「オン・ボーディング(on-boarding)」とは、「船や飛行機に乗っている」という意味の「on-board」から派生した言葉。

本来は船や飛行機に新しく乗り込んできたクルーや乗客に対して、必要なサポートを行い、慣れてもらうプロセスのことを指します。人事用語としては、企業が新たに採用した人材を職場に配置し、組織の一員として定着させ、戦力化させるまでの一連の受け入れプロセスを意味します。そのほかにも、企業が提供するサービスなどの新たなユーザーとなった顧客に対し、そのサービスで得られる体験の満足度を高め、継続的な利用を促すための一連のプロセスもオン・ボーディングと呼ばれます。

企業人事の分野で、新規採用人材の受け入れプロセスといえば、従来は、一括採用した新卒社員を対象に、入社後研修で集中的にオリエンテーションを行うというものが一般的でした。オン・ボーディングの場合、対象を新卒人材に限らず、キャリア採用した若手・中堅人材、幹部クラスのエグゼクティブ人材まで含まれることや、継続的なプログラムであることが特徴です。

近年、オン・ボーディング施策の重要性がクローズアップされている背景には、新入社員の早期離職を防ぎ、早期戦力化するためには、短期間のオリエンテーションで終わらず、継続的なサポートプログラムの実施が効果的だということがあります。また、即戦力として、コストをかけてキャリア採用した幹部人材が企業文化などになかなかなじめず、期待されたパフォーマンスを上げるまでに時間がかかるということが多くの企業で問題視されるようになったことも理由のひとつです。

オン・ボーディングでは、新規採用した本人だけに「慣れてもらう」のではなく、上司や同僚も対象として、職場全体で新規採用者を受け入れるというアプローチを行い、既存メンバーと新メンバーを短期間で統合させていくためのプログラムを実施します。そのことによって組織の生産性を向上させることこそ、オン・ボーディングの目的です。

採用した人材が職場で成果を出せるようになったとき、その採用が初めて意味を持つという考え方が広がってきた中、今後もオン・ボーディングの取り組みは人事にとってさらに重要なものとなりそうです。