HRサミット2018プレインタビューVOL.08

真のグローバル人材育成は「人材教育」と「語学教育」を一体化させることが決め手〜日本経済新聞社と英フィナンシャル・タイムズ社が共同で開発する最新メソッドを紹介〜

日経FTラーニング 日本代表 坂東 治忠氏
<インタビュアー>ProFuture株式会社 代表取締役社長 寺澤康介

人口減少が進む中、M&Aを活用したグローバル展開に活路を見出した日本企業。しかし、急速なグローバル化に、世界で戦える能力を擁したグローバル人材の育成が追い付いていないのが現状だ。こうした課題を解決すべく、日本経済新聞社(日経)と英フィナンシャル・タイムズ社(FT)が日経FTラーニングを設立。2019年1月にスマートフォンで学べる法人向けビジネス英語学習コース「Excedo(エクセド)」をローンチ予定だ。今回は同社の日本代表・坂東治忠氏に、日本企業が抱えるグローバル人材育成の課題や英語教育の問題点、「Excedo」開発の経緯、今後の展開などについて話を伺った。

「人材教育」と「語学教育」がバラバラではグローバル人材は育たない

2017年のM&A、IN-OUT案件は金額ベースで約7兆4,800億円規模、案件数は前年比5.7%増の672件と過去最多の件数となりました。一方で、買収した海外企業を活用しきれているとは言い難く、少子高齢化による労働力不足も相まって、グローバル人材の育成は日本企業にとって「待ったなし」の状況となっています。日本企業は、こうした危機感を理解しているのでしょうか。

坂東氏

危機感はあると思います。ですが、グローバル化に大きく舵を切った日本企業でも、グローバル人材の育成は海外主導で進めている印象があります。育成に成功している企業は、自社の人事部の社員を海外企業の人事部に出向させてノウハウを吸収し、戻って改革を行うといった、“かなり時間をかけて”取り組んできた企業です。待ったなしのグローバル化のなかで、一定期間内でのグローバル人材の育成は、日本企業にとって相当難易度が高いようです。

日本企業でグローバル人材の育成が進まない理由は何でしょうか?世界のビジネスシーンで戦っていくなら、英語は必須アイテムです。ただ、英語が流暢に話せる人でも、グローバルな人材が集まる会議での発言や、海外での交渉を有利に進められるわけではないことも周知の事実です。

坂東氏

原因の一つは、「人材教育」と「語学教育」をバラバラに行っていることにあります。交渉術やリーダーシップは日本でビジネスをしていれば普通に身につけることができますが、それをいざ海外でやろうとすると言語が大きな壁になります。だからといって、英語学習に力を入れて取り組んでも、それをビジネスの場で使いこなすことは難しい。日本ではもともと受け身の学習方法が主流なので、いざ英語を使うと、「単語や文法はわかるけれど、使い方については教わっていなかった」と気づきます。これまでの「英語をどう理解するか、覚えるか」ではなく、「英語をどう使って、ビジネスで結果を出すか」に考え方を変え、「人材教育」と「語学教育」を一体化させていくことが必要なのです。

ミレニアル世代に根性論は通用しないキャリアパスと学びをリンクさせる仕組みが必要

ひと昔前なら、いきなり海外に赴任させてパニックゾーン(混乱する環境)に放り込み、根性で学ばせるというやり方もありましたが、ミレニアル世代といわれる今の若手には通用しませんね。

坂東氏

人事の方は、「グローバル人材育成をどうしたらいいか」と悩まれていますが、短いスパンで育成するには、能動的に学ぶアクティブ・ラーニングが欠かせません。ただ、現在の日本企業は、キャリアプランを会社側が決めているため、せっかく英語を学んでも希望の業務にアサインされないことも多い。キャリアにつながらない学びに対し、アクティブになれる人はそういません。本人の納得感が重要なのです。

そうなると、人事育成担当者だけで解決するのは難しい問題です。経営層には、CDP(career development program)やゴールマネジメント、評価制度も含めた会社の仕組みを変革することも、グローバル人材育成戦略の一つとして考えていただきたいですね。国際競争力のある人材を育てるためには、社員自身それぞれがグローバル化に対応するために、向上すべき能力が何かを明確にし、その能力を身につけるためのプログラムを自発的に受ける流れが必要です。企業側からの一方的な育成の押し付けでは、国際競争力のある人材は育ちにくいでしょう。

インタビューはまだまだ続きます。

  • ミレニアル世代に根性論は通用しないキャリアパスと学びをリンクさせる仕組みが必要(続き)
  • 「英語力」×「ビジネス力」を高める切り札 オンライン英語学習コース「Excedo」
  • 世界を代表する経済メディアがタッグで手掛けるグローバル人材育成サービス
HRサミット2018での講演情報
C13 9/21(金)9:30 - 10:40 世界市場で勝つための新しいグローバル人材開発(手法)【仮】

坂東 治忠氏
日経FTラーニング 日本代表

大手総合商社に入社後、大手外資系日本法人立ち上げに参画。後に外資系企業日本法人代表としての立ち上げや数々の外資系IT/ソフトウェアベンダーにおける要職を歴任。米国タレントマネジメントソリューションの大手コーナーストーンオンデマンド社の日本法人社長を経て、KPMGコンサルティングの人事コンサルティング部門ディレクターに就任。多数のHRトランスフォーメーション支援を行い、現職に至る。

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