前回より、HRプロと東洋経済HRオンラインが共同で実施した全国の4年制大学のキャリアセンター/就職部担当者を対象にしたアンケート調査を基に、大学における学生の就職支援状況を探っている。今回は、インターンシップの現状、今後の企業との連携内容などについて見てみたい。

求人票でも規模の格差

企業と大学の関係を測る重要な指標が求人票である。求人票は大学の就職力を示している。下記のグラフを見れば一目瞭然だが、大学の規模によって大きな差がある。
 「5001人以上」の大学の90%は1000社以上から求人票が届いており、数千社という大学がほとんどだ。ところが「1~1000人」の大学では、1000社以下が60%強であり、数十社、数百社という大学も珍しくない。もっとも30%の小規模大学は1000社以上の求人票を得ているから、小規模校の中でも大学ごとの差異は大きそうだ。

図表1:2012年度新卒就職の求人票の数
第73回 大学キャリアセンター/就職部の現状2
また求人票の増減を見ても、大規模校は「増えている」の比率が小規模校より高く、小規模校の多くは「減っている」と回答している。ここにも規模の格差がある。

図表2:求人票数の対前年比増減
第73回 大学キャリアセンター/就職部の現状2

インターンシップは強化の方向

2012年卒採用までインターンシップは何でもありの状態にあり、単なる企業セミナーまで「1Dayインターンシップ」と冠されるケースがあった。以下に紹介するインターンシップは大学に問うているので、企業が言う「インターンシップ」とは性格を異にしている。
 学生にとってインターンシップが単位として認定されるかどうかは大きな関心事のはずだ。アンケートによれば、69%の大学が単位認定している。2011年4月からキャリアガイダンスが大学に義務づけられたから、この比率は上がっていくものと予測できる。

図表3:インターンシップの単位認定の有無
第73回 大学キャリアセンター/就職部の現状2
ただ学生のインターンシップ参加率を見ると、とても低い。大学の規模にかかわらず、約4割の大学では「0~10%」の学生しか参加していない。いや参加できていないというべきだろうか。「インターンシップ」という言葉は先行しているが、それはあくまでも就職活動(企業から見れば採用活動)の一環としてのものであり、大学のキャリア教育としては就業型の本来のインターンシップはまだまだ定着していない現状が見える。採用と関係しないインターンシップを受け入れてくれる企業の開拓に苦労しているのである。

図表4:求人票数の対前年比増減
第73回 大学キャリアセンター/就職部の現状2

利用しにくいOB/OG名簿

キャリアセンターでは「キャリア意識を高めるために社会人と話す機会を持つ」ように学生に指導しているのだろうが、OB/OG紹介については消極的に見える。
 「名簿を施設に常設し、学生が自由に閲覧できるようにしている」はわずか3%にすぎない。「学生の要望に応じて名簿を貸し出し、その場で閲覧させている(持出禁止)」は15%にとどまり、「名簿は貸し出しておらず、学生の要望に応じて個別に紹介している」は最多の60%。「窓口では一切紹介していない」大学さえ14%に上っている。
 おそらくこれほど及び腰である理由は、05年施行の個人情報保護法だろうと思う。しかし、これほどOB/OG名簿を使いにくくする正当な理由たりうるだろうか? もう少し学生にとって使いやすい名簿にすべきではないだろうか?
 OB/OG訪問する学生がとても少ないことについては、これまでにも書いているが、少ない理由の1つは、大学側の規制にありそうだ。

図表5:OB/OGの紹介方法
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学生に問われる能力、企業の要求と若干のずれ

学生の質が問われるようになって久しいが、大学はどのように考えているのだろうか?
 「就職にあたって、企業が学生に強く求めると思われる能力」を聞いたところ、1位は「コミュニケーション能力」、2位「チームで働く力」、3位「前に踏み出す力」となった。社会人基礎力の3つのうちの2つ「チームで働く力」「前に踏み出す力」が3位以内に入ったが、「考え抜く力」は7位であった。
 上位の3つの能力については、企業の回答結果とまったく同じであるが、4位に「社会常識」、5位に「基礎的な学力」が来ており、「目標達成指向」については9位(34%)にとどまっている。このあたりは企業との認識のズレがあるようだ。

図表6:就職にあたって、企業が学生に強く求めると思われる能力
第73回 大学キャリアセンター/就職部の現状2

大学と企業の連携が強化される

大学側に、企業と連携して積極的に行っていくべきことについて聞いてみた。
 「学内セミナー/説明会」「業界研究・仕事研究」「インターンシップ」「学生のキャリア意識向上のための講座」が上位に並び、いずれも過半数の支持を得ている。
 1980年代には大学と企業の強固な絆が存在したが、90年代後半からは就職ナビに押されて、関係が薄まったように見える。
 いま求められているのは、就職ナビを使うバーチャルな就活ではなく、大学キャンパスを舞台にして企業と学生が出会うリアルな就職活動ではないか。大学と企業の連携が強化されていくことを望みたい。

図表7:大学と企業が積極的に連携すべきこと
第73回 大学キャリアセンター/就職部の現状2
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