ソフトバンクがRPA事業に参入。ホワイトカラー業務の効率化と生産性向上が加速(前編)

ロボットによる業務効率化の形「RPA」(Robotic Process Automation)に注目が集まっている。従来、企業におけるロボットの導入はブルーカラー労働者の業務を代行するものとしての印象が強かった。これに対してRPAは、ホワイトカラー労働者のバックオフィス業務を代行する役割を果たす。
2017年10月19日、ソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンク)はRPA ホールディングス株式会社(以下、RPA社)との協業により、法人顧客向けに「SynchRoid(シンクロイド)」の提供を開始すると発表した。

ロボットを活用し、ホワイトカラーの業務効率と生産性を上げるRPAとは

RPAとは、「Robotic Process Automation」の略で、「ソフトウェアロボットによる業務自動化」の取り組みを指す。ソフトウェアロボットが、企業のバックオフィスにおけるホワイトカラー業務を代行するもので、業務の処理手順を登録するだけで、入力、登録、検索、抽出、集計、加工、データチェックなどの単純な事務作業や膨大な書類業務などを自動的に処理することができる」とされている。
ホワイトカラー労働者が、パソコン上で行っているさまざまなルーチンワークを、ノンプログラミングでデジタルレイバーに覚えさせ、働かせられるこの技術は、ビッグデータやIoTを含む第四次産業革命を担う技術のひとつだと言えるだろう。イギリス・オックスフォード大学の研究機関が発表したところによると、RPAの技術により、10年後、現在ある仕事の45%がなくなると言われている。
こうした、ワークスタイルを大きく変える可能性のあるRPA事業に、様々な業態で日本経済をリードするソフトバンクが参入するということは非常に興味深い動きであろう。


ソフトバンクとRPAホールディングス協業の経緯と狙い

会見の冒頭、ソフトバンク株式会社 代表取締役 副社長 兼COO 今井康之氏は、ソフトバンクとRPA社がRPA事業において事業提携するとともに、ソフトバンク自体が事業参画することを発表した。
働き方改革が叫ばれる中、ソフトバンク内でもどう働き方改革を進めていくか議論があり、同社では3年ほど前からRPAを採用し、効果が生まれてきたという。そこで他社にもぜひ展開したいとの思いに至った。すでに多くの企業からの反応があり、今後、間違いなくRPAは様々な面で企業に貢献できるとした。

RPA社は、RPAという言葉が一般化する前から「BizRobo!(ビズロボ)」をはじめとしたRPA事業を展開してきたRPAテクノロジーズ株式会社を傘下に持つ。RPAホールディングス株式会社 代表取締役 高橋知道氏は、今回の業務提携の大きなポイントとして「情報革命で人々を幸せに」というビジョンが一致したと話す。
また、RPAは今後、パソコンやインターネット、スマートフォンと同様、この10年で広く普及し、一般化するツールになるのではないか。そのなかで、時代における情報革命を常にリードしてきたソフトバンクと、RPA分野におけるリーディングカンパニーであるRPA社が、お互いに強みを出し合い、来るべき人工知能・ロボット社会の普及・促進をリードしていくのが、今回の協業の意義だと高橋氏は語った。


「仕事から意味のない労働を徹底的になくす」RPAの取り組みと市場動向

次に、RPAテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 大角暢之氏が動画を交え、RPAの概要と市場動向についての説明が行われた。
RPAテクノロジーズは、ロボットの稼働数や、専門RPA事業数において日本一の規模を誇る企業で、その実績により、ガートナーの 「Cool Vendors in Business and IT Services, 2017」にも選定されている。

動画では、実際に交通費の申請業務において、RPAを利用した際の様子を紹介。人間の経理担当者が、提出された金額と実際の交通費が一致するか、インターネットの乗り換え案内サイトなどを参照しながらチェックを行い、社内の経費システムに入力するという一連の作業を行うと、1件につきおよそ3分かかる。20件の交通費を調べた場合、およそ1時間になる計算だ。これをRPAが行った場合、20件の経費申請にかかる時間は実に21秒。人間と比べると180倍の作業スピードである。システムを導入するわけでないので、既存の業務システムの変更が不要である点もポイントだ。

実際にRPAを導入したイメージによると、80人のオフィスが13人にまで縮小されるという。データのチェックや入力などほとんどの仕事は、パソコンやサーバーのなかでRPAが行い、人間は総合的な判断や管理をする。大角氏は、「人間をルーチンワークから解放することを目指した経営技術だ」とした。

BPR(Business Process Re-engineeringの略。既存の業務内容、業務フロー、組織構造、ビジネスルールを見直し、再設計すること)という手法もあるなかでRPAを使うことのメリットについて、両者の技術の使い分けについても説明。BPRでは、粒度の大きい業務プロセスを、時間をかけて少しずつ本質的に再設計していくが、変動の激しい最前線のビジネスシーンにおいては、BPRだけではスピード感を持って対応できない。そこで、RPAを並行的に利用し、暫定的に業務を改善していくのがポイントになるということだ。

あるコンサルティングファームによると、RPAの一般化により、あらゆる産業が再定義、再開発され、全世界では給与計算ベースで700兆円、日本国内では70兆円の産業規模になるといい、今回の協業には、大きな事業機会があると言える。さらに、日本は人口の減少、すなわち労働力不足の問題に直面しており、「生産性向上のためには、RPAは必須の技術になると考えられる」と大角氏はつづけた。

今回の2社協業で目指すのは、単なるツールの販売ではなく、RPAを使って新規事業を創造していくことにあるという。
ソフトバンクは、マーケットインしていくうえでの営業力と、購買意欲の高い顧客、デジタルトランスフォーメーションに対して意識の高い顧客を多く基盤として持っている。また、サービスの展開に先立ち、自社内でRPAを導入しており、その実験ノウハウを計画的・戦略的に事業に活かすとしている。さらに、同社はICTカンパニーであることから、豊富なスケーラビリティを展開できるのも強みだ。一方のRPA社は、10年の実績を持つ日本におけるRPA分野のリーディングカンパニーとしてプロダクトを担当、従来のモデルに加え、よりライトに使えるサービスを展開していくという。

大隅氏は最後に「今回の協業によるRPA事業展開によって、仕事から意味のない労働を徹底的になくし、個人・法人で自己実現・自己表現できるような世界をいち早く作っていきたい」という言葉で締めくくった。