【HRサミット2016】日本最大級の人事フォーラム 5月11日・12日・13日開催!

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グローバルでも活躍できるリーダー人材の育成の在り方とは

〜グローバル人材輩出企業の育成手法から在り方を学ぶ〜

三菱商事株式会社 グローバル研修・採用担当オフィサー (元 同社アジア大洋州統括付アジアHRDオフィス室長) 松田豊弘氏
元P&G米国本社 組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント/AIDA LLC代表 会田秀和氏
多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授 須東朋広氏(モデレーター)

グローバル経営の加速に伴い、多くの日本企業では、さまざまな課題を解決し組織を牽引する真のグローバル人材、グローバルリーダーの確保・育成が急務となっています。いかにしてグローバルでも活躍できるリーダー人材を育成するのか。数多くのグローバルリーダー育成に取り組まれてきた松田豊弘氏と会田秀和氏をお招きし、グローバル経営を牽引するリーダー育成の在り方とその事例をお話いただきました。

【第1部/松田豊弘氏】 日本企業がグローバル化できない背景

まずはなぜ日本企業がグローバル化できないのか、その歴史について自説を語らせていただきたいと思います。私は三月までシンガポールに6年半おり、そこでアジアにおける人材開発戦略を統括していたのですが、そこで得た教訓は、次の3つです。1つ目は、地域採用プログラム等の経験から、海外での自社ブランドの低さを知りました。2つ目は、各地域・各国における自社ブランドを高めるには何をすべきかということ。そして3つ目は、上記の二点を関連しますが、シンガポール大学、南洋工科大等の学生の多くが三菱電機・三菱自工と三菱商事の区別が付かないということです。その中でも、まずは自社ブランドの再認識が必要ではないかということで、自社ブランドを高めるためには、会社綱領および経営戦略の英語による広報が有効であると結論づけました。

歴史的視点が重要――GHRDの20年史を振り返る

1994〜1996年にかけて、私はジャカルタで人材開発に四苦八苦していましたが、本社ではちょうどトップダウンで国際人材開発室を設置しました。まだ単体のみの視点で、IS(インターナショナル・スタッフ)制度とNCS(ナショナルコアスタッフ)制度を実施しましたが頭脳流出を防ぐことはできませんでした。1996〜2000年にかけては、香港でGHN(グローバルヒューマンネットワーク)が設置され、アジア・パシフィック地域カバーのRegional HRDを創始しました。ここで重要なのは、この地域HRDは単体のみに留まっていた点です。その後、2001〜2005年には日本でGRHD組織の長として地域戦略や人財開発に携わり、2009年以降はシンガポールで活動していまいました。この20年間を振り返った結果、暫定的仮説としては、本社の社員を変えるしかないということ、そして希望的観測としては、アジアを変えれば本社がいずれ変わるということです。

ジャパン・パッシング

2000年頃に、ジャパン・パッシングが起こりました。主な要因としては、透明性の不足(昇格昇進、評価など)、コミュニケーションの不足(現地社員・派遣社員間、派遣社員の語学力)、英語による情報の不足(経営方針や会社方針、マネジメントの将来ビジョンなど)、キャリアパスの不足(出世・昇進の行き止まり、将来のキャリアに関する話し合いがないなど)、評価スキルの不足(強み・弱みのフィードバックがない、評価項目が明確でない)などが挙げられます。このジャパン・パッシングは今も続いているのですが、いかに補正するかが10年間の私のミッションでした。

「組織変化」と「意識」の問題

RS(ローテションスタッフ=本社採用人材)の意識として、NS(ナショナルスタッフ)に対する軽視や日本発ビジネスモデルへの無意識的固執、さらに本社営業部局出身のRSと経理パーソンRSなどのHR・HRDスキル不足が問題となり、中長期的視野からの HRD意識創生・HRDスキル開発の必要性が生じました。また「バイリンガル化」への意識不足やスキル不足、NS自身の意識の壁(サポートスタッフの限界)なども問題となっていました。2000年と比較し、2009年と比較し、2016年と比較し、それぞれ組織的HRD意識とHRDスキルはどの程度進化したか。結論としては、定期的なENGAGEMENT SURVEY が有効であるということがわかりました。そして本社と海外オフィスのENGAGEMENT(%)の差異にも注目しました。

グローバル人事の新たなミッション

三菱商事はグローバル化をずっと行ってきたのですが、実は本社にグローバル人事部が設置されたのは、2012年とつい最近のことです。 これに呼応し、アジアでまず最初に実施したのは採用のやり直しでした。誰を新規に採用するのか、地域統括と国別に再定義した結果、「戦略マネージャー」、さらに戦略オフィサーの候補者を採用・育成。これらを採用し確保し続けることで、2020年までにアジアは大きく変わっていくと思います。そのために必要となるのが、RHQ(地域統括)のコンサルティング機能です。結論としては、新規人財を採用・確保しながら国別の人事マネージャーのネットワークを構築すること、そして本社からの駐在員を変えていくこと、それをどこまでできるかが鍵になります。

しかし採用に彼らを巻き込むことは簡単ではありません。なぜなら三菱商事を含む日本企業の雇用ブランドが低いからです。ただし日本贔屓の人もたくさんいたので、そういう人を採用できるのではないかということで「ASEAN CAREER FAIR JAPAN」に5年前から開催し、これまでに居なかったレベルの優秀な人材を10人以上採用しています。

グローバル人材輩出のための7つのポイント

ここまでが結論です。ここからは各論について7つに絞ってお話します。

【1】海外における自社ブランドの再認識とブランド強化のための施策が必要

フォーブスの『グローバル2000』を見ると、アメリカや中国の企業が上位を独占する中、2013年のランキングでは日本企業も6社ランクインしています。そうした中、三菱商事はと言うと110位につけており、2015年には131位まで下がりました。これを何とか50位以内までに引き上げることが個人的目標でしたが、今後どうなりますか。

【2】自社固有のノウハウを如何にしてバイリンガルでグローバルに共有するか

『三菱商事インターナルマガジン』というべき社内向けの雑誌をバイリンガル化しました。2004年でしたが、私はこれが三菱商事を大きく変えたと信じております。さらにホームページをトライリンガル化。これによりバイリンガル・コンピタンスおよびトライリンガル・コンピタンスを確立しました。

【3】国籍を問わず、全ての人財を共通の視点で観る――組織開発の要諦

スキルギャップを埋めるためには、新たなGHRDの考え方を築く必要があるでしょう。そしてスタッフからマネージャーまでの道と、マネージャーから戦略マネージャー、また戦略オフィサーまでの道を実例を創出しながら「見える化」する必要があります。ここでいう戦略マネジャーは、各国発の戦略を創生でき、次世代を育ててゆける人財群です。そして戦略マネジャーがGMレヴェル(=戦略オフィサー)になったとき本格的な組織変化が看取されます。

【4】地域レベル・国別での組織変化を促進する――グリージョナル手法

各組織の「過去・現在・未来」の組織変化を分析し、新たなリソースマネジメントを企画・実施する。3年先、5年先にリソース(ヒト、モノ、カネ、情報)をどうマネージしてゆくのか、そのための戦略をどうするのかを議論していきます。ビジネス種別と人材ポートフォリオを再考。この場合、各オフィスで非日本人のプロ人材がどこまで戦略策定のプロセスに組み込まれているのかが重要な論点になります。

【5】地域レベル・国別での組織変化をモニターし、測定する――HR AUDIT

常に組織の状況を見ながら「健康診断」をしていく必要があります。このためにアジアでは約100人のネットワークを作り、HR AUDITを定期的に実施。拠点長や社長と話しながら、メニューを作り、実行していく。そして定期的にENGAGEMENT SURVEYを行い、アクションプランの企画実行とそれによる組織変化をモニタリングしていくという流れです。

【6】地域レベルでの戦略マネジメント開発を促進する――階層別研修が有効

スタッフ→プロフェッショナル・スタッフ→マネージャー→シニアマネージャー→戦略オフィサーという段階でマネジメント研修を実施。海外発のビジネスを実行できる人材を育てていきます。

【7】グローカルマネジャーを順次養成する――グローカルからグリージョナルへ

グローカルマネジャーを順次養成して、いかに彼らのうちの上澄みを辞めさせないか。例えばインド人が国内出向は無論のこと、パキスタンや中東で活躍するという事例が実際に起きています。それを広げていくことで、多くのナショナルスタッフがリージョナルからグリージョナルな戦略マネジャー、そして戦略オフィサーになっていく。それを早急に進めることが重要です。

以上の7つの施策の継続的励行を通じて、戦略マネージャーを養成し、戦略オフィサーを経てダイレクターにしていくことが我々の目指すところです。時間の制約から駆け足になりましたが、本日はありがとうございました。

【第2部/会田秀和氏】 Why・What・Howがグローバル能力開発の鍵

P&Gのグローバル能力開発において重要な鍵になるのが、Why(ビジネス理由)、What(モデル・ビジョン)、How(体系的な取り組み)の3つです。本日は、これらについてお話したいと思います。

HRに求められることは一体何か。そもそも会社が必要としていることはビジネスを伸ばすこと、利益を上げることであり経営陣はそのために戦略を立てています。つまり経営戦略を達成するための貢献、それこそがHRに求められていること。ビジネスに連携していなければ意味がありません。これが1つ目のWhy(ビジネス理由)です。

続いて2つ目のWhat(モデル・ビジョン)。私たちはどこに到達するのですか。ハワイですか? ベトナムですか? そのビジョンが明確でないと戦略を達成することはできません。

そして最も大切なのが3つ目のHow(体系的な取り組み)です。日本企業の典型的なやり方は「教育!教育!教育!」ですが、教育だけしても人間は変わらない。相対的、体系的なテコ入れが必要であり、これは環境を変えていくということです。

P&Gの日本事業戦略: いかに勝つか?

日本事業戦略にはいくつかのポイントがありますが、本日は最も大事な2つのポイントをご紹介します。1つ目は、絶え間ない高質の新商品導入 (Innovation)です。さまざまなイノベーションを起こすことで、私たちは成績を伸ばしてきました。では、そのためには何が必要でしょうか。それが2つ目のポイント、戦略実践に必要な組織と能力の構築です。そこで私たちはグローバル能力が必要であるという結論に至りました。

では、なぜグローバル能力が必要なのでしょうか。イノベーション戦略の実践に必要な能力、グローバルキャリア開発に必要な能力、成果主義文化創造に必要な能力。これらは勝利に必要な組織能力です。

日本企業の現状と誤解

日本企業を取り巻く現状を見てみると、グローバル能力=英語力という誤解があります。もちろん語学力も大切ですが、それだけではありません。また、グローバル能力を明確に定義している会社がないのも問題です。そしてビジョンがなければ達成できません。

では日本人の強みと弱みは何でしょうか。我々が分析したところ、強みはたくさんあります。例えば問題解決力。日本人はロジカルシンキングができるので、問題が起きたときに非常に強いです。そして実践力。これは世界一でしょう。さらにチームワークや道徳性なども素晴らしいです。このように日本人には優れた特性がたくさんある一方で、弱みも少なくありません。例えば、グローバルコミュニケーション。そして戦略的志向。これは本来3〜5年のタイムフレイムの中で考えることですが、日本人は6〜12カ月程度の枠の中でしか物事を考えられない。さらに積極的なリーダーシップも持っていません。

P&Gグローバル能力モデルとは

こうした事実に基づいて、P&Gではグローバル能力モデルを設定しました。ピラミッドの底辺には、専門知識・技術があります。HRであればHRの能力、ファイナンスであればファイナンスの能力、これがなければ世界に出ても使いものになりません。しかし多くの日本企業は、ファイナンスに3年、営業に2年、HRに3年……と、人材をたらい回しにしている。これでは専門知識・技術がつくはずがありません。

続いて2番目の層にはグローバルコミュニケーションがきます。グローバルコミニケーションは英語力以上のものです。私たちは単に英語を話せるようにするだけではなくて、行動を変革させなければなりません。私は山形出身で、もともと口数の少ない人間でした。今このように皆さんの前でプレゼンできるようになったのも、トレーニングによって身につけたスキルなのです。では英語に必要なものは何か。明確な意思表現、直接的な意思の伝達、合意と反対意見、理論と明確な理由付け、英語の世界では沈黙は金ではない、日本的な英語は有効ではない、過度な気配りは障害になる……などが挙げられます。

3番目の層には戦略的思考・行動がきます。「何を達成するか? 目標とビジョン」「どこで戦うのか?」「マーケットでいかにして勝つのか?」「戦略実施に必要な能力は何か?」……以上が戦略の構成要素です。これを踏まえることで戦略的思考ができるようになります。

続いて4番目の層が異文化対応力。そして一番上の層がリーダーシップです。

リーダーシップ vs マネジメント

ここではリーダーシップとマネジメントを比較してみます。日本にはマネジメントをトレーニングするさまざまな仕組みがありますが、リーダーを育成する仕組みはありません。組織にはリーダーシップとマネジメントの両輪が必要です。ではリーダーシップとは何なのか。ビションと戦略の構築と社員への展開、戦略的組織能力の育成、組織文化の変革、変革の主導、社員の活性化と意識の高揚、ビジネスチャンスの発見、新しい方法を発見すること、 障害を取り除くこと、新しいことを学習と享受……などが挙げられます。一方マネジメントは、ビジネス目標を管理・達成する、アクションを計画して管理する、 企業のインフラを構築する、プロジェクトを管理する、KPIを管理する、成績を評価する、 ポリシーの管理、報酬の分配、Resourceの分配、役割とプロセスの管理、報告などです。

体系的グローバル能力開発システム

P&Gでは体系的なグローバル能力開発システムを構築しました。今回はその事例をご紹介します。まずは専門知識育成システムです。私たちはたらい回し的な人材育成はせず、専門別に人材を育成し、深さと幅を広げていきます。具体的な内容としては、部門別キャリアや、専門知識教育、専門知識評価・査定、昇格基準、明確なJDとスキル習得、上司の役割などです。私たちは専門性、つまり匠の技がないとイノベーションは起こせません。

グローバルコミュニケーション育成システムでは、社内用語を英語にしたほか、部課長昇格基準、英会話力検定試験(EPA)、採用基準、英語教育などを徹底させました。その他にも戦略的思考育成システム(P&Gコンピテンシー、戦略的思考評価、戦略的思考教育、 戦略シンポジウム、昇格基準)やリーダー育成システム(リーダーシップコンピテンシーモデル、リーダーシップ評価と査定、昇格基準、リーダーシップスクール、トップタレント制度)など、さまざまなシステムを作ってきました。

バランスが貴方を世界一流にする

以上、Why(ビジネス理由)、What(モデル・ビジョン)、How(体系的な取り組み)の3つに加え、もう一つ大切なのが、バランスです。『ソフト(リーダーシップ、異文化対応力、グローバルコミュニケーション)』と『ハード(専門知識、戦略的思考)』の2つの面がバランスよく融合しないと、世界に通用する人材は生まれてきません。私たちの目的は、海外に出てもヴァイスプレジデントやゼネラルマネージャーになれるような優秀な人材を育てること。そのためには日本的な手法から脱却して、最初からトップタレントを設定し、彼らに集中した教育を実施することが重要でしょう。そうした取り組みを継続させた結果、P&Gは現在に至っています。ぜひ皆様もご参考にしていただければ幸いです。ありがとうございました。

松田 豊弘氏

三菱商事株式会社
グローバル研修・採用担当オフィサー(元 同社アジア大洋州統括付アジアHRDオフィス室長)
松田 豊弘氏

1981年三菱商事(株)法務室入社、83年本社人事厚生部、89年ジャカルタ駐在事務所総務人事課長、96年本社国際人材開発室、98年在香港グローバルヒューマンネットワーク社総経理、2000年本社業務部国際人材開発チーム、08年HRDセンター長代行(兼)国際人材開発室長、09年在シンガポールアジアHRDオフィス室長、12年アジア大洋州統括付アジアHRDオフィス室長、15年 シンガポールヒューマンキャピタル賞ベスト10入賞 (ショートリスト)、16年 HRエクセレンス賞(3部門で銅メダル)


会田 秀和氏

元P&G米国本社 組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント / AIDA LLC代表
会田 秀和氏

元P&G米国本社 組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント / AIDA LLC代表 プリガム・ヤング大学マリオットスクールオブビジネスで組織行動学修士を取得後、オハイオ州シンシナティ市にあるP&G 本社に入社。同社において、人事および組織デザインの社内プロフェッショナルとして、P&G フィリピンの改革、P&G ジャパンとP&G コリアのグローバル化、P&G グレーターチャイナの改革などを手がける。現在、AIDA LLC(Aida Consulting LLC)代表として経営戦略、組織デザイン、戦略的人材マネジメントに関するコンサルティングを行っている。他にアストラゼネカ(株)の社外取締役、ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授(組織行動学)。著書に『P&G 流 世界のどこでも通用する人材の条件』がある。


須東 朋広氏

多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授
須東 朋広氏

2003年、最高人事責任者の在り方を研究する日本CHO協会の立ち上げに従事し、事務局長として8年半務める。 2011年7月からはインテリジェンスHITO総研リサーチ部主席研究員として日本的雇用システムの在り方の研究から中高年の雇用やキャリア、女性躍進、障がい者雇用、転職者、正社員の研究活動を行ってきた。 2016年7月から、今までの研究活動から組織内でなんらかの理由で声を上げられない社員が、イキイキ働くために、一般社団法人組織内サイレントマイノリティを立ち上げる。 同社代表理事として現在に至る。そのほか、専修大学 非常勤講師、HR総研 客員研究員を兼任。