「ブラック企業」なる言葉はいつからあるのか。
ネットやマスコミ等で1日1回は目にするほど、世間に浸透している。最近では「ブラックプレジデント」なるテレビ番組もあるくらいだ。まさに、世の中、「ブラック」ブームである。
しかしながら、ブラック企業の定義とはなんぞや??というと様々である。ブラック企業に共通する特徴の一つとして、使用者と労働者の労働契約を軽視(もしくは無視)していることではないか。
「ブラック企業」が流行っているけど……

 例えば、長時間労働や残業代の未払い・果てはパワハラやセクハラで労働者を精神的に追い込んだうえで退職させる企業はブラック企業の典型であろう。もちろん法律違反をしている企業に至っては、ブラック企業どうこうの話ではない。

 しかしである。ブラック企業と呼ばれるように、企業側にすべての責任があるように言われることが多い。
 ほんとうにそうであろうか?
私は仕事柄、経営者と話をすることも多い。もちろん、企業側にも非が無いわけではないが、一方的にブラック企業と決めつけるのもどうかといったことも多いのが実情だ。

 例えば、社内を見渡せばあっちにもこっちにもいまだ残業代を稼ぐためにダラダラと仕事をする社員や会社の文句ばかり言って全く成果を上げられない労働者は多いのでなないだろうか?
 さらに、自分だけならまだしも抱きつきお化けのように周りに悪影響をもたらす労働者はいやしないだろうか。これらを総じて、「ブラック社員」とでも呼びたい経営者は多いだろう。

 ブラック社員が生まれてしまう原因として、会社側の求める事と働く側(労働者)の希望とが合わないことが考えられる。だが、企業というのは大なり小なりブラックな側面があるのではないか。

 にもかかわらず、労働者が自分の希望が通らないといった理由だけで「うちの会社はブラックだ!」と、声をあげる労働者も少なからずいる。まるで、世の中のブラックブームに乗じているかのように感じるケースもある。

 このように「労働者の希望と合わない=ブラック企業」はいかにも安易ではないだろうか。労働者の希望と合わない労働条件の典型例は、賃金である。

 賃金について誤解を恐れずに言えば、会社からは賃金以上のものを労働者に提供する義務はないのではないか。(賃金に付加価値を付ける必要はない)その賃金にしても、会社からすれば従業員の生活を安定的に守ることによって長期の労働力を得るためである。
言い換えれば会社にとって賃金とは、従業員に次の日や1か月後・1年後も安心して働いてもらうために支払う経費(=必要経費)といえる。さらに言えば、必要経費の中で最も優先されるものが賃金である。

 人間には様々な欲求があるし、当然ながら食事もするし、住居も必要だし、その他生活していく上でお金は必要不可欠である。そういったことを加味したうえで従業員の生活を安定的に守ることができ、社会的に妥当な金額が賃金となる。

 つまりは、賃金は労働者の仕事の成果や評価とは関係のないところで社会的な妥当な額(これがあいまいでわかりにくいのは確かであるが)に決まっているといえる。そのような条件下で賃金について希望の額ではないからと文句をいっても何も始まらない。

 その他、労働者の希望の合わない労働条件・労働環境になってしまう原因として考えられるのは、面接時の対応だ。面接時はどうしても自分を繕ってしまう。嘘とまでは言えないまでも、素の自分を隠してしまったり知らないことを知っていると言ったり、出来ないことや苦手なことでもできると言ってしまったり。

 むしろ、そのような前提で労働契約をしても、どこかで祖語が生じるのは当然である。職場や労働条件について不満ばかりを募らせ自分で解決しようとしない労働者ばかりだと経営者もつらいということを少しだけ自覚することが、ブラック企業を減らす一助にもなりえるのではないか。


社会保険労務士たきもと事務所 代表・社会保険労務士 瀧本 旭

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