と飛ぶことが出来るのだ。その機会をプロデュースするということを、人事部の役割の1つに加えてもいいのではないだろうか。人材育成の場面を見て私は強く感じる。

さて、今年はどんな新入社員が入社し、どんな風に活躍するのだろうか。

株式会社ブレインコンサルティングオフィス大阪営業所 所長
社会保険労務士 神野 沙樹

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