6月4日 (水) 16:10 - 17:10(提供:サムトータル・システムズ株式会社)

“ものづくり”から“ものこと&ひとづくり”へ

Open Innovation時代の企業のGlobal人材戦略

東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授 田中芳夫氏

Open Innovationの必要性が叫ばれて10年——。この間にICTはすさまじい速度で進歩普及し、旧来のビジネスモデル、すなわち品質・コスト・大量供給という仕組みから抜け出た、新たな価値提案をする企業が世界で台頭してきています。これに対して日本の産業は、ICTによるグローバルなビジネス展開の波に乗りきれておらず、いまだに他国が切り拓くICTインフラを部分的に享受する“ものづくり”に留まっているのが現状です。世界ではOpen Innovation も従来の形からOpen Innovation 2.0へと進化しつつある中、日本は果たしてどのような戦略を取るべきなのか。そしてどのような人材を育てる必要があるのでしょうか。東京理科大学大学院・田中芳夫教授に解説いただきました。

なぜ日本ではイノベーションが生まれないのか
近年ようやく日本でもOpen Innovationの必要性が語られるようになりましたが、現状はまだまだ浸透しておらず、日本発のイノベーションはほとんどないに等しいと言っても過言ではありません。ではなぜ日本においてイノベーションは生まれづらいのでしょうか。理由は、ダイバーシティ(多様性)に乏しく、単一の価値観に基づいたモノカルチャーな社会が占める割合が高いからだと考えられます。学校を卒業後の22〜60歳の日本人男性によって、社会のさまざまな仕組みが定められ、システムが設計され、製品が作られ、売り方も生み出され、さらに自前で製造され、販売されるというのが、日本社会です。多様な人材や世界の知恵を集めるといった発想がない。言いかえれば、挑戦者・異分子の存在を絶対に許しません。異分子でないと存在価値がない外資系企業とは正反対のことです。Open Innovationを進めていくうえでも、日本は今後、挑戦者・異分子の存在をいかに育てるかが大きな課題となります。
アメリカのイノベーション戦略〜パルミザーノ・レポート〜
「イノベート・アメリカ(Innovate America)」は、2004年にアメリカの産業界、学界、政府、労働界を代表する400名以上のリーダーたちが15ヶ月かけて作成した国家イノベーション戦略の報告書で、委員長のIBM社長の名前をとって「パルミザーノ・レポート」とも呼ばれています。今後25年間のアメリカの競争力強化のために、何に重点を置くべきか。ここで提案されていること——それは「人材」、「投資」、「インフラ」の3点です。
  • 【1】人材養成・確保
    多様な創造力のある高度な技術知識を有し、訓練を積んだ人材を輩出する国家イノベーション教育戦略の策定。次世代イノベーターの養成教育の強化。グローバル経済で競争力のある労働者養成の教育など。
  • 【2】イノベーションのための投資
    研究開発投資の増強、リスクテイキングと起業家活動の強化、長期的な研究開発戦略の支援などのイノベーションの金融的側面について提言。
  • 【3】インフラ整備
    イノベーターを支援する社会基盤インフラと政策インフラについて提言。情報、交通、医療、エネルギーのネットワークと知的財産保護、企業規制、イノベーションのステークホルダー間の協力のあり方など。
“ものづくり”から“もの・ことづくり”へ
これまで日本には、「良いものを早く安く作れば、お客さんは買ってくれる」という前提がありました。こうした姿勢そのものは正しいと思います。しかしものづくりは機械化によって、誰でも真似できるようになりました。同じものが、世界のさまざまな場所や企業で実現できる状況に変わってきているのです。よって品質や価格、納期だけを競うようなものづくりの価値観にこれ以上固執しても、成果を得にくいでしょう。これからの時代は、ものだけでなく、そこに新しい仕組みという付加価値をつけた人が勝ちます。単に“もの”だけを作るのでなく、“もの・こと”を作るという発想です。そしてそのためには、やはり多様な人材が必要になります。これを踏まえ、2010年に公益社団法人経済同友会が「もの・ことづくり委員会」を発足。世界でビジネスに勝つための“ことづくり”と、そのための人材育成(“ひとづくり”)に関する提言をまとめました。
レポートはまだ続きます。気になる内容の続きはダウンロードしてお楽しみください。

  • ことづくりとは?
  • “もの・ことづくり”に求められる要素
  • “ことづくり”のための“ひとづくり”
  • Open Innovation時代に求められる人材像

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提供:サムトータル・システムズ株式会社

講師紹介

  • 田中 芳夫

    東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授
    田中 芳夫氏

    1973年東京理科大学工学部電気工学科卒業、同年、住友重機械工業(株)に入社,Online system設計などのシステム開発に従事、1980年に日本IBMの研究開発製造部門に入社。世界向けの製品・サービス・ソフトウエアの開発、マネージメント、および 副社長補佐。1998年にIBM Corporation R&D Asia Pacific Technical Operation担当。2001年研究開発部門 企画・事業開発担当理事。2005年 マイクロソフトCTO就任。2007年 (独)参与、青山学院大学大学院ビジネス法務客員教授。 2009年東京理科大学大学院教授 、国際大学GLOCOM 上席客員研究員,日本工学アカデミー会員