【HRサミット2016】日本最大級の人事フォーラム 5月11日・12日・13日開催!

グローバルで戦えるリーダーをいかに育成するか

EY税理士法人 ピープル アドバイザリーサービス部
シニアアドバイザー 山口岳男氏

グローバルポジションから日本人がいなくなる!?

人材育成のポイントは3つあると思います。1つは「育てる意志」です。これは、どのように人材を育てていくかという会社としてりの施策に関わる部分です。2つ目は「育てる場」。その人達を育てていくための場の提供ということですね。そして3つ目が「育ちたいという思い」──、つまり、本人がどのように考えるかです。私は本人の考えが非常に重要だと思っています。いくら会社が制度やプログラム、場を用意しても、最後は本人がどうなりたいかにかかってくると思うからです。

今日は、この3つのうち、最初の「育てる意志」と最後の「育ちたいという思い」について、主にお話しさせていただきたいと思っています。加えて、ここにいるみなさんは人材育成に責任を持つ立場の方がほとんどだと思いますが、そういうみなさん自身が本気でグローバル人材になりたいと思っているのかということも問いたいと思います。私はHRもグローバルで戦う人材にならないと駄目だと思うからです。

では、まず私の感じている危機感についてお話ししたいと思います。Thomas Friedmanが『フラット化する世界』のなかでグローバリゼーションについて次のように説明しています。 極簡単に言うと、1492年のコロンブスのアメリカ大陸「発見」から1800年頃までのグローバリゼーション1.0は国がプレーヤーだった。1800年から2000年のグローバリセーション2.0では企業がプレーヤーになった。そして、2000年以降のグローバリゼーション3.0は多種多様な個人までもが主要プレーヤーとなって協力し合い、競争している──と。

今、人材が二極分化してきていると思います。グローバル人材とローカル人材の2つです。ただし、企業にとっては両方が必要ですから、どちらかが偉いという話ではありません。
そして、もう一つ、ポジションについてもグローバルポジションとローカルポジションの二極分化が起きています。オペレーションがグローバル化していくと、あっという間にグローバルポジションが増えます。これもどちらの価値が高いという問題ではありません。

私の危機感がどこにあるかというと、日本人がグローバルなポジョンを取れなくなってきているのではないかということです。たとえば、外国企業を買収して組織のなかに組み込んだ場合、その全部を日本人以外がオペレーションするようになってしまう──。実際、そんな例を知っています。ある企業が海外の企業を買収して、新しい事業を行うことになりました。最初はほとんどの部署を日本人がマネジメントしていたのですが、5年後には日本人がマネジメントする部署は2割程度にまで減ってしまったのです。

企業価値が上がれば、マネジメントをするのが日本人であろうとなかろうと関係ないという人もいるかもしれません。しかし、私はそれでいいのかなという気がします。

私も海外で働いた経験がありますが、その時にグローバルポジションで仕事をするのはメジャーリーグでバットを振るようなものだと感じました。会社からいわれたからちょっと行って来るというレベルでありません。野球の世界で、日本人でもメジャーリーグに行く人がいるわけですから、我々ビジネスをする人も同じような覚悟をもって日頃から鍛練をする人がいてもいいはずです。要するにチャレンジングな世界にワクワクする人をいかに育てるかということです。

人を育てる仕組みは必須 しかし、それだけでは駄目

では、会社がどういうことをやったらいいかですが、重要なのはビジネス戦略や目標と人材をフィットさせることです。
戦略や目標があり、それを実現させるための組織や人材とはどのようなものかというビジョンがきちんとあるのが大前提です。戦略や目標を実現するのに一番ふさわしい人はどのような人か、一番ふさわしい組織はどのようなものか──、それがなくては人材開発など考えられません。

具体的に何をやるかというと、やはりグローバルで適所適材を図ることです。つまり、戦略上必要になったポジションにどういう人をはめていくか、あるいは育てていくかです。しかし、これをグローバルで行おうとすると、とたんに難易度が上がります。多くの日本のHRは育成やアセスメント、人の見方などの方法論を持たないできてしまったからです。

マネジメント・バイ・ウォーキング・アラウンドという言葉があります。これまで日本の人事は会って話して、どういう人かを掴むという方法でやってきました。それは決して間違いではありません。この職場のスーパースターはこの人ということをちゃんと把握することができていたからです。

しかし、グローバルに拡大するとそういうやり方では無理です。グローバルでは人事の現場主義は通じません。したがって、どこにどんな人がいるか把握するための方法論や仕組みが必要です。人を見る仕組み、発掘・育成する仕組みを作って、人材を育てていかなくてはなりません。

より具体的には、そのポジションで必要となる要件を書き出し、それに合う候補者を見つけ、人財委員会などの場で、育成計画を立て、育てていくということになります。
その際、ポイントは今いる人の代わりになるのは誰かというアプローチではなく、3年後や5年後のポジションを想定して、求められるスキルや経験を考え、それにフィットする人材を発掘・育成するという点です。これはビジネス戦略そのものです。

ただし、仕組みができればグローバルリーダーが育つかというと、そうではありません。仕組みは絶対に必要ですが、それだけで人が育つわけがありません。問題は誰が育てるかです。
育てるという行為はひどくアナログな行為で、人と人とのインタラクションしか方法はありません。人財委員会と次の人財委員会の間は半年とか1年くらいだと思いますが、その間にどれだけインタラクションがあったかです。それがないと無理です、絶対に。

みなさんの会社では何人のリーダーが必要で、何人トレーニングすればよいかを考えていますか。昔のように5年、10年かける余裕はないわけですから、スピードを上げることも考えなくてはなりません。その点からも直接的なインタラクションというものが絶対に必要だと思います。

レポートはまだ続きます。気になる内容の続きはダウンロードしてお楽しみください。

協賛:ワークデイ株式会社

山口 岳男氏

EY税理士法人
ピープル アドバイザリー サービス部
シニアアドバイザー
(元日立総合経営研修所 取締役社長)
山口 岳男氏

1975年に日立製作所に入社以来、本社、事業部において人事勤労部門で人事管理に従事。その間、米国勤務を二度経験(日立アメリカ社ニューヨークで1985年から90年、日立グローバルストレージテクノロジー社で2003年から2009年まで人事責任者)し、企業のグローバル化とこれを支えるグローバル人事についての見識と知識、幅広い経験を有する。2009年帰国後、日立のコーポレートユニバーシテイである日立総合経営研修所の社長をつとめた後、2011年より、日立本社で人財統括本部副統括本部長(グローバル人財戦略担当)をつとめ、2014年4月から日立総合経営研修所の社長に復帰。2016年3月退任。4月より現職。