「労働ビッグバン」とは、労働市場改革の呼称で、2006年、経済財政諮問会議において課題の一つとして、労働ビッグバンが挙げられました。

その内容は、経済全体の向上のためには、貴重な労働者が低生産性から高生産性分野へ円滑に移動できる仕組みや人材育成、年功ではなく職種によって処遇が決まる労働市場に向けての具体的施策が求められているのではないか」とされ、これが、政府の労働改革のスローガンとなりました。この問題は、同年11月に、有識者議員から「労働ビッグバンと再チャレンジ支援」として提出されました。

改革の主導者である労働経済学者・八代尚宏は、2006年12月に行われた内閣府の労働市場改革などに関するシンポジウムで、「正社員と非正規社員の格差是正のため、年功賃金の見直し等、正社員と非正規社員の賃金水準の均衡化に向けた方向での検討も必要」「既得権を持っている大企業の労働者が、下請け企業の労働者や非正規社員などの弱者をだしにしている面がかなりある」と述べ、「同一労働同一賃金」の徹底を訴えました。

労働ビッグバンの内容については、2006年当初から議論され続け、主に挙げられるのは、ニートやフリーターの戦力化および女性や高齢者の就業率向上、正規雇用と非正規雇用の区別の撤廃など「同一労働同一労働条件」の法制化、非正規雇用に対する保険、年金の付与、「金銭解雇ルール」の法制化、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入、ワーク・ライフ・バランスの実現となっています。

ホワイトカラー・エグゼンプションは、「一律に時間で成果を評価することが適当でない労働者の勤務時間を自由にし、有能な人材の能力や時間を有効活用する」という趣旨の用語で、この制度を導入した労働者は、雇用主との合意のもと、一定の成果を達成する前提で、勤務時間を自己の責任で決定でき、通常の定時勤務の時間にとらわれません。休日などの時間外労働は保障されないため、日本では、「過労死促進法」などとこの制度を不安視する声が多くありました。

しかし、政府の目的は、長時間労働が素晴らしいという風潮のある日本において、勤務時間と成果は必ずしも比例しない、労働時間を短縮しつつ成果をあげることを評価するべきではないかという考えにあります。そのため、勤務時間を多様化することにより、育児や介護を抱えている労働者が働きやすいようにという配慮の上に導入検討した制度で、「家族だんらん法」と言い換えるよう指示されました。

一方、労働ビッグバンは、経済財政諮問会議が発端となったという性格上、経済界の要望が色濃く反映されており、企業利益確保のために、いかに低賃金の労働者を確保するかという改革ではないか、という批判もあります。