グローバル経営層スタディーから見えてきたもの〜人事の課題とめざすべき方向〜

「HRサミット2014」6月4日(水)13:30〜14:30にご登壇される日本アイ・ビー・エム株式会社の大池一弥氏に、同社が世界の経営層に実施した大規模なアンケート調査の概要と、そこから見えてきた日本企業の人事が抱える課題、それを乗り越えるためになすべきことについてインタビューしました。

世界の経営リーダーたちにインタビュー重視の調査を実施

まず、御社が実施された経営層スタディーの概要について教えていただけますか?

弊社では2003年から世界の経営層の戦略や具体的な取り組みについて、インタビューを重視した調査とその分析を行ってきました。世の中には統計的なデータはありますが、インタビューによって世界の経営のリーダーたちの考え方、重視する戦略などを直接的にお伺いする調査はまれです。したがって、このスタディーは様々な企業に、意思決定の参考にしていただけるものになっていると思います。今回(2013年)の調査には世界70以上の国の企業に参加いただき、通信から流通、製造、金融、公共分野まで約20の主要な業種をバランスよく網羅しており、非常に信頼性の高い調査になっています。

日本企業へのインタビューは全体でどのくらいを占めていますか?

全分野のインタビュー数がグローバルで4,183に対して、日本企業は631です。CHROについて見るとグローバルで342に対して日本企業が82と、非常に大きな割合を占めており、国別では最多、アメリカより多い企業にご協力いただいています。

今回の最新の調査で大きく変わった点はどこでしょうか?

2012年までは、この年はCEO、この年はCEOとCHROとCFOといったように、経営層の担当分野をひとつから多くて3つに絞って実施していましたが、2013年にはこれを、CEO、CHRO、CFO、CIO、CMO、CSCOすべてに行いました。これによって企業の方向性が複数の分野からの視点で見渡せるようになると同時に、CEOと各CXOとの関わりが包括的かつ具体的に見えてきて、これまで以上に興味深い調査になっていると思います。変化の激しい時代には、有効な施策をより大規模に、よりスピーディーに実行する必要があるため、高業績の企業ほどCXO間の連携が緊密であるといったこともわかります。

ビジネスの変化が企業の体制とHRの仕事を劇的に変える

CHROへの調査結果を拝見すると、HRという分野の焦点が大きく変わってきているように見えます。

注目されるのは、経営戦略の中で顧客価値・顧客体験が大きなテーマになってきており、人事もこれに積極的にコミットしていかなければならないということです。人事として経営に貢献するため、顧客価値・顧客体験の向上をどう実現できるか、そのために必要な組織、人材、能力をいかに創り出すべきかを考える必要があるのです。

顧客価値・顧客体験がクローズアップされるようになった背景には何があるのでしょうか?

ITの普及・進化により、ビジネスにおける顧客の行動という現実とデータが融合してきたことがあります。つまり企業はますます顧客とダイレクトにつながり、個々の顧客が求める価値を提供しなければなりません。たとえば、従来は顧客を若い女性やシニア男性といったセグメントで定義していましたが、今は個々の顧客をダイレクトに把握し、「あなたはいつ、この店でこの商品を購入してくれた、あるいはこのサービスを利用してくれたから、次はこんな商品・サービスはどうですか?」といった働きかけができるわけです。そうなると、お客さまとの接点がどんどん「個」にフォーカスされ、必要になるデータもその分析能力もかなり変わってきます。このようなビッグデータの分析に、HRも積極的に関わっていく必要があるのです。

アナリティクスから導き出されてきたテーマを実現できるような人や組織を作っていくのがHRの役割であると?

どんなビジネスも実行するのは人ですから、必要なデータを作り、そこから有効な示唆をくみ取り、ビジネスに活用できるタレントの育成が求められます。さらに、そうしたタレントが活躍できるような組織への変革、そのための企業風土や意識の改革もHRの仕事です。

こうした新しいテーマにおいてHRの役割を果たすために必要なものは何でしょうか?

まずHRとして科学的なデータを扱える体制を整えることです。さらにコミュニケーションやコラボレーションのスタイルをより進化させるために、ソーシャルやモバイルなどの新しいシステムの仕組みを活用する必要があると思います。

御社では、クラウド、ビッグデータ、モバイル、ソーシャルといった領域に注力していこうという動きがあるようですが、HRも無関係ではいられないということでしょうか?

確かに、IBM全体としてクラウド、アナリティクス(ビッグデータ)、モバイル、ソーシャル&スマーターコマースを4つのイニシアティブと位置づけ、グローバルでフォーカスしています。ソーシャルへのシフトはIBMもまだ実験段階ですが、世の中の潮流を鑑み、色々な試行錯誤を繰り返しているところです。

インタビューはまだ続きます。
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  • 日本アイ・ビー・エム株式会社
    グローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティング・サービス 組織・人財変革 パートナー
    大池 一弥 氏

    精密機械メーカーの技術研究所からPWCにてヒューマン・キャピタル・マネジメント領域の担当パートナーを経て、現在、IBMグローバル・ビジネス・サービス 戦略コンサルティング・グループにおいて、組織・人財変革の日本におけるリーダーを担当。経営戦略に基づく人事戦略・人事制度の策定はじめ、企業文化の変革やタレント・マネジメント・システムを含む人事システムの設計・構築まで深い経験を有する。ITのノウハウと人事に関する動向や調査の知見に基づく提案によってお客様への価値をお届けする。「労政時報」、「人材教育」など人事関連情報誌への寄稿多数。