「オフショアリング(Offshoring)」とは、企業が業務の一部分もしくは全体を海外に移すことをいいます。

海外の企業に依頼する「委託」、もしくは海外に現地法人を設立して「移管」する場合があります。海岸から離れた所を意味する英単語「Offshore」から派生した言葉です。

企業がオフショアリングする目的として最も多いのが、コスト削減です。コストの安い海外で、製造業の単純作業やコールセンター業務、バックオフィス業務等をオフショアするケースがほとんどだった従来と比べて、近年では研究開発や、法務や会計などの専門的な分野にまで広がっています。こうした民間企業での成功例をうけて、アメリカでは1990年代から行政機関においてもオフショアリングするケースが出始めました。

アメリカから始まったオフショアリングは、その後日本企業にも広まりました。ガートナージャパン株式会社のリサーチ部門の調査によると、推計を開始した2004年以降、毎年30%前後の勢いで日本企業のオフショアリングは伸び続けてきました。2009年に初めて減少したその市場は前年比マイナス7.6%の3590億円でした。

日本企業にとって隣国である中国は格好のオフショアリング先として位置づけられ、全シェアの84%を占めます。距離の近さだけでなく、日本語対応が可能な人材の多さに加え、単価の低さ、受託可能な業務内容の幅広さが強みです。中国に次いで人気のオフショアリング先であるインドは、シェア15%を占めます。インドには中国にはいない欧米で業務経験を積んだグローバルな人材が揃っていることが強みです。その他のオフショアリング先としては、ベトナム、タイ、ブラジルなどがあります。

このように民間だけでなく行政にまでその活用の場を広げたオフショアリングですが、近年では雇用機会の減少や地場産業の衰退、情報の流出、人材育成への弊害などといった問題が懸念されはじめました。また、一番の目的であったコスト削減に対しても、昨今では現地の単価の上昇により、単純に業務を切り取って海外へ移すだけではその労力やリスクに見合うだけのコストダウン効果を得ることが難しくなってきました。

真のコストダウンを図るためには、何をオフショアにし、何を国内に留めるのかを中長期的な戦略で考えることが重要です。また、コスト削減だけを目的にオフショアリングするのではなく、他のメリットにまで視野を広げて考慮すべきです。人件費についていえば、少子高齢化の進む日本での労働力不足を補うために海外で確保する動きも出ていますし、日本では手が届かないような優秀な人材を海外でなら比較的安価に雇うことが可能であることもあります。