「秋入学」とは、大学の入学時期を4月から9月に変更する試みのことです。

「よりグローバルに、よりタフに」をスローガンに、「15年までの全面移行を目指す」と発表した東京大学の浜田純一学長の言葉が皮切りとなり、業界に波紋を呼びました。

日本もその昔は秋入学制度でした。大学が創立されてから40年以上続きましたが、国の会計年度に合わせるために1921年から現在の春入学に変更されました。以来、大学の入学時期は原則4月に設定するよう文部科学省令で規定されていましたが、2008年度から学長の判断で変更できるように法改正されました。

現在、4月入学を採択している国は少なく、国際的には9月入学が標準となっています。この5か月の差が障壁となって、留学生や研究者といった学生や、講師や教授といった教育者が日本と海外の国の間を行き来しにくい環境でした。入学時期を海外のトップ校に合わせることは、学生や教育者の行き来をスムーズにし、交流を促進し、グローバルな視点を持ち国際社会で通用する人材の育成につなげることが狙いです。また、人の交流に限らず、海外の大学と研究や教育の協力関係を結ぶことで共同の研究や開発を行うことも容易になります。

東京大学が発表した構想では、入学時期は9月に変更しても入試時期はこれまで通りの2月に行われます。つまり、高等学校を卒業した3月から入学する9月まで、5カ月間の空白期間ができます。この期間をギャップイヤー(Gap year)もしくは、ギャップターム(Gap term)と呼び、その期間中は「大学入学予定者」として過ごします。この期間を有効活用するために、語学研修や短期留学、国内もしくは海外でのインターンシップ、ワーキングホリデー、ボランティア活動など、大学では得られない経験をすることが推奨されます。しかし、現状ではギャップイヤーの受け皿が整っていない状況です。最も大きな課題は、その半年間を大学が推奨する内容で過ごすために必要となる保護者の負担をいかに軽減するかでしょう。

また、大学が単独で海外に照準を合わせた改革を行っても、関係するその他の環境が未整備です。各種国家試験や教員の採用試験の時期や、学生に対する奨学金制度、大学設置基準も変更しなくてはいけません。また、これまで一斉に同時期に行われていた就職・採用活動も、3月卒業生と8月卒業生が混在する中、活動方法を見直さざるを得なくなるでしょう。

2012年1月20日、5年後をめどに全学部生を秋入学へ移行する方針を打ち出した東京大学に対し、国立大学の一部は賛同していますが否定的な考え方も多く発表されています。同年11月29日には京都大学の松本紘学長が9月入学の見送りを明らかにしました。