【HRサミット2016】日本最大級の人事フォーラム 5月11日・12日・13日開催!

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若手イノベーター人材を生み出すために人事部門が行うべきこと

〜若手イノベーターが考えていること、望んでいることに人事部門はどう支援すべきか〜

パナソニック株式会社 コーポレート戦略本社 人材戦略部 主務(パス株式会社出向中)濱松 誠氏
野村不動産株式会社 住宅事業本部 市場戦略室 課長代理 刈内 一博氏
多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授 須東 朋広氏(モデレーター)

イノベーションがなかなか進まないことは、多くの企業の課題

須東

最近、イノベーションが非常に重要だといわれる一方で、実際には思うようにイノベーションが進まない、新規事業を創ろうにも、それを担える人材がなかなかいないというのが多くの企業の現状ではないかと思います。今日は、若手イノベーター人材、すなわち新規事業を構想、創造する人材を生み出すために人事部門は何をするべきかということで、この分野で今をときめくご活躍をされているお二人にお話をうかがいたいと思っています。まず、刈内さんは「Forbes Japan」にイントラプレナー論を連載で書かれていますが、イントラプレナーとはどういう人なのかというところを、お話しいただけますか。

刈内

野村不動産の刈内です。入社後、プロジェクトマネジメント、商品開発部門、海外事業部門を経て、現在は住生活領域の新規事業を司っているチームのリーダーを務めています。イントラプレナーとは社内起業家のことで、独立起業しているアントレプレナーの対義語ですが、会社を人間の体に例えれば、「タンパク質」人材だといえると思います。もう一方にいるのは「炭水化物」人材です。「炭水化物」人材は会社が明日の活力を得るための仕事を担い、「タンパク質」人材は将来の大きな体を作るための仕事を担います。また、「炭水化物」人材は、仕事の目的や意義はすでに決まっています。例えば車を売りなさいと言われていて、ではどうやって売るかという「HOW」が問われますが、そもそも何を売るかまでは問われません。一方、「タンパク質」人材は「WHAT」や「WHY」が問われます。何をするべきか、何故そうするべきか。課題解決ではなく課題設定から任されないと、新規事業は創造できません。ですから、何をやるかも含めて自分で考える。そのベースにあるのが社員の内発的動機です。社会のこういう課題を解決しようという使命感であるとか、その社員がもともと持っている原体験をベースに考えないと、「タンパク質」人材の育成や活躍・活用は難しいと思います。

内発的動機を活かして実践者になれるか。そこを会社がどう支援するか

刈内

では「タンパク質」人材とはどういう人か。事業を創造して会社に新しい収益源を開拓していく人であると考えれば、能力要件は大きく3つあると思います。1つ目は「新規事業リソースへの影響力」。事業を創るために必要なリソースを認知し、リソースにアプローチする影響力が必要です。例えると、産地直送のおいしい食材を買い付ける能力があるというイメージです。2つ目は「価値創造能力」で、その食材をおいしい料理に調理できる能力。いかにお客様に喜んでいただけるものを創れるかがポイントです。3つ目が「事業開発能力」。おいしい料理がつくれた後に、健全なレストラン経営ができるかというところが非常に大事です。

「タンパク質」人材の育成には、本人を取り巻く環境づくりが重要だと思います。社内ネットワークを中心に、広い視野と高い視座を与えてくれる環境が必要で、私の場合、勉強会やイベントを主催し、面白い人、会社の中では出会えない価値観や考え方を持った人を、自分の日常に集めることで、環境づくりをしています。彼らから受ける影響や学びが、新規事業の源泉です。

ただし、出逢いと学びとアイデアに満足しないことが大切だと思います。それだけでは価値を生まないからです。つまり、本人の内発的動機を活かして実践者になっていかなければなりません。実はここのハードルが一番高くて、会社側がサポートできる最大のポイントだと思います。例えば、会社員であれば、評価はかなり大きな影響を与えますし、本人がやりたいことを見つけてチャレンジしていく過程で、その人の評価し、ロールモデルとして指し示してあげることだと思います。

短期間で成果を求めない、イントラプレナー向けの評価制度が必要

須東

私から刈内さんに質問したいと思います。外の世界の人と積極的に交流されているというお話でしたが、新しいものが生まれる交流の仕方といったものがあれば教えてください。

刈内

自分の仕事に対してオーナーシップを持っている人と交流すると、学びが多いと感じますね。会社を経営しているという意味ではなく、その仕事を自分ごととしてやっている人です。やらされている人の話は、どんなに聞いても学びがありません。

須東

会場の皆さんからもご質問をお受けします。

(質問)

「実践者へ移行するときに会社ができる支援として評価が挙げられていたが、具体的に聞きたい」

刈内

おそらく、ほとんどの会社の評価制度が「炭水化物」人材をひいきする制度になっていると思います。事業創造に取り組んで、半年ごとにパフォーマンスを出せと言われてもできません。もしくは半年でパフォーマンスを出せるような小さいことしかできません。ですから、例えば、3年間は目をつぶって、3年後の評価から過去の3年分の評価を遡って上書きしてもらえるような、「タンパク質」人材向けの評価制度を別途つくっていただけると非常にいいと思います。

須東

では次に、濱松さんにお聞きします。濱松さんは大手企業の若手社員のネットワーク組織を立ち上げられるなど、パナソニックという会社の枠を越えて活動されていますが、若手の事業創造人材を育成するために人事として何をするべきかというところを、お話しいただけますか。

事業創造人材を人事がどのようにFind、Grow、Keep するか

濱松

パナソニックの濱松です。入社後、北米向けテレビのマーケティング、インド事業の推進に携わり、約4年前に社内公募で人事に異動しました。ちょうど当時は、パナソニックが自前主義から脱却し、オープンイノベーションへと経営の舵取りが変わったときで、私もその方向に強く共感し、一個人として何がやれるか考えていたところでした。松下幸之助創業者も言っているのですが、「事業は人なり」。予定していた海外駐在のキャリアから思い切って人事にうつりました。人事では、採用戦略、海外トレーニーの育成プログラム構築、社内公募制度の企画、立案他、主に人材開発領域を担当しました。現在は、パナソニック初の試みとして、資本関係をもたないベンチャー企業(パス㈱)へ出向しており、人材・組織開発のコンサルティング事業のプロジェクトマネジャーとして新しいプログラムを開発しています。

また、仕事のほかには、パナソニック社内の若手を中心とした学びとネットワーキングの会「One Panasonic」を約4年半前に立ち上げ、現在は2,000人を超す集団になっています。最近では、大手企業20代・30代のネットワーク「One JAPAN」も設立し、オープンイノベーションや新しいワークスタイルを実践・提案するという活動を行っていて、各方面からいただく評価やメディアへの露出も増えています。

とはいえ、私はまだ人事として明確な成果を出しているわけではなく偉そうなことは言えませんので、今日は、パナソニックの人事の視点というよりも、One PanasonicやOne JAPANで大手企業の大勢の20代・30代と交流してきた経験から、事業創造人材の「発掘」(Find)、「育成」(Grow)、「定着」(Keep)という3つのステップで、人事が何をすればうまくいくのか、私見を述べさせていただきたいと思います。

人事と事業創造人材の間に壁があってはいけない

濱松

ず、事業創造人材の「発掘」、探し方ですが、ポイントがいくつかあります。人事の皆さんにぜひやっていただきたいのは、社内をぶらぶらする機能を持つ、または自ら会いに行くことです。例えば、社内の「変人会」といわれるような集まりにも足を運んでください。面白い人がいないか、人事がアンテナを高くしておいて、面白い人がいると聞けば、会いに行く。会ってみて、支援してあげれば、その周辺の気運が変わります。変わったこと、新しいことをやりたいと考えたとき、人事は敵ではない、むしろ仲間なんだと言ってあげてほしいのです。人事がイントラプレナー側に立たないと、イントラプレナーは社内では少数派で孤独です。理解が得られないとなると、イントラプレナーは最終的にはやる気をなくすか、会社を辞めてしまいます。会社にとってこれほどもったいないことはありません。

次に、事業創造人材の「育成」、増やし方です。ポイントのひとつは、社内外の事業創造人材をつなげること。先ほどと似たようなことを言いますが、まず、人事の皆さん自身が、イントラプレナーの集まる勉強会などに積極的に参加なさってください。また、刈内さんもおっしゃっていましたが、事業創造人材を評価する、または、別の評価軸をつくる必要があります。外資系企業やベンチャー企業で、よくそういう評価制度をつくっていますから、話を聞かせてもらいに行くといいと思います。そして、新しい事業を創るというのは、今ある事業と同じやり方でやってもなかなか難しいので、事業創造人材が動きやすいように、「出島」または「特区」をつくることもひとつの方法です。

最後は、事業創造人材の「定着」、守り方です。彼ら・彼女らにやりたいことをやらせてあげてください。これに尽きます。そして、一見、何をしているかわからない活動を理解し彼ら、彼女たちを守ってあげてください。また、その人たちが退職したとしても、裏切り者扱いせず、むしろ出戻りを歓迎する空気をつくってください。アルムナイ(企業のOB・OG)ネットワーキングパーティーはおすすめです。会社をやめてもパートナーです、一緒にオープンイノベーションをやっていきましょうという空気を人事がつくれば、事業創造人材を中途採用する場合もやりやすくなります。

人事と事業創造人材の間に壁がある限り、日本のイントラプレナーは生まれません。属人的に生まれたとしても、増えません。増やさないと事業創造・事業成長は実現されません。人事の皆さんには是非、イノベーターの最良のパートナーになっていただきたいと思っています。

須東

今日はお二人から示唆に富むお話をいろいろお聞きできたと思います。ありがとうございました。

濱松 誠氏

パナソニック株式会社
コーポレート戦略本社 人材戦略部 主務
(パス株式会社 出向中)
濱松 誠氏

1982年京都市生まれ。大阪外国語大学卒業後、2006年パナソニックに入社。 海外営業(北米TV事業)、インド事業推進を経て、2012年コーポレート戦略本社 人材戦略部に異動。 全社グループ採用戦略や人事制度の設計・運営を担当する傍ら、同年、組織を超えて社員の交流を図る有志の会「One Panasonic」を立ち上げる。2016年3月、同社初の試みとして、資本関係のないベンチャー企業(パス㈱)への派遣人材に選抜。同社にて人材・組織開発コンサルティング事業に従事。同年9月には、NTT、トヨタなど大手企業20-30代を集め「One JAPAN」を設立、代表に就任。企業の枠を超えて新事業や未来の働き方について研鑽をはかり、実践や提言をはかる。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2016」選抜。


刈内 一博氏

野村不動産株式会社
住宅事業本部 市場戦略室 課長代理
刈内 一博氏

1978年生まれ、筑波大学大学院修了。 野村不動産株式会社で住宅分譲事業の事業管理部門及び商品開発部門、海外事業部門を経て、現在、住生活領域における新規事業戦略に従事。 『新世代トップランナーの戦いかた 僕たちはこうして仕事を面白くする(NHK出版)』共著、NHK Eテレ「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」論客出演、日経ITイノベーターズ Executive Member、経済産業省主催「始動 Next Innovator 2015」選抜、事業構想大学院大学講師他企業研修・講演会等多数。


須東 朋広氏

多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授
須東 朋広氏

2003年、最高人事責任者の在り方を研究する日本CHO協会の立ち上げに従事し、事務局長として8年半務める。 2011年7月からはインテリジェンスHITO総研リサーチ部主席研究員として日本的雇用システムの在り方の研究から中高年の雇用やキャリア、女性躍進、障がい者雇用、転職者、正社員の研究活動を行ってきた。 2016年7月から、今までの研究活動から組織内でなんらかの理由で声を上げられない社員が、イキイキ働くために、一般社団法人組織内サイレントマイノリティを立ち上げる。 同社代表理事として現在に至る。そのほか、専修大学 非常勤講師、HR総研 客員研究員を兼任。