「人事のミライ」に議論白熱!ハーバードビジネススクールで日本発の採用ツールGROWが研究テーマに ~人工知能を使った採用は是か非か~

アメリカのハーバードビジネススクール(以下、HBS)で、人材採用の世界における先験的な事例としてInstitution for a Global Society株式会社(代表取締役・福原正大、以下、IGS)が提供するGROWを題材に講義が行われた。
人材育成・組織的行動を研究するイーサン・バーンスタイン准教授は人材採用の世界における先験的な事例として日本で生まれたGROWに注目し、これをポール・マッキノン専任講師と共に教える人材管理クラスのケーススタディとして検証。これはHBSの人事の授業で人工知能が扱われる初のケースであったという。授業ではIGS代表の福原氏も参加し、学生からの質問に応答しながら人材採用・養成への人工知能活用について意見交換がなされた。

急激に利用者数を伸ばす、人工知能を活用した採用ツールGROW

バーンスタイン准教授は新入社員の採用時の選抜に「自分たちの直感と人工知能による分析の、どちらを信用すべきか」という問題を学生たちに投げかける。
「自分が人事担当者だったら、使わない手はないと思うはず。大企業は事業の成功に繋がる人材を確保するために出来るだけ多くの優秀な応募者を集めたいわけで、彼らをどうやって素早く選考するかという課題が解決される」
「人工知能に十分なデータを処理して学習させるまでは、頼りたくないかも」
学生は次々と手を挙げて意見を交わした。

今回、白熱する議論の対象となったGROWは、人工知能を活用した人材の採用・育成・評価サービスである。IGSが2016年に始めたGROW事業は、学生と企業の的確なマッチングを目的とし、携帯アプリで無料登録した学生に、論理的思考力や創造性といった様々なコンピテンシー(能力)を測るサービスを同社が独自に開発した測定方法で提供している。測定結果をビッグデータと共に人工知能に分析させることにより、企業で将来活躍する学生を的確に選出する仕組みとなっている。学生の評価に友人のフィードバックを取り入れていることが特徴で、学生はそれを参考にして自分の能力に磨きをかけることができる。また、評価する友人らもアプリで測定されるため、彼らの鑑定者としての信頼性も能力査定の要素として加味される。
福原氏によると、人工知能は膨大な数の応募書類に素早く目を通すことができるため、企業は必要とする能力を秘めた人材を掘り出しやすくなるという。
GROWの登録者数は2016年12月から今夏までに2,000人から74,000人へと急伸し、日本を代表する大企業でも社員の採用や評価にGROWが大々的に取り入れられ始めた。バーンスタイン准教授は、「日本の大企業が人材確保を効率よく、しかも偏見なく進めるためにGROWを利用している様子に関心がある」と述べた。


「人間を採用の過程からはずす?」― 先駆的ツールへの賛否白熱

学生の間からは、GROWを使うことによって求職者が企業からアプローチされる可能性が広がるという声がとりわけ目立った。また、人事部の負担軽減に役立つツールだとする意見も多かった。学生のジャレッド・デービス氏は、膨大な数の応募書類の中から最良の候補者を見つけるのは「山積みの干し草の中から針を探し出すような大変な仕事」であると語り、「応募書類を手早くふるい分けられるだけでなく、(勘に頼ったら)面接ではじいてしまう可能性のある優秀な人材を見落とさずに済む」のでGROWは有益だと述べた。
一方で、採用には実際に候補者と会った上での判断が欠かせず、全てを数値化することに抵抗を感じるという意見も少なからずあった。バーンスタイン准教授によると、最近同じクラスで行った別のケーススタディを通して、採用には無意識の偏見がつきものであることを学生たちは認識し、それをどう修正できるか模索状態であったという。

「だったら、人間を採用の検討過程からはずせばよいのでは?」というバーンスタイン教授の問いかけは賛否両論を呼んだ。
GROWは人工知能に機械学習をさせて精度を上げていくように設計されているが、与えるデータそのものに人間の偏見がかかっていれば、はじき出される結論にもそれが反映されるのではないかという懸念や、雇い主側の理想像に数値上合わない候補者が切り落とされるといった意見も共有された。
日本人の留学生の一人は、日本企業で重要視される仕事への情熱や会社への献身といったものを数値化するのは難しく、斬新なアイデアを持っている人も数値ではじかれる可能性があると述べた。
GROWが企業の多様性の増大に貢献するかどうかについても、学生の意見は分かれた。しかし全体的には、GROWは人材選考に極めて有効または有望なツールであるとする見方が強く、究極の決定権を人工知能に託すのでなければ、データに基づいた選考は非常に好ましいと述べる学生が多く見受けられた。
また、採用後の社員の評価と育成を目的としたGROWの利用方法に関心を示す学生も多かった。


学習という作業の一部を機械に委ねるか、「ミライの人事」はどうなるか

バーンスタイン教授によると、人事は人工知能という言葉を聞いて最初に思いつく分野ではないが、データに基づいたアプローチを使うと効果・能率共に上がることがピープルアナリティクスの研究でわかっているという。人工知能の方が人間より学習能力が高いかもしれないという事実を人類がどう受け止めていくのかは、これから注目される点であると教授は語る。また学習という作業の一部を機械に委ねて人間の幸福感が増すかどうかも未知数であるとしている。
学生のラティーシュ・マヘシュワリ氏は、「(GROWやそれと似通った)技術は人間よりも正確な判断ができるのか、もし出来たとしても利用すべきかなど、いろいろと突っ込んだ議論ができてよかった」と語った。
授業でGROWを検証した理由は、様々な企業の明日を担うことになるであろう学生たちに、これまでの人事が人工知能によりどのように変化するのか、ミライの人事を実感してほしかったからだという。「企業改善に様々な人工知能をどう活用していくか」が、これからの管理職につく人々にとって重要な課題であると教授は語った。