「健康経営」とは、企業において従業員が健康で気持ちよく働くことが企業の生産性の向上につながるという観点から、従業員の健康維持増進を経営課題と捉えて、戦略的に取り組むこと。

従来、従業員の健康管理や健康づくりは主に企業の福利厚生の観点から行われてきましたが、近年では、経営面のメリットが大きいことが注目されるようになり、企業と従業員がWIN-WINの関係になる取り組みとして、健康経営への関心が高まっています。

企業が健康経営に取り組むメリットが注目される背景のひとつは、現在の日本において少子高齢化が進み、労働力人口が減少していく状況にあること。このため、特に若手人材の採用は今後さらに困難さを増していきます。労働環境や職場環境がよくない企業には人材が集まりにくくなる一方、健康経営に取り組む企業に対しては、安心して働ける“ホワイト企業”として求職者の好感度が高まると考えられているのです。

また、少子高齢化によって従業員の平均年齢が上がっていく中では、職場に増えていくシニア社員をいかに活用し、生産性の低下を防ぐかということも、企業にとって大きな課題。そこで、健康経営によって、従業員が高齢になっても心身ともに活力を維持できる健康づくりに早くから取り組むことが求められるようになってきました。さらに、昨今では、高齢化に伴う医療費の増加によって企業の健康保険組合の業績が悪化し、保険組合を維持できなくなるケースも出てきており、こうした状況も健康経営の推進を後押ししています。

企業における健康経営の取り組みを促進するため、経済産業省では、2015年から東京証券取引所と共同で「健康経営銘柄」制度をスタート。東京証券取引所の上場企業の中から健康経営の取り組みが特に優れた企業を毎年選定し、長期的な視点から企業価値向上が期待できる投資対象として紹介しています。現在では業界の中でどの企業が選定されたかが注目されるようになり、「健康経営銘柄」がブランド化してきたともいわれます。

健康経営を推進する企業は、当初は大手企業が中心でしたが、最近では、中堅中小企業にも取り組みを始める動きが拡大。政府が力を入れる働き方改革ともあいまって、健康経営への注目度は今後も高まりそうです。